サカイク読者の保護者のみなさんに向けて、お子さんへの適切なサポートの仕方を知ってほしい。その想いから、栄養学の権威である丸元康生先生に、栄養の観点からレクチャーをしてもらいました。第2回は、大人にも、子どにも影響があるストレスについて。どのようにすれば、お子さんをストレスから守ることができるのでしょうか?
今回のテーマは「ストレス」です。大人も子どもも、様々なストレスを抱えています。大人であれば、人間関係、健康、仕事、金銭的なストレス。子どもであれば勉強やスポーツ、学校生活、友人関係など、悩みのタネはいたるところにあります。
ストレス反応は「Fight and Flight反応」とも言います。文字通り、「戦うか、逃げるか」という意味です。原始時代、人間にとって最大のストレスは猛獣が襲ってくることでした。生死に関わることなので、とてつもないストレスがかかっていました。
その際、ストレスに対応することで、体の中に変化が起こります。猛獣を相手に戦うにしても、逃げるにしても、爆発的なパワーが必要です。戦うか、逃げるか――。その状況下に置かれると、体内からアドレナリンやコルチゾールといったホルモンの分泌が起き、体内に留まっていたエネルギー源が血中に放出されます。つまり、全力を出すためのエネルギーが体内を駆け巡るわけです。
現代に生きていて猛獣に襲われることはありませんが、人間の体はストレスを感じたときに、原始時代と同じ反応をします。嫌なことが起きたときや、スポーツをして急激に身体を動かしたときなどには、アドレナリンやコルチゾールが分泌されるのです。
ストレスが加わったときに、反応してアドレナリンやコルチゾールを分泌する臓器が「副腎」だというのは、前回の記事でもお話ししました。人間の身体には腎臓が左右にあり、副腎は腎臓の上にちょこんと乗っている臓器です。
慢性的にストレスがかかっている状態だと、常にアドレナリンやコルチゾールを分泌しているので、副腎が疲れ果ててしまいます。それが体がだるくなったり、疲れが抜けない状態につながります。
ストレス、プレッシャーがかかりつづける
↓
副腎が常にアドレナリン
コルチゾールを分泌
↓
常に緊張状態
副腎の疲れ
↓
体がだるい、疲れが抜けない・・・
■メンタルの不調の原因に目を向けよう
では、副腎が疲れ果てる問題を起こしやすいのは、どんなタイプの人なのでしょうか?
まず、性格的に打たれ弱く、細かなことを気にしやすい、すぐに萎縮してしまう人です。ささいなことでも、副腎が慌ててバタバタ動き過ぎ、消耗してしまいます。
精神的にタフでプレッシャーに強い人なら大丈夫かというと、そうでもありません。頑張れる強さがある人は、頑張り過ぎてしまうからです。責任感が強かったり、周囲の期待に応えようとする気持ちが強すぎたりすると、副腎にも無理がかさなって、悲鳴を上げることがあります。
ある時ガクッと燃え尽きたように、体がとんでもなく重だるくなり、やる気がゼロになってしまう人がいますが、副腎のパワーが尽きるとこうなってしまいます。ですから、繊細で傷つきやすい子でも、プレッシャーに強い子でも、どんなタイプの子でも、頑張っている時には副腎をケアしてあげる必要があります。
「いつも助けてくれるお母さんに喜んでほしいから、ボクも頑張るよ!」という優しいお子さんもいらっしゃるでしょう。一生懸命頑張っているその子の体の中では、副腎がフルパワーで働き続けているはずです。
お子さんは自分の副腎の面倒をみることは難しいので、保護者の方のサポートが大切になります。ストレスを発散する時間を作ってあげたり、十分な睡眠をとらせたり。副腎の働きを支える栄養素をしっかり摂らせることも重要なポイントです。
ストレスに対応するために、副腎で様々なホルモンが作られるわけですが、副腎が弱ってる人におすすめの栄養素はビタミンC、パントテン酸(ビタミンB群の1種)、マグネシウムなどのビタミン・ミネラルです。ビタミンB群はチームで働くので、パントテン酸だけでなく、ビタミンB 1、 B 2ナイアシンなどとセットで摂取することをおすすめします。
マグネシウムはストレスと密接に関わっています。ストレスがかかった状態が長く続くと、尿からマグネシウムが多く排出されます。その結果、ストレスへの抵抗力が弱まってしまうのです。
ストレスへの抵抗力を高めるために必要なマグネシウムは、エネルギーの合成に不可欠な栄養素でもあります。「幸せホルモン」と言われている、セロトニンという神経伝達物質がありますが、これを作るときにもマグネシウムは必要です。セロトニンが不足すると、イライラしやすくなったり、落ち込んだり、鬱になる原因になります。
人間はストレスを受けると、副腎が反応してアドレナリンやコルチゾールを分泌することは、繰り返しお伝えしてきました。そのときに、大量に消費するのがビタミンCです。ビタミンはCは免疫にも重要で、白血球の働きを高めることやコラーゲンの生成にも必要な栄養素です。
全身の臓器でビタミンCは必要なのですが、副腎が活発に動くと、優先的にそちらに送られてしまいます。結果として、免疫力アップや肌の組織を保つコラーゲンを作るために必要なビタミンCが、副腎でたくさん消費されてしまうわけです。
そうすると免疫力が低下したり、風邪をひきやすくなります。そのため、食事に加え、サプリメントで補うことも選択肢に入れておくといいと思います。
必ずしも、「ストレス=悪いもの」とは限りません。仲間と切磋琢磨しながら勝利を目指していくことも、挑戦して失敗や挫折を経験することも、その過程ではストレスやプレッシャーにつぶされそうになるかもしれませんが、本人の成長につながる貴重な財産になります。要は、ストレスがマイナスに働かないように、必要なケアをしてあげた方がいいということです。
お子さんが毎日頑張っているときには、体の中にとても頑張っている臓器があるんだということをわかっておくと、保護者の方も適切なサポートができると思います。
まずはお子さんの様子を観察し、状態を把握して、過度なストレスやプレッシャーから解放してあげること、そして体のことを理解しビタミンCやB群、マグネシウムなど必要な栄養素を補給してあげる。それこそが保護者がすべき、唯一にして最大のサポートだと思います。
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丸元康生
1958年生まれ。青山学院大学文学部日本文学科卒業。米国ワシントン州、イースタン・ワシントン大学卒業。栄養学、生化学を専攻。ホリスティックカレッジ・オブ・ジャパン講師。平田ホリスティック教育財団理事。著書に『スンナリ分かる栄養学ベーシック』、『ビタミンがスンナリわかる本』、『スンナリわかる脂肪の本』(主婦と生活社)、『豊かさの栄養学』シリーズ、訳書に『ジョナサン・ライト博士の新・栄養療法』(廣済堂出版)など。栄養学ジャーナリストとして世界最先端の米国栄養学を日本に伝えてきた先駆的存在。
ストレスがかかると分泌される「アドレナリン」「コルチゾール」
今回のテーマは「ストレス」です。大人も子どもも、様々なストレスを抱えています。大人であれば、人間関係、健康、仕事、金銭的なストレス。子どもであれば勉強やスポーツ、学校生活、友人関係など、悩みのタネはいたるところにあります。
ストレス反応は「Fight and Flight反応」とも言います。文字通り、「戦うか、逃げるか」という意味です。原始時代、人間にとって最大のストレスは猛獣が襲ってくることでした。生死に関わることなので、とてつもないストレスがかかっていました。
その際、ストレスに対応することで、体の中に変化が起こります。猛獣を相手に戦うにしても、逃げるにしても、爆発的なパワーが必要です。戦うか、逃げるか――。その状況下に置かれると、体内からアドレナリンやコルチゾールといったホルモンの分泌が起き、体内に留まっていたエネルギー源が血中に放出されます。つまり、全力を出すためのエネルギーが体内を駆け巡るわけです。
現代に生きていて猛獣に襲われることはありませんが、人間の体はストレスを感じたときに、原始時代と同じ反応をします。嫌なことが起きたときや、スポーツをして急激に身体を動かしたときなどには、アドレナリンやコルチゾールが分泌されるのです。
ストレスが加わったときに、反応してアドレナリンやコルチゾールを分泌する臓器が「副腎」だというのは、前回の記事でもお話ししました。人間の身体には腎臓が左右にあり、副腎は腎臓の上にちょこんと乗っている臓器です。
慢性的にストレスがかかっている状態だと、常にアドレナリンやコルチゾールを分泌しているので、副腎が疲れ果ててしまいます。それが体がだるくなったり、疲れが抜けない状態につながります。
↓
副腎が常にアドレナリン
コルチゾールを分泌
↓
常に緊張状態
副腎の疲れ
↓
体がだるい、疲れが抜けない・・・
■メンタルの不調の原因に目を向けよう
では、副腎が疲れ果てる問題を起こしやすいのは、どんなタイプの人なのでしょうか?
まず、性格的に打たれ弱く、細かなことを気にしやすい、すぐに萎縮してしまう人です。ささいなことでも、副腎が慌ててバタバタ動き過ぎ、消耗してしまいます。
精神的にタフでプレッシャーに強い人なら大丈夫かというと、そうでもありません。頑張れる強さがある人は、頑張り過ぎてしまうからです。責任感が強かったり、周囲の期待に応えようとする気持ちが強すぎたりすると、副腎にも無理がかさなって、悲鳴を上げることがあります。
ある時ガクッと燃え尽きたように、体がとんでもなく重だるくなり、やる気がゼロになってしまう人がいますが、副腎のパワーが尽きるとこうなってしまいます。ですから、繊細で傷つきやすい子でも、プレッシャーに強い子でも、どんなタイプの子でも、頑張っている時には副腎をケアしてあげる必要があります。
「いつも助けてくれるお母さんに喜んでほしいから、ボクも頑張るよ!」という優しいお子さんもいらっしゃるでしょう。一生懸命頑張っているその子の体の中では、副腎がフルパワーで働き続けているはずです。
お子さんは自分の副腎の面倒をみることは難しいので、保護者の方のサポートが大切になります。ストレスを発散する時間を作ってあげたり、十分な睡眠をとらせたり。副腎の働きを支える栄養素をしっかり摂らせることも重要なポイントです。
ストレスへの抵抗力を高めるために必要な栄養
ストレスに対応するために、副腎で様々なホルモンが作られるわけですが、副腎が弱ってる人におすすめの栄養素はビタミンC、パントテン酸(ビタミンB群の1種)、マグネシウムなどのビタミン・ミネラルです。ビタミンB群はチームで働くので、パントテン酸だけでなく、ビタミンB 1、 B 2ナイアシンなどとセットで摂取することをおすすめします。
マグネシウムはストレスと密接に関わっています。ストレスがかかった状態が長く続くと、尿からマグネシウムが多く排出されます。その結果、ストレスへの抵抗力が弱まってしまうのです。
ストレスへの抵抗力を高めるために必要なマグネシウムは、エネルギーの合成に不可欠な栄養素でもあります。「幸せホルモン」と言われている、セロトニンという神経伝達物質がありますが、これを作るときにもマグネシウムは必要です。セロトニンが不足すると、イライラしやすくなったり、落ち込んだり、鬱になる原因になります。
【おすすめの栄養素】
●ビタミンC
●パントテン酸
●ビタミンB1
●ビタミンB2
●ナイアシン
●マグネシウム
●ビタミンC
●パントテン酸
●ビタミンB1
●ビタミンB2
●ナイアシン
●マグネシウム
過度なストレスから解放しビタミン・ミネラルを補給
人間はストレスを受けると、副腎が反応してアドレナリンやコルチゾールを分泌することは、繰り返しお伝えしてきました。そのときに、大量に消費するのがビタミンCです。ビタミンはCは免疫にも重要で、白血球の働きを高めることやコラーゲンの生成にも必要な栄養素です。
全身の臓器でビタミンCは必要なのですが、副腎が活発に動くと、優先的にそちらに送られてしまいます。結果として、免疫力アップや肌の組織を保つコラーゲンを作るために必要なビタミンCが、副腎でたくさん消費されてしまうわけです。
そうすると免疫力が低下したり、風邪をひきやすくなります。そのため、食事に加え、サプリメントで補うことも選択肢に入れておくといいと思います。
必ずしも、「ストレス=悪いもの」とは限りません。仲間と切磋琢磨しながら勝利を目指していくことも、挑戦して失敗や挫折を経験することも、その過程ではストレスやプレッシャーにつぶされそうになるかもしれませんが、本人の成長につながる貴重な財産になります。要は、ストレスがマイナスに働かないように、必要なケアをしてあげた方がいいということです。
お子さんが毎日頑張っているときには、体の中にとても頑張っている臓器があるんだということをわかっておくと、保護者の方も適切なサポートができると思います。
まずはお子さんの様子を観察し、状態を把握して、過度なストレスやプレッシャーから解放してあげること、そして体のことを理解しビタミンCやB群、マグネシウムなど必要な栄養素を補給してあげる。それこそが保護者がすべき、唯一にして最大のサポートだと思います。
●【無料】10代のアスリートを支えるママのための「スポーツ栄養講座」はこちら>>
丸元康生
1958年生まれ。青山学院大学文学部日本文学科卒業。米国ワシントン州、イースタン・ワシントン大学卒業。栄養学、生化学を専攻。ホリスティックカレッジ・オブ・ジャパン講師。平田ホリスティック教育財団理事。著書に『スンナリ分かる栄養学ベーシック』、『ビタミンがスンナリわかる本』、『スンナリわかる脂肪の本』(主婦と生活社)、『豊かさの栄養学』シリーズ、訳書に『ジョナサン・ライト博士の新・栄養療法』(廣済堂出版)など。栄養学ジャーナリストとして世界最先端の米国栄養学を日本に伝えてきた先駆的存在。