甲子園出場との関係は?
では、甲子園での登板の有無と、プロ野球の成績は相関関係があるのだろうか。
291人の日本人投手を甲子園出場の有無で分けて、その投手成績を比較する。なお、学校が甲子園に出場しても野手登録や控えなどで甲子園のマウンドに立っていない投手は「甲子園なし」に含めた。
甲子園のマウンドに立った投手はちょうど100人、34.4%。3人に1人強。さすがに高率だ。
しかし「甲子園出場」と「甲子園なし」の両グループの防御率はほとんど同じ。そして両グループの代表的な投手の顔ぶれを見ると、「甲子園なし」のグループのほうが「大物」が多いのだ。
昨年の両リーグ最多勝の西武多和田、巨人菅野は、ともに「軟式野球出身で甲子園経験なし」だった。
ちなみに甲子園優勝投手は、松坂大輔(中)、小笠原慎之介(中)、藤浪晋太郎(神)、澤田圭佑(オ)、今村猛(広)、田中健二朗(De)、福井優也(広)、東浜巨(SB)、今井達也(西)、斎藤佑樹(日)の10人。昨年は二けた勝利はなし。東浜の7勝が最多。誰も規定投球回数に達していない。
もちろん、松坂や藤浪は過去にはエースとして活躍したし、今村、田中などは救援投手で活躍した。甲子園で活躍した投手はプロではダメだと断言することはできないが、優勝したからといって将来が前途洋々というわけではないのだ。
少年硬式野球、どの団体が有利?
最後に、少年硬式野球の団体別の成績も紹介しよう。
ボーイズリーグが全体の45.0%、リトルシニアが39.5%。この2団体で84.5%を占める。続いてヤングリーグが10.1%、フレッシュリーグが2.3%、ポニーリーグが1.6%だ。これは、各団体が発表している競技者数の構成比とほぼ同じだ。ボーイズとリトルシニアの投球成績には大差はない。
結論として、野球少年の親は「決して急ぐことはない」ということだ。中学、高校で大活躍をしたからと言って、プロで成功する保証はないのだ。むしろ過酷な経験をすることで、故障のリスクも増える。端的に言えば「早熟なエース」は、「能力の先食い」につながる可能性がある。
中学、高校で勝利を追い求めすぎることが、本当に子供のためになるのか。
子ども一人一人の個性、特性も考えて慎重に判断するのが「大人の責任」だといえるだろう。(広尾晃)