しかし残念なことは、昨年参加していたチームのいくつかが参加しなかったこと。大会を控えていたからだが、このタイミングで主力選手にOCDなどの障害が見つかれば、試合で投げさせることができなくなることを指導者が恐れたからだという。
ちなみにOCDは、日本の小学生レベルでは、平均すれば受診者の1.5%前後が見つかっている。しかし、アメリカや中南米諸国で同様の検査をしても、ほとんど見つからない。
日本では、まだ成長途上にある子どもに、大人並みの練習や試合を科しているためにこの年代から深刻な障害を負わせてしまうのだ。
指導者や保護者が、こうした野球に伴う健康障害メカニズムを理解し、指導法や練習時間の見直しをかけない限り、こうした異常な数値を下げることはできない。
神戸野球肘検診は、受診も様々な体験や講習も無料。医療機関はボランティアで参加している。医療スタッフも兵庫県だけでなく全国から駆け付けている。費用は協賛スポンサーに加えて「神戸野球肘検診募金」などでまかなっている。
検診に参加した医師の一人は話した。
「うちの病院に来る子どもたちはほとんどが痛くなってからやってくるので、治療も大変になりますし、長い期間野球ができなくなります。でも、野球肘検診では自覚症状がない子どものエコーをとってみて初期の異常が見つかることも多いんです。初期の段階で見つかれば治療もリハビリも短くてすみます。 野球肘検診の意義を指導者やお父さん、お母さんがよく理解して、積極的に参加してほしいですね」(取材・文/写真:濱岡章文)