そこでNYBOCは、
「少子化や野球離れを始めとする変わりゆく野球事情に危機感を持つとともに、今こそ新潟の目指すべきスタイルは何か、保護者の方が安心して大切なお子様を預けられる環境づくりとは何か、それらを団体の垣根を越えて共有したい、そして野球を、スポーツの素晴らしさを次世代にも伝えていきたい。」
という方針を打ち立てた。
2012年4月には「野球手帳」を製作。これを県内で野球をする小中学生2万人に配布した。
「野球手帳」には、
1. 少年期の骨や関節の特徴と身体の成長
2. 少年野球で多い故障について
3. 障害予防セルフチェック
4. ストレッチング
5. 投球動作の基本
6. 投球数のガイドライン
7. クールダウン、アイシング
8. 怪我をしたときの応急処置
9. 野球肘検診について
と、野球をする上で知っておくべき「身体を守る知識」がわかり安く説明されている。
その上で「野球肘検診の記録」を記入することができる。
小学校から中学、高校と団体、チームを変わりながら野球を続けても、子どもたちの成長の記録、怪我や既往歴の記録をそのまま引き継ぐことができた。
この「野球手帳」の普及が、新潟県青少年野球界に「共通認識」を醸成する上で大きな役割を果たした。
さらにNYBOCは「21C型穂波(にいがたほなみ)プロジェクト」を立ち上げる。野球を「始めよう!楽しもう!続けよう!」のスローガンのもと、野球サミットの開催、新潟メソッドの作成、障がい予防検診・研修会の充実などの活動を始めた。
2016年、2018年には「新潟野球サミット」を開催。
また2018年12月には「HARD OFF ECOスタジアム新潟」で、新潟青少年野球フェスタを開催。野球肘検診には81チーム、1450名が受信した。このなかで約70%の子供が「野球手帳」を持参していた。
NYBOCでは、今後の少年野球の方向性として、「スポーツマンシップを前提として、球数制限を導入するとともに、障碍の少ない投球動作の指導ができる指導者の育成」が必要だとしている。
「できることから、新潟から。」のスローガンには、議論の段階を経て、行動へと踏み出した新潟県青少年野球界の意気込みを見ることができる。
今春の新潟県高野連の「球数制限」導入のニュースは、唐突なように思えたが、その背景には10年近い歳月をかけた、新潟県青少年野球界の真摯な取り組みがあったのだ。(文・写真:広尾晃)