●心は変えられないが、身体は変えられる
緊張感が大きくなると僕たちの身体も変化が起きます。胸がドキドキし、汗をかき、身体の震えを感じ、筋肉がこわばり、口が渇いたり、顔が赤らんだり、頭やお腹が痛くなったりします。
チャンスやピンチでは「いざ、リラックスしよう」としても中々できるものではありません。「心の緊張」にともなって、「身体」まで硬くなり、思考が停止して、頭が真っ白になったり、ミスを引きずりすぎることは避けたいものです。
そんなときは、直接、扱いずらい心をコントロールするのではなく、身体の緊張感をゆるめてあげましょう。たとえば、緊張した時は呼吸が浅く早くなっています。ですので、意識してゆっくり呼吸をするだけでも効果があります。また、身体全体に力を入れて意図的に力んだ状態を作り、そこから一気に力を抜くことも一つの方法です。
●失敗から切り替える儀式をつくっておく
試合のレギュレーションなどにもよりますが、もしタイムを取れるのであれば、投手の調子が悪いときにタイムを取り一呼吸おくように、彼の切り替えのために時間を止めることも効果的です。内野手であつまり、「大丈夫だよ」と声をかけるのもいいですし、円陣をつくり再スタートするのもいいかもしれません。頭で「切り替えよう」と思っても、僕らは中々切り替えることができません。けれど、身体の動きとセットにすることで、スイッチを入れ替えたように「パチっ」と不安を一度脇におくことができます。
●失敗したからこそ、身につくことがある
ジュニア年代では「ミスをすること」が大きな成長に変わることも多くあります。ミスをしてはいけないのではなく、ミスを次に活かすことが大事。ミスをしたからこそ学べることもあります。ミスをしたことを批判し、とがめるのではなく、「今日はどんな学びがあった?」と彼に聞いてみましょう。そして「どうすれば良いと思う?」と質問を重ねることによって、「もっと練習したい」「もっとうまくなりたい」というやる気に変わるかもしれません。あるチームでは「ミスはチャレンジの証」という合い言葉をつくり、試合後には必ず「今日はどんなミスがあった?」と質問し、答え合うのだそうです。もちろん、わざとミスをすることは望ましくありませんが、積極的なミスは大歓迎。そうしたチームの空気が成長したいというやる気を高めているのかもしれません。
藤代圭一さんプロフィール
一般社団法人スポーツリレーションシップ協会代表理事。しつもんメンタルトレーニング主宰。
U20代表チームやインターハイ優勝チームなど全国優勝を目指すチームから地域で1勝を目指すチームまで、様々なスポーツジャンルのメンタルコーチをつとめる。
また全国各地にインストラクターを養成。その数は350名を超える。
著書に”スポーツメンタルコーチが教える「子どものやる気を引き出す7つのしつもん」(旬報社)”がある。