ニュース 2019.11.25. 17:00

少年野球指導者も参考にしたい、ラグビー界のジュニア育成「2つの方針」

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横浜市港北区の「あおばスカイフィールド」に、子どもたちの明るい声が響いていました。小学3年生から中学生を対象とした平日の放課後に開催されるラグビー教室「ラグビーパークアカデミー」横浜会場のレッスンの日。約25人の小3・4クラスには女の子の姿もあり、和気あいあいとした雰囲気に包まれていました。




■「敵」という言葉を使わず「相手」という


「『ラグビーっていいスポーツだよね』って言ってもらえるのが1番うれしい瞬間です。試合に足を運んでくださった方から『会場にいてすごく楽しかった』『勝っても負けても、健闘を称え合うのが素晴らしいね』って言っていただけたので、ラグビーを長年、地味に大事にしてきた人間としてはすごくうれしいです」

そう話してくれてのは、一般社団法人ラグビーパークジャパン代表理事/メインコーチの川合レオさん。玉川大学3年時にニュージーランド留学を経験し、若手の日本代表候補選手や大学生のチームのヘッドコーチなどを経て、現在はJRFU(日本ラグビー協会)の普及育成部門にも長く携わっている。この度のラグビーワールドカップでも国民に称賛された、ラグビーの持つ「ノーサイドの精神」についてお話を聞きました。

川合さん「ラグビーでは『敵』という言葉を使いません。『相手』という言葉で表現するんです。グラウンドの中で行われているぶつかり合い(コンタクト)というのはお互いに一定の恐怖心を乗り越えて行っていることなので、終わったあとに『お互いよく戦ったよな』という気持ちを感じ合えるんです。非日常的空間を共有し合った仲間意識がゲームが終わると自然に芽生える。それは大人も子供も同じです。
そして、試合を見ているファンの人は、負けても選手やチームに罵声を浴びせる人はいません。コンタクトプレーなどはファンの方からすると超人的なプレーの連続なので、そんなプレーを見せてくれて『ありがとう』という感情がこみ上げてきます。指導者としても、プレーヤーのレベルに関係なく、勇気を振り絞って戦っている姿には選手たちに感謝の気持ちすら感じます」

■足並み揃えて一つになれるラグビー界


2009年、10年前に「ラグビーパークアカデミー」を設立。最初は3人くらいの生徒でスタートしましたが、評判が口コミで広がり、現在は生徒数が210人まで増えたとか。ラグビーパークで始めたチーム活動を行わない「アカデミー」というスタイルは、多くのラグビー関係者の共感を呼び、今では多くの場所で開催されています。国としてもスポーツ庁が「放課後ラグビープログラム」(https://www.houkagorugby.info/) という施策を打ち出し、公民一体で普及の輪が広がっていきました。

川合さん「設立の動機は2つありました。1つは筑波大大学院で学んでいるときに『これからのスポーツは学校じゃなくて地域で支えていかなきゃいけない』ということを多く見聞きしたこと。もう1つが、日本のラグビー環境を考えた時に、小・中学生が平日にラグビーをする場所がないという問題を何とかしたいと思ったからです。中学になると、学校の部活にラグビーがなくて、週に1回の週末の地域ラグビースクールの活動だけだと、他のスポーツに流れたり、ラグビーを辞めちゃう子どもがいました。『じゃあ、平日に不特定多数の子にラグビーを教えられる環境を作ってみてはどうか』と考え、始めました。それが結果的にスポーツ庁事業にもなり、さらに民間でも多くの方が開催してくれる流れになっています。

リーチ マイケル主将が「ONE TEAM」と言っていましたが、私が始めたアカデミーに限らず、日本ラグビーは、何かやろうとなったときは比較的ひとつになりやすいと感じます。今回も日本ラグビーフットボールの企画で、W杯直後に幼児や小・中学生向けに全国のラグビースクールで「体験会」を一斉に開催しています。全国で足並みをそろえてポスターを作り、11月から実施しています(https://www.rugby-japan.jp/news/2019/10/17/50206)。競技人口が少ないからできることかもしれませんが、全国のラグビースクールが足並みを揃えて体験会を開催することは他の種目では珍しいことではないかと思います」

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