プロ注目右腕・西舘昂汰(3年)を擁してセンバツ8強入りした筑陽学園が16年ぶり2回目の優勝を果たした。県勢では8年ぶりの春夏甲子園出場となる。決勝では西日本短大付に3点を先制されるも1点ビハインドの6回に進藤勇也(3年)が逆転2ラン。勢いに乗ると、終盤にも3点を追加し7-4で突き放した。「センバツ8強」という自信と、プレッシャー。その両方を背負って夏を戦った選手たちは、スタンドで応援する控え選手の思いを力に変えて、133チームの頂点に立った。
夏の福岡大会開幕2日前。筑陽学園のグラウンドで背番号の贈呈式が行われた。江口祐司監督(56)から発表された20人の選手が、メンバーを外れた3年生から手渡しで背番号をもらうという“儀式”。入学してからここまで同じ練習を同じ思いで食らいついてきた選手同士にしかわからない、神聖な時間が流れていた。
この夏、バットをメガホンに変え、応援団長を務めることになった香川泰輝(3年)がメンバーにメッセージを送った。
「春、甲子園を経験して悔しい思いをたくさんしたと思う。もう1回、甲子園に行って、あの悔しさを晴らし、笑顔で帰ってこれるように、優勝できるように。そのために自分たちは頑張って応援するので、メンバーも力を出し切って、執念で勝ってください」。
場の空気が静まり返った。メンバーたちの目には涙が光っていた。
メンバーを外れた悔しさ、無念さ。内に秘めていた思いを他の3年生にも聞くと、内に秘めていた思いを打ち明けた。
秋の九州大会メンバーで背番号をつけていた尼ケ崎裕大(3年・内野手)は、「メンバー発表があったあとも練習試合に出してもらったんですが、そこで結果が出なくて…。サポートに回る覚悟ができました。同じポジションの弥富(紘介)には、チームを鼓舞して頑張ってほしい」と自分に言い聞かせるように話した。
同じく真田賢成(3年・外野手)は悔しさをにじませながら、「唯一打ち込めるものが野球だったので、最初は切り替えられなかった。自分たちがやってきたことを信じてプレーして欲しいです」と、バットを振ってマメだらけになった手を見せて話してくれた。
昨秋の九州大会で優勝し、神宮大会、センバツに出場した筑陽学園。西舘、西雄大(3年)、菅井一輝(3年)の「3本柱」を軸に、野手8人、計「11人」で公式戦を勝ってきた。昨秋からメンバーの入れ替わりがなく、夏までほぼ同じメンバーで勝ち抜いてきたのだが、それはつまり、控え選手が入り込む隙がなかったということであり、11人が背負っているプレッシャーの大きさも相当なものだった。
ある控え選手は言った。
「たまにA戦の試合に出させてもらうと、全く結果が出ない自分がいる。あの緊張感の中で結果を出し、レギュラーを守り続けているAの選手の精神力はやっぱりすごいんだと感じました」。
この言葉をキャプテンの江原佑哉(3年)に伝えると「尼ケ崎や真田は同じ糸島ボーイズ出身で、自分と力の差は全然なかった。メンバーに入れなかった選手の思いを今日初めて聞いて、甲子園への思いがいっそう高まりました」と、表情を引き締めて話した。
厳しい練習をしてきた選手がメンバー入りを果たせず、仲間の応援やサポートに切り替えることは簡単なことではない。しかし、全力でレギュラーを目指したからこそ、スタンドでも全力で応援できるのかもしれない。「68分の11」ではなく、「68=11」でつかんだ甲子園。全員の目標である「全国制覇」を一丸となってつかむ。【樫本ゆき】
夏の福岡大会開幕2日前。筑陽学園のグラウンドで背番号の贈呈式が行われた。江口祐司監督(56)から発表された20人の選手が、メンバーを外れた3年生から手渡しで背番号をもらうという“儀式”。入学してからここまで同じ練習を同じ思いで食らいついてきた選手同士にしかわからない、神聖な時間が流れていた。
この夏、バットをメガホンに変え、応援団長を務めることになった香川泰輝(3年)がメンバーにメッセージを送った。
「春、甲子園を経験して悔しい思いをたくさんしたと思う。もう1回、甲子園に行って、あの悔しさを晴らし、笑顔で帰ってこれるように、優勝できるように。そのために自分たちは頑張って応援するので、メンバーも力を出し切って、執念で勝ってください」。
場の空気が静まり返った。メンバーたちの目には涙が光っていた。
メンバーを外れた悔しさ、無念さ。内に秘めていた思いを他の3年生にも聞くと、内に秘めていた思いを打ち明けた。
秋の九州大会メンバーで背番号をつけていた尼ケ崎裕大(3年・内野手)は、「メンバー発表があったあとも練習試合に出してもらったんですが、そこで結果が出なくて…。サポートに回る覚悟ができました。同じポジションの弥富(紘介)には、チームを鼓舞して頑張ってほしい」と自分に言い聞かせるように話した。
同じく真田賢成(3年・外野手)は悔しさをにじませながら、「唯一打ち込めるものが野球だったので、最初は切り替えられなかった。自分たちがやってきたことを信じてプレーして欲しいです」と、バットを振ってマメだらけになった手を見せて話してくれた。
昨秋の九州大会で優勝し、神宮大会、センバツに出場した筑陽学園。西舘、西雄大(3年)、菅井一輝(3年)の「3本柱」を軸に、野手8人、計「11人」で公式戦を勝ってきた。昨秋からメンバーの入れ替わりがなく、夏までほぼ同じメンバーで勝ち抜いてきたのだが、それはつまり、控え選手が入り込む隙がなかったということであり、11人が背負っているプレッシャーの大きさも相当なものだった。
ある控え選手は言った。
「たまにA戦の試合に出させてもらうと、全く結果が出ない自分がいる。あの緊張感の中で結果を出し、レギュラーを守り続けているAの選手の精神力はやっぱりすごいんだと感じました」。
この言葉をキャプテンの江原佑哉(3年)に伝えると「尼ケ崎や真田は同じ糸島ボーイズ出身で、自分と力の差は全然なかった。メンバーに入れなかった選手の思いを今日初めて聞いて、甲子園への思いがいっそう高まりました」と、表情を引き締めて話した。
厳しい練習をしてきた選手がメンバー入りを果たせず、仲間の応援やサポートに切り替えることは簡単なことではない。しかし、全力でレギュラーを目指したからこそ、スタンドでも全力で応援できるのかもしれない。「68分の11」ではなく、「68=11」でつかんだ甲子園。全員の目標である「全国制覇」を一丸となってつかむ。【樫本ゆき】