会社のような組織マネジメント
ウイングスの指導方針や練習法を伺っていると、まるで「株式会社南生田ウイングス」の話を聞いているようでした。
年齢に応じた4つのチームはさながら「部署」のよう。部署にはそれぞれ目標があり、目標を達成するための練習には年間計画があり、3ヶ月目標、今月の目標、その日の目標、と細分化もされています。試合後の反省練習はPDCAサイクルのようにも思えます。
会社であれば社員の健康管理にも気を配る必要がありますが、ウイングスも子どもたちの健康と安全管理のためにAEDの場所が保護者で共有され、専門家を招いてAEDの講習会も実施。近隣の大学病院のドクターによる指導も受け、ストレッチ、野球体操、投球制限などで子どもたちの体調管理も実施しています。
会社のように思えたのにはもう一つ理由があります。
それはこのチームが「子どもたちがスポーツをやれる環境を増やしてあげることが大事」という考えのもと、無料のスポーツ教室も開催しているから。これはウイングスへの入部を促すためではなく、子どもの遊ぶ場所を設けることを目的に行なっている取り組み。これなどはCSR(Corporate Social Responsibility/企業の社会的責任)活動そのものとも言えると思います。学童野球でここまで意識高く取り組んでいるチームはあまりないのではないでしょうか。
ウイングスが勝つことを目指す理由
最後に、「強い」と「育成」が両立できているチームだからこそ、「『勝利至上主義』をどう思いますか?」と山内総監督に聞いてみました。ちなみに、ヤキュイクでは勝利至上主義を「選手の健康や安全、フェアプレーよりも目の前の試合に勝つことを優先する主義」と定義しています。
「たまにそういうチームとも対戦することがありますが、ありえないと思いますね。そんなことをしなくても、子どもたちに正しい努力の仕方を教えて、それを積み重ねていけばある程度は勝てるようになると思っています」
「もちろん勝つことを目指しています」と続けた総監督。子どもたちには勝つことを目指す理由をこのように話しているそうです。
「勝ち上がって上部の大会に進めばもっと強い相手と戦える。強い相手と戦うためにはもっとレベルアップをしなければいけない。それは成長できるチャンス。だからそこを目指そう」
成長するのは選手に限った話ではありません。監督を含め、コーチ陣、保護者、ウイングスの選手全員が成長し続けるー。
山内総監督はそんな風土を作っていきたいと思っている。(取材・構成・写真:永松欣也)