今後のトレンドは中高一貫校強化?
全員が硬式出身だったのは履正社1校で、甲子園常連校である八戸学院光星、横浜や札幌大谷、大分が軟式出身1名でそれに続いている。
中でも面白いのが初出場の札幌大谷と大分だ。札幌大谷は高校の付属である札幌大谷中学が硬式野球部の「札幌大谷シニア」として、大分も付属の大分中学が「大分シニア」としてシニアリーグに所属している。前者は昨年秋の地区大会ではベンチ入り18人のうち10人、後者は15人が付属チームの出身だ。
共に選抜大会は初出場。私立の中高一貫校がこのような形で硬式野球を強化する例も今後増えてくる可能性があるだろう。
一方の軟式出身が最も多かったのは21世紀枠で出場する熊本西の18人。他にも上位チームは高松商、富岡西、米子東など公立高校が多くなっている。私立の日章学園と星稜は付属中学の軟式野球部出身の選手が多いのが特徴で、日章学園は14人、星稜は10人が付属の中学出身の選手である。特に星稜は今大会でも優勝候補に挙げられており、プロ注目のエース奥川恭伸も軟式野球部出身(かほく市立宇ノ気中/石川県)である。数は決して多くないものの、軟式野球部でも全国トップレベルのチームであれば甲子園でトップクラスの選手を輩出することは十分可能と言えるだろう。
最後に中学時代の実績についても見てみたい。2016年に行われたU15ベースボールワールドカップの侍ジャパンに選ばれた選手は20人いるが、その中で今回の選抜に出場するのは及川雅貴、黒須大誠(ともに横浜)、野口海音(履正社)の3人だけである。あらゆる組織が統一されていない中学生時点の侍ジャパンではあるが、それでも世代のトップと見られていた選手の甲子園出場率が決して高くないことがよく分かるだろう。中学時代に実績がなくても、高校で大きく飛躍する選手も多数存在しているのだ。
あくまで今大会の出場選手だけでありデータとしては十分とは言えないが、ある程度の傾向値としては見えてくるものが多々あるのではないだろうか。選手の出身チーム、バックグラウンドなどを頭に入れながら見ると、また新たな甲子園の楽しみが増えることだろう。(西尾典文)