勉強との野球を両立させる難しさは常にある。ミーティングでは「勉強をやっていたら野球に繋がることもあるし、野球が勉強に繋がる部分もある」と話す。どちらも気を抜けない。高校生が二足のわらじを履くのはなかなか難しいが、創意工夫を重ねればできることはある。例えばグラウンドで練習ができるのは週で3日間、うち全面使用可能なのは1日のみだ。その中で何ができるかをいつも考えてきた。
「グラウンドが使えない時は体幹やウエイトトレーニングができるし、ネット際のスペースなどは何とか使えるので、そのあたりをうまく使って練習します。そうやって考えて工夫しながらやることが将来に繋がります。勉強では答えを求めて日々机に向かっていますが、野球の練習は全てが結果に繋がって答えになる訳ではないので…。自分たちで課題を見つけてそこに向けてどう努力していくべきか。特に北野の子たちは頭が良いので、“この練習は何のためになるんやろ”って頭でっかちになりがちなんです。意味がないと思っていても最終的には意味があるんだよということを教えないといけない」。それでも意見を押し付けるのではなく、理由や意味を説くことを心掛けている。
一昨年、甲子園で春夏連覇した大阪桐蔭、今夏の甲子園で優勝した履正社は、大阪の高校野球でも“2大巨塔”のような存在だ。北野では春の大会や夏の大会前に必ず具体的な目標を立てているが、選手たちの「ベスト8」という答えに渡辺監督は納得がいかない。
「あの2校を前に簡単にあきらめてしまっている。それでは面白くないですよね。強い相手にも立ち向かっていく気持ちを忘れないでほしいんです。特にここには将来、上に立つ人間になる可能性の高い子が多いので、野球を通して立ち向かっていく勇気を持って欲しい。勉強も野球も頑張ることは同じですから」。
勉強と野球をどちらも全力で。若い指揮官の下、冬を超えて古豪の戦士たちの姿がどう変わっているのか、そして2強を脅かす存在となれるか。来年の大阪を熱くする戦いぶりを期待したい。
(取材・文/写真:沢井史)