【1年生】
■グラブを買ってもらったときが一番嬉しい
最後は1年生。何と10人中8人が、中学から野球を始めた。そのうち3人の選手に、野球部に入った理由を聞いてみた。
耳が隠れるぐらいの長い髪の鍋田祐希くんは、小学校のときに水泳とテニスをやっていたが、野球にも興味があったという。仮入部のときにやったキャッチボールが楽しくて、野球を選んだ。
「もし、坊主頭だったら水泳部に入っていました。何で野球をやるのに坊主頭にしないといけないのか……、めちゃくちゃ疑問に思います」
鈴木佑京くんは、大きな声が特徴。その声を活かせる部活はどこかと考えたときに、野球部が候補に挙がったという。
「仮入部のときに、一番真剣に頑張っていると感じたのが野球部でした。中学では何かひとつのことを真剣にやりたいと思っていたので、迷わなかったです」
試合に少しずつ出るようになるにつれて、そのポジションへの「責任感」が芽生えてきたという。
今は部活を終えたあとに壁当てをしたり、素振りをしたり、うまくなるための練習をしている。「野球、楽しいです!」と笑顔で語ってくれた。
成川愛莉さんは、女友達と話し合って、「みんなで野球部に入ろう!」と決めた。
「仮入部は陸上部と野球部を見ました。キャッチボールでうまく捕れたときに、『いいね!』と先輩が優しく声をかけてくれて、それが嬉しかったです」
ルールはまったく知らなかったが、友達と一緒だったことで不安は少なかったと振り返る。
3人に野球を始めてから嬉しかった思い出を聞くと、「親にグラブを買ってもらったとき」と口をそろえた。
「スラッガーのグラブを買ってもらいました。グラブを手にしたことで責任感も生まれて、もう辞められないなって思いました(笑)」(鍋田)
「お父さんと一緒に行ったんですけど、買ってもらえたときが一番嬉しかったです」(鈴木)
「自分では詳しく分からないので、お店の人に選んでもらいました。今は、自分のグラブでフライを捕れたときが嬉しいです」(成川)
野球を始めたきっかけや時期は違うが、みんなに共通しているのは「野球が好き、楽しい」という純粋な気持ち。部活が休みの日は公園や土手に集まり、練習をすることもあるという。いい意味で、野球に疲れていない。
好きこそものの上手なれ――。
ひとりひとりが、それぞれのペースで着実に上達している。(取材・写真:大利実)