見直した指導方針、口コミで広がった「楽しさ」
そもそも、前身の2チームである西ヶ原ボーイズと滝野川中央クラブは人口の多い東京都北区でなぜ部員不足になってしまったのでしょうか? 田中コーチはその理由をこのように話しくれました。
「まだまだ罵声や暴言が飛び交うチームが多いんです。それでもやりたいと思う子は強いチームを選択して入部します。でも本当は野球をやりたいと思っても、ちょっと怖い、入りづらいなと思われている家庭が多いと感じています。そうなると一定の子ども達が強いチームに集まるだけになり、そうでないチームには人が集まらなくなります。前身の2チームだけではなく、そういったチームは周りにもたくさんあります」
単独での練習もままならなくなり、2チーム合同で練習を行うようになったタイミングで指導方針の見直しに着手。そこで改めて、暴言・罵声の禁止、親の当番なし、子どもたちが野球を楽しくできる環境を作る、習い事の掛け持ちOKなどの新しいチーム方針が決まりました。
しかし、それだけで部員が増えたわけではありません。大きな要因の1つは前述のウォームアップでした。さまざまなトレーニングを取り入れたウォームアップとそれを楽しそうに行う子ども達の様子をInstagramなどで積極的に投稿。それが口コミで広まり、多くの保護者たちの関心を集めました。一月前にはじめて行われた体験会では「ウォームアップが楽しかったから」という理由で入部を決めた子もいたのだとか。
「投稿を見て興味を持ってくださった親御さんが増えましたね。野球をやりたかった、させたかったのにそれができなかった、そんな子どもと親御さんが多かったんだなと実感しています」(片山コーチ)。
前身の西ヶ原ボーイズから監督を務める野口修さんは、BLOSSOM BASEBALL CLUBに生まれ変わったことによる変化を次のように語ってくれました。
「最初は子ども達が戸惑う場面もありましたが、『野球がしたい』という純粋な気持ちがあればすぐに1つになれるんだなぁと改めて気づかされました。ユニホームも変わって選手も大人も表情が明るくなり、みんな新鮮な気持ちでやれています」。
ヒーローインタビューの練習
オーソドックスだと思っていた練習の最後に行わたのはヒーローインタビューの練習。
子ども達が見守る中、コーチに指名された子どもが朝礼台に上がってヒーローになりきってインタビューに答えるというもの。
一見お遊びのように見えますが、これは「アファメーション効果」が期待できるメソッドの1つ。アファメーションとは、コーチングの概念を作ったと言われている故ルー・タイスが用いた「自己肯定感のある言葉」を自分自身へ向けて語りかける自己変革法の1つ。子ども達が「場外ホームランを打った選手」「160キロを出した投手」などになりきってヒーローインタビューを受けることで、前向きな精神状態を作り出し、自分がなりきった人物そのものに近づくように自然と努力する習慣が芽生える効果などがあるとされています。
「そんな効果があるとは知りませんでした。楽しいからやっていたんですけどね」と笑う片山コーチ。
「今は『楽しい』を中心にやっていますけど、今後は『強い』と両立していきたいですね」。そんなふうに今後の目標を語ってくれました。(取材・文・写真:永松欣也)
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