――遠征といえば、中学や高校の硬式野球部はとてもお金がかかるイメージがあります。プロになる選手の家はやはり裕福なご家庭が多かったのでしょうか?
「いえ、いわゆる普通のご家庭が多かったですね。でも、一見すると“裕福”だと思われるような生活を、親御さんが一生懸命に働いて子どもにさせてあげていましたね。そしてその親の苦労を、子どもがしっかり見て育っているように思いました。
親御さんたちはそれを嫌々やっているのではなく、恩着せがましいことも一切言いません。子どもがかわいくて仕方がないから、時間も愛情もお金も子どもにかけているのです。お父さんも、会社の同僚と飲むよりも子どもと遊ぶ方が楽しいから、子どもと一緒にいることを選ばれていました。
皆さんが口を揃えて言うのは、『うれしいのは息子や娘が有名になったことでも、お金を稼ぐようになってくれたことでもなく、楽しい子育ての時間を私たちに与えてくれたこと。それに対して、ありがとうって言いたい』ということでした」
――「子ども中心に時間を使う」「強制しない」「その競技の話題を家族で楽しむ」というのが運動する子の子育てには有効なのですね。
「野球をする子の親なら、野球を好きにさせて、楽しいんだって思わせること。楽しくさせるには、まずできたら褒めてあげる。結果だけではなくて過程も褒めてあげて、親も楽しんでいるよという背中、姿勢を見せてあげることがいいと思います」
――今は子どもの野球人口が減っているのですが、子どもに野球をやらせるメリットにはどんなことがあると思いますか?
「野球のようなチームスポーツ全般でいえることですが、他人に迷惑をかけないようにすることや他者への思いやり、他人を活かして自分も生きることなど、社会性を身につけられルことだと思います。松坂大輔選手(中日)は野球を通して、「嘘をついてはいけない」「仲間を大切にする」ということを、徹底的に学んだそうです。
それから、一生の友達ができること。これは親御さんにもいえて、子どもの同じ少年野球チームのお父さんやお母さん同士で仲良くなって、今でも友達付き合いを続けているという話もよく耳にしました」
吉井さん、貴重なお話しありがとうございました!
スポーツジャーナリスト。宮城県出身。朝日新聞社に13年勤務した後、1991年よりジャーナリストとして独立『帰らざる季節中嶋悟F1五年目の真実』(文藝春秋)で1991年度ミズノスポーツライター賞受賞。スポーツに限らず人物ノンフィクションを手掛け、経済や芸術の分野でも幅広く執筆。『天才は親が作る』『天才を作る親たちのルール』(ともに文藝春秋)、『松坂大輔の直球主義』(朝日新聞社)、『神の肉体清水宏保』(新潮社)、『トップアスリートの決断力』(アスキー)など著書多数。
「天才を作る親たちのルールトップアスリート誕生秘話」(文藝春秋)
「いえ、いわゆる普通のご家庭が多かったですね。でも、一見すると“裕福”だと思われるような生活を、親御さんが一生懸命に働いて子どもにさせてあげていましたね。そしてその親の苦労を、子どもがしっかり見て育っているように思いました。
親御さんたちはそれを嫌々やっているのではなく、恩着せがましいことも一切言いません。子どもがかわいくて仕方がないから、時間も愛情もお金も子どもにかけているのです。お父さんも、会社の同僚と飲むよりも子どもと遊ぶ方が楽しいから、子どもと一緒にいることを選ばれていました。
皆さんが口を揃えて言うのは、『うれしいのは息子や娘が有名になったことでも、お金を稼ぐようになってくれたことでもなく、楽しい子育ての時間を私たちに与えてくれたこと。それに対して、ありがとうって言いたい』ということでした」
――「子ども中心に時間を使う」「強制しない」「その競技の話題を家族で楽しむ」というのが運動する子の子育てには有効なのですね。
「野球をする子の親なら、野球を好きにさせて、楽しいんだって思わせること。楽しくさせるには、まずできたら褒めてあげる。結果だけではなくて過程も褒めてあげて、親も楽しんでいるよという背中、姿勢を見せてあげることがいいと思います」
――今は子どもの野球人口が減っているのですが、子どもに野球をやらせるメリットにはどんなことがあると思いますか?
「野球のようなチームスポーツ全般でいえることですが、他人に迷惑をかけないようにすることや他者への思いやり、他人を活かして自分も生きることなど、社会性を身につけられルことだと思います。松坂大輔選手(中日)は野球を通して、「嘘をついてはいけない」「仲間を大切にする」ということを、徹底的に学んだそうです。
それから、一生の友達ができること。これは親御さんにもいえて、子どもの同じ少年野球チームのお父さんやお母さん同士で仲良くなって、今でも友達付き合いを続けているという話もよく耳にしました」
吉井さん、貴重なお話しありがとうございました!
(取材・江原裕子/写真:編集部)
プロフィール
吉井妙子さんスポーツジャーナリスト。宮城県出身。朝日新聞社に13年勤務した後、1991年よりジャーナリストとして独立『帰らざる季節中嶋悟F1五年目の真実』(文藝春秋)で1991年度ミズノスポーツライター賞受賞。スポーツに限らず人物ノンフィクションを手掛け、経済や芸術の分野でも幅広く執筆。『天才は親が作る』『天才を作る親たちのルール』(ともに文藝春秋)、『松坂大輔の直球主義』(朝日新聞社)、『神の肉体清水宏保』(新潮社)、『トップアスリートの決断力』(アスキー)など著書多数。
紹介した著書
「天才は親が作る」(文春文庫)天才と呼ばれる選手の親は特殊な才能の持ち主ではない。ただ、子供への愛情のかけ方や接し方がちょっとだけ違っていたのである
松坂大輔、イチローなど10人の天才の親に、彼らが育ったお茶の間で「子育て」について徹底取材した画期的ノンフィクション。天才たちを育てたのは普通の親だった。そこには一つのルールがあった―。幼い娘が靴紐を結び終えるまで30分待った杉山愛の母など目からウロコの実例の宝庫。子育て中の親必読。
松坂大輔(野球)、イチロー(野球)、清水宏保(スケート)、里谷多英(スキー)、丸山茂樹(ゴルフ)、杉山愛(テニス)、加藤陽一(バレー)、武双山(相撲)、井口資仁(野球)、川口能活(サッカー)
松坂大輔、イチローなど10人の天才の親に、彼らが育ったお茶の間で「子育て」について徹底取材した画期的ノンフィクション。天才たちを育てたのは普通の親だった。そこには一つのルールがあった―。幼い娘が靴紐を結び終えるまで30分待った杉山愛の母など目からウロコの実例の宝庫。子育て中の親必読。
松坂大輔(野球)、イチロー(野球)、清水宏保(スケート)、里谷多英(スキー)、丸山茂樹(ゴルフ)、杉山愛(テニス)、加藤陽一(バレー)、武双山(相撲)、井口資仁(野球)、川口能活(サッカー)
「天才を作る親たちのルールトップアスリート誕生秘話」(文藝春秋)
日本を代表するトップアスリートは、家庭でどのような教育を受けたのか。
親がしたこと、しなかったこと。12家族から見えるそのルール。
世の中には「天才」と称されるスポーツ選手が何人もいる。天才って何? 大量の汗とともに磨かれる技、そして肉体と精神、その上に成り立っている競技スポーツに生きる選手に対して、「天才」という曖昧模糊とした言葉には違和感がある。その疑問から始まった、トップアスリートの親へのインタビュー集。多くの読者に好評を博した2003年刊の同テーマ書籍に続く第二弾。
萩野公介(水泳)、白井健三(体操)、桐生祥秀(陸上)、永井花奈(ゴルフ)、石川佳純(卓球)、木村沙織(バレー)、井上尚弥(ボクシング)、竹内智香(スノーボード)、藤浪晋太郎(野球)、宇佐美貴史(サッカー)、宮原知子(フィギュアスケート)、大谷翔平(野球)の親へ取材。
それぞれ育て方には個性がありながら、数え切れないほどの共通項もあった。筆者がそこで導き出す、天才の作り方とは。
親がしたこと、しなかったこと。12家族から見えるそのルール。
世の中には「天才」と称されるスポーツ選手が何人もいる。天才って何? 大量の汗とともに磨かれる技、そして肉体と精神、その上に成り立っている競技スポーツに生きる選手に対して、「天才」という曖昧模糊とした言葉には違和感がある。その疑問から始まった、トップアスリートの親へのインタビュー集。多くの読者に好評を博した2003年刊の同テーマ書籍に続く第二弾。
萩野公介(水泳)、白井健三(体操)、桐生祥秀(陸上)、永井花奈(ゴルフ)、石川佳純(卓球)、木村沙織(バレー)、井上尚弥(ボクシング)、竹内智香(スノーボード)、藤浪晋太郎(野球)、宇佐美貴史(サッカー)、宮原知子(フィギュアスケート)、大谷翔平(野球)の親へ取材。
それぞれ育て方には個性がありながら、数え切れないほどの共通項もあった。筆者がそこで導き出す、天才の作り方とは。