■お茶当番もお父さんコーチも禁止!
練習時間がラスト1時間になった時点でようやくボールが登場。キャッチボールがスタートし、この日初めて野球の練習らしい光景が広がりました。
その後は紅白戦をやりたい子、スラッグラインや跳び箱をやりたい子に分かれ、子ども達は思い思いに体を動かしました。日陰で休みながら談笑する子や外野の奥で虫取りに夢中になる低学年の子もいましたが、このチームではそれもOK。何をするかは子ども達が自分で決めるのです。
紅白戦と虫取りが白熱する中、練習終了時刻の12時が近くなるとお迎えのお母さんの姿が増えてきました。
そういえば練習中、グラウンドにお母さんの姿が一人もなかったことに気づきました。それはチームとしてお茶当番を廃止していることと、子どもの自立を促すため「子どもにできることは子どもにさせる」というチームの方針が関係しているからなのかもしれません。
また、練習中はお父さんコーチの姿もありませんでした。それはチームで明確に禁止されているから。理由はお父さんがそれぞれの知識で指導してしまうとチーム方針に沿った指導ができなくなるため。チームとしてお父さんに求めるのは「できる限り手を出さず、口を出さず、見守ること」なのだそうです。
■指示をしない監督とコーチ
3時間の練習を思い起こせば、監督とコーチは子ども達に練習の指示もほとんど出していませんでした。それは、高橋監督が目指しているのは試合に勝つことではなく「子ども達に野球を好きになってもらうこと」だから。そして、日々の練習や活動の中から子ども達が「考え」「気づき」「感じる」ことができるようになってほしい。個人としての自立、集団の中での自立ができるように成長してほしいと願っているからに他なりません。
この日の6年生たちの行動を見ているだけでも、「考え」「気づき」「感じる」ことは浸透しているように思えました。そしてそれは、今は虫取りに夢中になっている低学年の子たちにもやがて受け継がれていく姿も想像できました。
練習中の子ども達の笑顔と、練習終了後のまだ野球をやりたそうな顔が印象深い熊谷ドリームスのグラウンドでした。(取材・写真/永松欣也)
*後編では高橋監督のチーム設立の経緯や子ども達への思いなどを紹介します。