小学校時代に障害を負った子供が入ってくる
古島先生のポニーリーグが選手を募集したところ12人の子供が集まったそうですが、そのうち半分の6人が潜在的な野球肘でした。自覚症状もない子もいました。小学生時代の酷使で、潜在的に壊れている子がいたのです。
私が会長を務める市原ポニーベースボールでも今年入ってきた1年生26人のうち4人が、4月1日、練習初めの日に「肘が痛いです」と言ってきました。まだ練習する前に、そういう状態でやってくるのです。
本人が痛いといったときには、すでに発症しているので、本人の自覚症状がないうちに見つけるにはどうすればいいかについても古島先生に相談しています。
例えば、大会があるときに、子供たちの肩ひじの状態を診るのもいいでしょう。
「野球肘」が見つかれば、その子はノースローになりますが、ポニーの場合、指導者は医師の言うことに従います。無理はさせません。これが2年生、3年生となれば中学時代は投げられない可能性があるので大きな問題ですが、1年生なら治す時間があります。
「きれいな肩・肘の子は、きれいなまま」卒業させる
もともとポニーリーグは「育てる場」だという意識が徹底されています。高校野球につなげる場だ、勝負するところではないということです。
うちは“野球は試合に出て覚えよう”が理念です。そのためにポニーの大会はすべてリーグ戦です。原則として補欠はいません。12人いれば1チームを作ります。投手は3人程度です。そのほかに野手兼任の投手もいます。
もちろん、野球の技術を高め、体力もつけさせますが、基本的には「きれいな肩ひじの子は、きれいなまま」卒業させます。故障を持ったまま入ってきた子も「もっときれいにして」卒業させることを目標にしています。もし、状態を悪化させたとすれば、それは私たちの責任です。
そのうえで、結果を求めるということです。両方を並行してやるのは難しいので、段階を踏んで成長させるのが基本です。練習の投球数を抑えながら、球速をアップさせるにはどうしたらいいのかを科学的に教えます。さらに体の使い方も教えます。
そもそも「待球作戦」はあり得ない
「球数制限」に関しては、ファウル打ちによる「待球作戦」が懸念されています。中学生になれば、技術的には可能な子も出てくるでしょうが、ポニーではそもそもその発想がありません。子どもたちは一生懸命練習しているのだから打たせろというのが基本です。
指導者は、甘いストライクをちゃんと打たないと注意をします。中学レベルでは、いい球はそんなに来ませんから。何球目であっても、好球必打が中学野球の基本です。
ポニーイズムでは「バットは打つためにあるものであり、当てるためにあるものではない」ということですね。
ただ、他流試合の時はそれをやられる可能性はありますが。基本的にはポニーはやりません。
大学、プロで活躍する選手も輩出
ポニーの卒業生といえば、昔は元巨人監督の高橋由伸選手などが有名ですが、今も大学やプロで活躍する選手が出てきています。
東海大学4年生の原田泰成投手は、私が会長を務める市原ポニーベースボールの卒業生です。中学の時は、足の故障があったのでほとんど投げていません。でも中学3年で球速は130㎞/hを超えました。今は150㎞/hを超えて、ドラフト候補の一人になっています。
先日、令和時代の初完封勝利を果たした埼玉西武ライオンズの今井達也投手も、栃木県の鹿沼ポニーの出身です。
こういう形で、私たちの考える「少年野球」の理念が、少しずつ実を結びつつあります。
「球数制限」の導入も「子供たちにとって何が一番良いのか」を考えながら、推進していきたいと思います。(取材・写真:広尾晃)