「ビジョントレーニング」という言葉を野球界でもよく聞かれるようになりました。目の見るチカラ、「視覚機能」を高めるためのトレーニングですが、正しく理解して子ども達にトレーニングが行えているでしょうか? 一般社団法人 日本スポーツビジョン協会理事・事務局長の石橋秀幸さんにお話を伺いました。
プロ野球選手でも打者はインパクトの瞬間まではボールを見ることができません。2〜3メートル手前ぐらいまで見て、その後はボールの軌道ラインを予測(フィードフォワード)して振るということをしています。そのため打者は投手が投げる変化球のパターンを覚えようと何回もバッティング練習を繰り返し行います。
一方、守っている野手はボールがバットに当たるインパクトの瞬間を見ることができるので、打者のスイング、打球音に反応し、ボールから目をはなさないことが大切です。1人でも手軽にできるビジョントレーニングをご紹介しましょう。
両手を広げ、頭を動かさないで眼球だけで爪の先を見て視線を左右に素早く飛ばします。日常生活での目の使い方と同じです。
同じく両手を広げて片方の指を近づけたり遠ざけたりしながら、その指を追います。野球では目を切らず、対象物を追わなければいけないので、より競技に近い目の使い方になります。
10回を1セットとして2〜3セット程度、どちらも行うようにしましょう。毎日行っても構いません。目を動かす筋肉のストレッチにもなりますし、たとえば手の位置を斜めにしたり、円にして動かしたりすると眼球運動にもなります。
また守備ではフライ捕球で野手同士が交錯するケースがあります。自分が止まった状態で相手が走ってくると認識しやすいのですが、お互いが走っていると相対速度で止まって見えてしまうことがあります。こういったアクシデントに備えて、特に外野手は周辺視野を広げるようなトレーニングは必要になってくると思います。フェンスとの距離感なども注意が必要です。
2人組でお互い正面を向いて手を開き、1人が指をランダムに動かして、もう1人が指の本数を数えます。距離が遠いほど簡単ですが、50cmくらいをめどに近づくと見えにくくなります。動かないものは認識しにくいので、指を動かして本数を数えるようにしましょう。
守備機会ではさらにコントラスト(明暗比)感度が問題となることもあります。白いボールが白い雲にかぶって見えなくなってしまうというものです。これは加齢によって影響を受けやすいものですが、若いアスリートの場合はあまり当てはまりません。むしろ見えにくい状態が続く場合は、静止視力に問題がある可能性があるため、視力検査を受けて自分の視力を把握し、適切な対応をとるようにしましょう。
ビジョントレーニング(1)、(2)で紹介したパシュートとサッケードの応用編です。
「子どもは大人のミニチュアではない」といわれますが、子どもの体は発達段階にあります。大人に比べて身長も低く、中心視や周辺視野など見えている範囲が違うということを理解する必要があります。「見えるだろう」ではなく「見えていないかもしれない」という前提に立って、体力測定などとともに視力測定を実施することや、目の外傷を予防すること、その上で必要に応じて視機能を妨げる習慣を減らし、視覚を鍛えるビジョントレーニングに取り組んでもらえればと思います。
(聞き手・取材:西村典子)
一般社団法人 日本スポーツビジョン協会理事・事務局長。
日本体育大学卒。慶應義塾大学大学院卒。プロ野球、広島東洋カープに15年間在籍(1997年はメジャーリーグ ボストン・レッドソックスへコーチ留学)、トレーニングコーチとしてプロ野球選手を指導してきた。現在は、慶應義塾大学スポーツ医学研究センターでの研究、神奈川大学人間科学部における教育、そして現場においてプロアスリートから小学生まで幅広い世代にトレーニング指導をおこなっている。
プロ野球選手でも打者はインパクトの瞬間まではボールを見ることができません。2〜3メートル手前ぐらいまで見て、その後はボールの軌道ラインを予測(フィードフォワード)して振るということをしています。そのため打者は投手が投げる変化球のパターンを覚えようと何回もバッティング練習を繰り返し行います。
一方、守っている野手はボールがバットに当たるインパクトの瞬間を見ることができるので、打者のスイング、打球音に反応し、ボールから目をはなさないことが大切です。1人でも手軽にできるビジョントレーニングをご紹介しましょう。
サッケード
両手を広げ、頭を動かさないで眼球だけで爪の先を見て視線を左右に素早く飛ばします。日常生活での目の使い方と同じです。
パシュート
同じく両手を広げて片方の指を近づけたり遠ざけたりしながら、その指を追います。野球では目を切らず、対象物を追わなければいけないので、より競技に近い目の使い方になります。
10回を1セットとして2〜3セット程度、どちらも行うようにしましょう。毎日行っても構いません。目を動かす筋肉のストレッチにもなりますし、たとえば手の位置を斜めにしたり、円にして動かしたりすると眼球運動にもなります。
また守備ではフライ捕球で野手同士が交錯するケースがあります。自分が止まった状態で相手が走ってくると認識しやすいのですが、お互いが走っていると相対速度で止まって見えてしまうことがあります。こういったアクシデントに備えて、特に外野手は周辺視野を広げるようなトレーニングは必要になってくると思います。フェンスとの距離感なども注意が必要です。
ペアで行うビジョントレーニング
2人組でお互い正面を向いて手を開き、1人が指をランダムに動かして、もう1人が指の本数を数えます。距離が遠いほど簡単ですが、50cmくらいをめどに近づくと見えにくくなります。動かないものは認識しにくいので、指を動かして本数を数えるようにしましょう。
守備機会ではさらにコントラスト(明暗比)感度が問題となることもあります。白いボールが白い雲にかぶって見えなくなってしまうというものです。これは加齢によって影響を受けやすいものですが、若いアスリートの場合はあまり当てはまりません。むしろ見えにくい状態が続く場合は、静止視力に問題がある可能性があるため、視力検査を受けて自分の視力を把握し、適切な対応をとるようにしましょう。
その他ビジョントレーニング
ビジョントレーニング(1)、(2)で紹介したパシュートとサッケードの応用編です。
「子どもは大人のミニチュアではない」といわれますが、子どもの体は発達段階にあります。大人に比べて身長も低く、中心視や周辺視野など見えている範囲が違うということを理解する必要があります。「見えるだろう」ではなく「見えていないかもしれない」という前提に立って、体力測定などとともに視力測定を実施することや、目の外傷を予防すること、その上で必要に応じて視機能を妨げる習慣を減らし、視覚を鍛えるビジョントレーニングに取り組んでもらえればと思います。
(聞き手・取材:西村典子)
石橋秀幸さんプロフィール
一般社団法人 日本スポーツビジョン協会理事・事務局長。
日本体育大学卒。慶應義塾大学大学院卒。プロ野球、広島東洋カープに15年間在籍(1997年はメジャーリーグ ボストン・レッドソックスへコーチ留学)、トレーニングコーチとしてプロ野球選手を指導してきた。現在は、慶應義塾大学スポーツ医学研究センターでの研究、神奈川大学人間科学部における教育、そして現場においてプロアスリートから小学生まで幅広い世代にトレーニング指導をおこなっている。