「文武両道」を掲げる慶應義塾高校野球部を率いる森林貴彦監督の著書『Thinking Baseball ――慶應義塾高校が目指す"野球を通じて引き出す価値"』。この本の中から少年野球に言及している部分を紹介いたします。今回は第一章の中から「少年たちは野球を楽しんでいるか/負担の大きい少年野球の保護者」を紹介します(2020年12月の記事を再掲しています)。
少年野球が抱える問題は、指導者だけではありません。保護者にかかる負担が大きいことも、子どもの野球離れに拍車をかけています。
保護者にたくさんの仕事を任せるチームは非常に多く、練習や試合には父母どちらかが必ず同伴し、駐車場係や、グラウンド周りの芝刈りまでさせられるケースもあるようです。つまり送り迎えだけでは済まないことが多く、こうした事情を考慮して、小学校の段階で「野球はちょっと……」と敬遠するケースが近年、特に増えています。送り迎えだけで済めば、練習が行われている2時間ほどの間に、保護者は買い物を済ませたり、お茶を飲みに行ったりできるため、その違いは本当に大きいと思います。ここ数年で言えば、サッカーだけでなく、バスケットボールやラグビーなども人気の球技となっているため、野球界はもっと危機感を持たなければいけません。
こうした慣例は野球特有のもので、なぜ、他競技には見られないかと言えば、野球界が変わるための努力をしていないからに過ぎません。単純にそれだけです。野球だけ保護者の負担が大きく、他の競技では必要のないことに、合理的な理由があるわけがありません。
「いままでやってきたのだから、いまさら何を変える必要があるの?」「これでうまく回ってきたのだから、何も変える必要がない」。理由を問えば、大半はこのような意見が返ってくるでしょう。しかし、いまになって気付けば、野球界の中では当たり前だったことが、他競技ではまったく非常識となっていて、完全に取り残されてしまっている状況です。
ここから脱却するためには、野球を外から見る客観的な視点がなければいけません。私は他競技の指導者とも頻繁に会うようにしていますが、それはやはり野球界の常識だけに染まらないようにするためです。例えば「なぜ、野球はそんなにも長時間の練習を課すのですか?」と問われたときに、「この世界の常識ですから」と答えてしまえば、それはただの思考停止です。なぜ野球では実現不可能になっているのかを考え、いかに無駄を省くかまで考えを巡らせなければ、何の進歩もありません。
少年野球が抱える問題は、指導者だけではありません。保護者にかかる負担が大きいことも、子どもの野球離れに拍車をかけています。
保護者にたくさんの仕事を任せるチームは非常に多く、練習や試合には父母どちらかが必ず同伴し、駐車場係や、グラウンド周りの芝刈りまでさせられるケースもあるようです。つまり送り迎えだけでは済まないことが多く、こうした事情を考慮して、小学校の段階で「野球はちょっと……」と敬遠するケースが近年、特に増えています。送り迎えだけで済めば、練習が行われている2時間ほどの間に、保護者は買い物を済ませたり、お茶を飲みに行ったりできるため、その違いは本当に大きいと思います。ここ数年で言えば、サッカーだけでなく、バスケットボールやラグビーなども人気の球技となっているため、野球界はもっと危機感を持たなければいけません。
こうした慣例は野球特有のもので、なぜ、他競技には見られないかと言えば、野球界が変わるための努力をしていないからに過ぎません。単純にそれだけです。野球だけ保護者の負担が大きく、他の競技では必要のないことに、合理的な理由があるわけがありません。
「いままでやってきたのだから、いまさら何を変える必要があるの?」「これでうまく回ってきたのだから、何も変える必要がない」。理由を問えば、大半はこのような意見が返ってくるでしょう。しかし、いまになって気付けば、野球界の中では当たり前だったことが、他競技ではまったく非常識となっていて、完全に取り残されてしまっている状況です。
ここから脱却するためには、野球を外から見る客観的な視点がなければいけません。私は他競技の指導者とも頻繁に会うようにしていますが、それはやはり野球界の常識だけに染まらないようにするためです。例えば「なぜ、野球はそんなにも長時間の練習を課すのですか?」と問われたときに、「この世界の常識ですから」と答えてしまえば、それはただの思考停止です。なぜ野球では実現不可能になっているのかを考え、いかに無駄を省くかまで考えを巡らせなければ、何の進歩もありません。