――実施してから見えてきた問題点はありますか?
受診は任意です。検診を受けるとケガを見つけられる。見つけられると野球ができなくなるので困るという指導者が多いのも事実です。来る人と来ない人に分かれてきましたね。
ただ、昨今は「球数制限」の議論も行われていますし、親や指導者の意識が変わってきています。指導者も子供を怪我させると責任を問われ、訴訟につながりかねません。そういうことも浸透し、いい意味で身構える人が増えて、参加者は増えています。監督さんも若返って、意識が高い人が増えました。
この野球ひじ検診は、OCD(離断性骨軟骨炎)などの障害を見つけることが目的です。最初の頃に比べると、判定基準は変わってきました。第1回では92人の受診者のうち42人を第二次検診対象者にしました。当初は圧痛で判断していたのですが、部位が損傷していて「痛い」というのか、指で押されて「痛い」というのか、判断が難しかったのです。
最近は二次検診に回すのは1%程度になっています。僕たちの経験値も上がったわけですね。
参加者は小学生がほとんどです。中学生はリトルシニアやボーイズなど団体が変わるので、個別でチームにお知らせしてきていただいています。
本当は新潟県のように「野球協議会」を作って、あらゆる世代の野球選手を守る取り組みをすべきだお思いますが、まだ難しいですね。
――親や指導者の意識を変えるのは難しい?
小学校のチームの指導者はほとんどがお父さんです。仕事の片手間で休みの日に子供たちを指導しているお父さんに、体協の指導者講習会を受けなさいとか、野球医学の知識を身に着けなさいというのは現実的に難しいです。
それにわが子が卒業すれば、お父さんも一緒に卒業するのが前提になっていますから、正しい指導法を学んでも、引き継ぐことが難しいんですね。このあたりが悩ましいです。
――「野球離れ」が深刻な中ですが?
奈良県でも、野球人口は減っています。チームの統合が進んでいます。昔は野球しかなかったですが、今はサッカー、バスケットボール、卓球など選択できるスポーツが増えています。そんな中で野球ひじ検診を通じて、何とか競技人口の減少に歯止めがかかればと思います。
今後は、奈良県全域の小学生の検診をしたい。そのために奈良県軟式野球連盟とも話し合いを持っています。
また県内の野球関係の企業、団体に声をかけて協賛金もいただいています。もちろん、本業がある中で片手間での仕事ですから、できることには限界がありますが。
次回、第10回の野球ひじ検診は、2020年2月23日に行いますが、決まってから大きな大会とぶつかっていることがわかりました。マクドナルド杯の予選があるんですね。受診者は減るかもしれません。
いろいろな問題はありますが、こういう形で地道に活動を続けていければと思います。(取材・写真:広尾晃)