ニュース 2019.07.23. 12:31

「球数制限」はエリート選手だけでなく、すべての選手のためにある



■「下手くそだが、野球が大好きな選手」も大切だ


「球数制限」の議論は、こうした「競技人口、参加校数の実質的な現象」と「戦力格差の拡大」を背景として行われていることを認識しなければならない。
戦力格差のある学校同士の試合では、強豪校が打撃練習のように延々と攻撃を続ける場合がある。早々に加点してコールドゲームに持ち込みたいからだ。相手校の投手は、短いイニングでも多くの球数を投げることになるが、こうした投手の健康面はあまり顧みられることがない。
公立高校など中堅以下の学校には、主たる先発投手が1人しかいない学校も多いが、こういう学校では、どんな展開であっても1人の投手に任せてしまうことも多い。その結果として、地方大会で人知れず「燃え尽きる」ことになってしまう投手もいる。

筆者は強豪校だけでなく、地域の中堅クラスや初戦敗退クラスの高校の野球部も取材したが、
「あの野手は昔投手だったが、投げられなくなった」
「うちは、もう一人エース級がいたのだが、ケガでやめてしまった」
などという話をたくさん聞いた。

率直にいって、甲子園に縁のない学校の投手は、大切にされていない。故障しても、野球を断念しても「よくあること」で片づけられている。ケガをするまで投げさせた指導者が、その責任を痛感することもあまりない。そうした事例があまりにも多いので、日常茶飯事のようになっているのだ。
「球数制限」の話は「投手の投球障害を気にかける」「選手の健康面に気を付ける」という意識変革をもたらす話でもある。それは、甲子園へ行く投手、大学やプロで野球を続けるような有力投手だけをターゲットにした話ではなく、日本中にたくさんいる「下手くそだが、野球が大好きな選手」のその後の競技生活を守るためにもあることを、強調しておきたい。(広尾晃)

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