「世界一楽しく! 世界一強く!」を掲げ、18年、19年にマクドナルド杯を連覇するなど3度の日本一に輝いている多賀少年野球クラブ(滋賀県犬上郡)。「強い」だけのチーム、「楽しい」だけのチームは全国に多くあるかもしれません。しかしその二つを両立できているチームはいくつあるでしょうか? そもそも本当に「楽しい」と「強い」は両立できるのでしょうか? 彼らが練習するグラウンドに足を運んでみました。
露出した肌をみるみる赤く染めあげる強烈な日差しとグラウンド脇を跳ぶ大きなトノサマバッタ。外野の奥からはときおり猿が姿を見せる。そんな長閑な自然に囲まれた滝の宮スポーツ公園で多賀少年野球クラブ(以下、多賀)は練習を行っていました。
まず驚くのはグラウンドの広さとバッティングマシンの多さ。朝10時に訪れた時にはスピードの違う5台のマシンが並べられ、それを1分間打ち込むと隣のマシンに移動してまた打ち込むという練習が行われていました。
打ち込み練習が終わると、今度はレベルや学年ごとに4つのグループに別れて行う1カ所バッティングがスタート。広いグラウンドを4面使って行います。
「グラウンドも広いしマシンが5台もある(実はもっとあるらしい)。そりゃ強くもなるはずだ」
正直そんなことを思いました。これを読まれている皆さんもおそらくそう思われることでしょう。しかしこのあと取材を続ける中で、それは多賀が強い理由の一つに過ぎないことを思い知らされるのでした。
グラウンド横の土手の上から聞こえてくる楽しそうな子どもの声。上ってみると『遊びの広場』と呼ばれる2つの広場で、楽しそうにボールを投げたり捕ったりする小さな子ども達の姿がありました。未就学児や入部間もない低学年の子、体験入部に来た子など、ちびっ子達の顔ぶれは様々。そこに辻正人監督の姿がありました。
辻監督は簡単なゴロを何度も転がし、小さな子の構えたグローブに収まるように何度も下からボール投げ、その都度捕れたら「入ったー!」「やったー!」「天才やー!!」と大げさに驚いてみせるなど、笑いを交えて子ども達にボールをキャッチする練習を繰り返していました。
印象的だったのは、小さな子にもグローブを下からだけではなく上から出させたり、逆シングルやフォアハンドでキャッチさせたり、色んなグローブの出し方、キャッチの仕方を教えていたこと。
野球の普及と育成を楽しく行う。だから子どもは野球が好きになり上手にもなる。そこにこのチームの強さの礎、源がある気がしました。
しかし、なぜ打つ練習ではなく、捕る練習なのでしょうか? 体験に来た子を含めてこの年代の子は打つことの方が楽しいはず。そんな疑問をぶつけてみると辻監督はこんな説明をしてくれました。
「昔は打つ練習もさせていました。でも小さな子どもってね、なかなかバットに当てることができないんです。何度やってもできないと子どももショックを受けるんです。そうなると野球が楽しいと思ってもらえません。であれば捕ることの方がバッティングよりは簡単ですから『できた!』という喜び、成功体験を味わうことができる。だからまずは捕ることから体験してもらっているんです」
何台あるんだ!? バッティングマシン
露出した肌をみるみる赤く染めあげる強烈な日差しとグラウンド脇を跳ぶ大きなトノサマバッタ。外野の奥からはときおり猿が姿を見せる。そんな長閑な自然に囲まれた滝の宮スポーツ公園で多賀少年野球クラブ(以下、多賀)は練習を行っていました。
まず驚くのはグラウンドの広さとバッティングマシンの多さ。朝10時に訪れた時にはスピードの違う5台のマシンが並べられ、それを1分間打ち込むと隣のマシンに移動してまた打ち込むという練習が行われていました。
打ち込み練習が終わると、今度はレベルや学年ごとに4つのグループに別れて行う1カ所バッティングがスタート。広いグラウンドを4面使って行います。
「グラウンドも広いしマシンが5台もある(実はもっとあるらしい)。そりゃ強くもなるはずだ」
正直そんなことを思いました。これを読まれている皆さんもおそらくそう思われることでしょう。しかしこのあと取材を続ける中で、それは多賀が強い理由の一つに過ぎないことを思い知らされるのでした。
まず身につけるのは「打つ」よりも「捕る」
グラウンド横の土手の上から聞こえてくる楽しそうな子どもの声。上ってみると『遊びの広場』と呼ばれる2つの広場で、楽しそうにボールを投げたり捕ったりする小さな子ども達の姿がありました。未就学児や入部間もない低学年の子、体験入部に来た子など、ちびっ子達の顔ぶれは様々。そこに辻正人監督の姿がありました。
辻監督は簡単なゴロを何度も転がし、小さな子の構えたグローブに収まるように何度も下からボール投げ、その都度捕れたら「入ったー!」「やったー!」「天才やー!!」と大げさに驚いてみせるなど、笑いを交えて子ども達にボールをキャッチする練習を繰り返していました。
印象的だったのは、小さな子にもグローブを下からだけではなく上から出させたり、逆シングルやフォアハンドでキャッチさせたり、色んなグローブの出し方、キャッチの仕方を教えていたこと。
野球の普及と育成を楽しく行う。だから子どもは野球が好きになり上手にもなる。そこにこのチームの強さの礎、源がある気がしました。
しかし、なぜ打つ練習ではなく、捕る練習なのでしょうか? 体験に来た子を含めてこの年代の子は打つことの方が楽しいはず。そんな疑問をぶつけてみると辻監督はこんな説明をしてくれました。
「昔は打つ練習もさせていました。でも小さな子どもってね、なかなかバットに当てることができないんです。何度やってもできないと子どももショックを受けるんです。そうなると野球が楽しいと思ってもらえません。であれば捕ることの方がバッティングよりは簡単ですから『できた!』という喜び、成功体験を味わうことができる。だからまずは捕ることから体験してもらっているんです」