野球少年、野球少女のお父さん、お母さん、そして少年野球指導者の皆さんにとって役に立つ、勉強になる野球の本を紹介します。
今回紹介するのは、『新しい少年野球の教科書 科学的コーチングで身につく野球技術』(カンゼン)です。筑波大学硬式野球部監督の川村卓准教授が、これまでの研究結果や経験をベースに考案された、小学生年代に特化した野球技術の指導本です。その中からの一部をご紹介します。
「子ども」と「大人」の体は違う。
では、両者の境界線はどこにあるのだろうか。法律的に言えば、成人式を迎える歳の年齢から酒やタバコがオッケーになり、大人の仲間入りを果たす。
発育発達という観点で考えたときには、どうなるだろう。ひとつの目安となるのが、「骨端線」の存在だ。骨端線とは、骨の中央部と端の間にある軟骨を表す。文字通り、軟らかい骨であり、この軟骨が成長することによって、長軸方向に骨が伸ばされ、背が伸びていく。すなわち、「骨の成長点」と言い換えることもできる。
子どものレントゲンを撮ると、うっすらと骨端線が見える。この状態を「骨端線が開いている」と表現するが、その間はまだ背が伸びると考えていいだろう。一方で、骨端線が見えず「骨端線が閉じている」と、身長の伸びがほぼ止まったと考えることができる。
メジャーリーグでも「二刀流」として、圧倒的な存在感を放っている大谷翔平選手(エンジェ
ルス)は、聞くところによると、高校2年生の夏頃に股関節の骨端線を損傷して、その頃は強度の高い練習はほとんどできなかったそうだ。結果的にはそこで無理をさせなかったことが、その後の成長につながっていったとも想像できる。
子どもと大人の境界線は、骨端線との関係性が強い。大谷選手のような190センチを超える高身長群は例外として、ほとんどの選手が中学生のうちに骨端線が閉じる。そうなれば、器具を使った筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)のような強度の高い練習をしても、故障のリスクが低くなる。中学生であっても、骨端線が閉じていれば、ある程度は負荷をかけたトレーニングをしても問題ないと判断できるわけだ。もっといえば、いわゆる「早熟」と呼ばれる子どものなかには、小学校高学年のうちに骨端線が閉じている場合もある。なお、一般的には男子よりも女子のほうが、骨端線が閉じるのが早い傾向にある。
では、骨端線が閉じたかどうかをどのように判断すればいいだろうか。
簡単なのはレントゲンを撮ることだ。わかりやすいのが手のひらのレントゲンで、骨端線が開いている子どもの手は骨がスカスカの状態である。小さいお子さんがいれば、手のひらを軽く押してみてほしい。スカスカで空間があるので、ぐにゃぐにゃしているのがわかるはずだ。
一方で骨端線が閉じていると、骨の密度が濃くなり、ぐにゃぐにゃ感がなくなっている。ただ、実際のところは、ケガをしていないのにレントゲンを撮ることは医療法で認められていない。
レントゲンの代わりに判断できることとすれば、あごのヒゲだ。男子に限った話にはなるが、産毛のような柔らかいヒゲではなく、大人と同じような硬いヒゲが生えてくれば、骨端線が閉じてきていると推測することができる。この知識は、スポーツ整形のドクターに教えてもらった。
余談になるが、私が勤める筑波大には2メートルを超すバレーボール部の選手がいるが、元監督から大学生になってもまだ大人のヒゲが生えていないものもいると聞いた。すなわち、身長がまだまだ伸びるということ。それぐらい、人間の発育発達には個人差がある。だからこそ、年代別の指導方法が必要になってくるのだ。
(1章 発育発達の基礎知識「『子ども』と『大人』の境界線」より)
■内容紹介■
プロ指導者も学ぶ野球コーチングの基本
ジュニア年代に特化した年代別指導メソッド
すべての教え方には、明確な根拠がある!
科学的理論に基づき、年代別の野球指導を体系化
ケガを予防し、「投球・打撃・守備」の正しい野球動作を習得
QRコードで練習メニューの動画を確認できる!
スペシャルインタビュー 吉井理人(千葉ロッテ一軍投手コーチ)収録
本書はこれまでの研究結果や経験をベースに考案された、小学生年代に特化した野球技術の指導本です。
成長段階の子どもたちには、「できることとできないこと、教えたほうがいいことと教えないほうがいいこと」があります。
例えば、身体的に未発達で骨格がまだ出来上がっていない小学生が、プロ野球選手のような投げ方ができるわけがありません。
ヒジを上げたくても、上がらない子もいる。体に負担がかかりすぎて、投球障害につながる恐れもあるのです。
そこで野球未経験の子どもたちや、身体的に未発達の小学生・中学生の時期に、
何をどのように教えていけばいいのかを1冊にまとめました。
子どもにもイメージしやすいように、さまざまな練習方法を動画で確認にできるようにしましたので、
あわせて役立ててください。
【目次】
インタビュー 吉井理人(千葉ロッテマリーンズ投手コーチ)
1章 発育発達の基礎知識
「子ども」と「大人」の体は違う
「子ども」と「大人」の境界線
骨の成長とトレーニングの関係性
骨端線とヒジ痛の関係性
障害リスクのガイドライン…など
2章 投手の指導法
成長期のボール投げ
ヒジを上げて投げる重要性
ヒジの上げ方は2種類ある
投げ方と姿勢の関係性
投球に関わる肋間筋の柔軟性
ヒジを上げるための方法論
理想的な下半身の使い方
体重移動時の軸足の動き
お尻が上がる投球フォーム
投球時の指の使い方を知る
指の力の方向と球速の関係性
制球力を高めるための遊び…など
3章 守備の指導法
「捕る」より先に「逃げる」を教える
柔らかいハンドリングを身につける
「捕る」と「投げる」をつなげる
ゴロ捕球の正しい姿勢を知る
ゴロ捕球上達のステップ
「投球」と「送球」の違い
スナップスローを身につける
トップレベルのゴロ捕球を分析
フライ捕球の指導方法
キャッチャーのキッチングを学ぶ
スローイング技術を高める
勝つために必要なピッチャーの守備…など
4章 打撃の指導法
打撃指導のステップアップ
捻転動作を身につける
体重移動の感覚を養う
体重移動を養うスイングドリル
構えのポイント
投球の到達時間に気を配る
軸足でタメを作る
バットの握り方を学ぶ
インサイドアウトのバット軌道
コース別の対応方法
「変換効率」を上げていく…など
5章 ジュニア期のコーチング
「きわめる」から「わきまえる」へ
野球のゲーム性を学ぶ
成長期に起きるクラムジーやタイトネス
身長とパフォーマンスの関係性
デュアルタスクの重要性
子どもの遊びは「回遊性」がカギ…など
今回紹介するのは、『新しい少年野球の教科書 科学的コーチングで身につく野球技術』(カンゼン)です。筑波大学硬式野球部監督の川村卓准教授が、これまでの研究結果や経験をベースに考案された、小学生年代に特化した野球技術の指導本です。その中からの一部をご紹介します。
「子ども」と「大人」の境界線
ひとつの目安は「骨端線」
「子ども」と「大人」の体は違う。
では、両者の境界線はどこにあるのだろうか。法律的に言えば、成人式を迎える歳の年齢から酒やタバコがオッケーになり、大人の仲間入りを果たす。
発育発達という観点で考えたときには、どうなるだろう。ひとつの目安となるのが、「骨端線」の存在だ。骨端線とは、骨の中央部と端の間にある軟骨を表す。文字通り、軟らかい骨であり、この軟骨が成長することによって、長軸方向に骨が伸ばされ、背が伸びていく。すなわち、「骨の成長点」と言い換えることもできる。
子どものレントゲンを撮ると、うっすらと骨端線が見える。この状態を「骨端線が開いている」と表現するが、その間はまだ背が伸びると考えていいだろう。一方で、骨端線が見えず「骨端線が閉じている」と、身長の伸びがほぼ止まったと考えることができる。
メジャーリーグでも「二刀流」として、圧倒的な存在感を放っている大谷翔平選手(エンジェ
ルス)は、聞くところによると、高校2年生の夏頃に股関節の骨端線を損傷して、その頃は強度の高い練習はほとんどできなかったそうだ。結果的にはそこで無理をさせなかったことが、その後の成長につながっていったとも想像できる。
子どもと大人の境界線は、骨端線との関係性が強い。大谷選手のような190センチを超える高身長群は例外として、ほとんどの選手が中学生のうちに骨端線が閉じる。そうなれば、器具を使った筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)のような強度の高い練習をしても、故障のリスクが低くなる。中学生であっても、骨端線が閉じていれば、ある程度は負荷をかけたトレーニングをしても問題ないと判断できるわけだ。もっといえば、いわゆる「早熟」と呼ばれる子どものなかには、小学校高学年のうちに骨端線が閉じている場合もある。なお、一般的には男子よりも女子のほうが、骨端線が閉じるのが早い傾向にある。
では、骨端線が閉じたかどうかをどのように判断すればいいだろうか。
簡単なのはレントゲンを撮ることだ。わかりやすいのが手のひらのレントゲンで、骨端線が開いている子どもの手は骨がスカスカの状態である。小さいお子さんがいれば、手のひらを軽く押してみてほしい。スカスカで空間があるので、ぐにゃぐにゃしているのがわかるはずだ。
一方で骨端線が閉じていると、骨の密度が濃くなり、ぐにゃぐにゃ感がなくなっている。ただ、実際のところは、ケガをしていないのにレントゲンを撮ることは医療法で認められていない。
レントゲンの代わりに判断できることとすれば、あごのヒゲだ。男子に限った話にはなるが、産毛のような柔らかいヒゲではなく、大人と同じような硬いヒゲが生えてくれば、骨端線が閉じてきていると推測することができる。この知識は、スポーツ整形のドクターに教えてもらった。
余談になるが、私が勤める筑波大には2メートルを超すバレーボール部の選手がいるが、元監督から大学生になってもまだ大人のヒゲが生えていないものもいると聞いた。すなわち、身長がまだまだ伸びるということ。それぐらい、人間の発育発達には個人差がある。だからこそ、年代別の指導方法が必要になってくるのだ。
(1章 発育発達の基礎知識「『子ども』と『大人』の境界線」より)
■内容紹介■
プロ指導者も学ぶ野球コーチングの基本
ジュニア年代に特化した年代別指導メソッド
すべての教え方には、明確な根拠がある!
科学的理論に基づき、年代別の野球指導を体系化
ケガを予防し、「投球・打撃・守備」の正しい野球動作を習得
QRコードで練習メニューの動画を確認できる!
スペシャルインタビュー 吉井理人(千葉ロッテ一軍投手コーチ)収録
本書はこれまでの研究結果や経験をベースに考案された、小学生年代に特化した野球技術の指導本です。
成長段階の子どもたちには、「できることとできないこと、教えたほうがいいことと教えないほうがいいこと」があります。
例えば、身体的に未発達で骨格がまだ出来上がっていない小学生が、プロ野球選手のような投げ方ができるわけがありません。
ヒジを上げたくても、上がらない子もいる。体に負担がかかりすぎて、投球障害につながる恐れもあるのです。
そこで野球未経験の子どもたちや、身体的に未発達の小学生・中学生の時期に、
何をどのように教えていけばいいのかを1冊にまとめました。
子どもにもイメージしやすいように、さまざまな練習方法を動画で確認にできるようにしましたので、
あわせて役立ててください。
【目次】
インタビュー 吉井理人(千葉ロッテマリーンズ投手コーチ)
1章 発育発達の基礎知識
「子ども」と「大人」の体は違う
「子ども」と「大人」の境界線
骨の成長とトレーニングの関係性
骨端線とヒジ痛の関係性
障害リスクのガイドライン…など
2章 投手の指導法
成長期のボール投げ
ヒジを上げて投げる重要性
ヒジの上げ方は2種類ある
投げ方と姿勢の関係性
投球に関わる肋間筋の柔軟性
ヒジを上げるための方法論
理想的な下半身の使い方
体重移動時の軸足の動き
お尻が上がる投球フォーム
投球時の指の使い方を知る
指の力の方向と球速の関係性
制球力を高めるための遊び…など
3章 守備の指導法
「捕る」より先に「逃げる」を教える
柔らかいハンドリングを身につける
「捕る」と「投げる」をつなげる
ゴロ捕球の正しい姿勢を知る
ゴロ捕球上達のステップ
「投球」と「送球」の違い
スナップスローを身につける
トップレベルのゴロ捕球を分析
フライ捕球の指導方法
キャッチャーのキッチングを学ぶ
スローイング技術を高める
勝つために必要なピッチャーの守備…など
4章 打撃の指導法
打撃指導のステップアップ
捻転動作を身につける
体重移動の感覚を養う
体重移動を養うスイングドリル
構えのポイント
投球の到達時間に気を配る
軸足でタメを作る
バットの握り方を学ぶ
インサイドアウトのバット軌道
コース別の対応方法
「変換効率」を上げていく…など
5章 ジュニア期のコーチング
「きわめる」から「わきまえる」へ
野球のゲーム性を学ぶ
成長期に起きるクラムジーやタイトネス
身長とパフォーマンスの関係性
デュアルタスクの重要性
子どもの遊びは「回遊性」がカギ…など