4年前、ヤキュイクでも取材・紹介した埼玉県の浦和ボーイズ。この度中山典彦監督が『全員補欠 全員レギュラー 少年野球界の常識を覆す育成指導論』(竹書房)という本を出されました。今回はこの本の第五章「どこに進学しても通用する選手になる練習」の中の一部をご紹介させていただきます。
中学野球のクラブチームの中には早朝から夜まで、まるで高校野球のような長時間練習をしているチームがあります。
しかし、浦和ボーイズは選手たちに長時間練習を強いることは絶対にしません。土日の練習は9時に集合し、30分間で準備を整えて9時半から練習をスタートさせます。昼は1時間きっちり休み(真夏には1時間半くらい休ませることもあります)、午後の練習も夏なら5時、冬なら4時までには終え、選手たちを帰宅させます。
「選手たちにたくさん練習させたい」
どのスポーツ、どの世代であれ、指導者ならば選手の実力向上のために、このように思うのは当然のことなのかもしれません。
でも、忘れてはいけないのは、中学生たちは大事な「成長期」にあるということです。「選手を鍛えるため」という大義名分で早朝から夜まで練習させるのは、単なる大人のエゴにすぎないと私は考えます。
成長期の子供たちは、「骨端」と呼ばれる骨の端部分が非常に柔らかく、脆い状態です。無理なトレーニングや酷使を続ければ、肩や肘、膝や踵の骨端が傷つき、それが野球を続ける上での致命傷にもなりかねません。だからうちのチームでは、少しでも体に違和感があったら休ませることを徹底しています。
朝7時集合、日中はハードな練習を課せられ、夜8~9時に帰宅した時には体はクタクタで食欲もなく、ちょっとだけ夕飯を食べて寝る。そして睡眠時間が不足したまま、また翌日の練習に出かけていく……。このようなパターンの週末を過ごしているクラブチームの選手は、決して珍しくありません。
先に述べたように、中学生は成長期にあります。体を大きくする大切な時期に長時間の練習や投げすぎ、走らせすぎで体を酷使すると、成長ホルモンの出にくい体となってしまいます。
夏場など、過激な運動によって食欲が減退し、十分な食事がとれないと体はエネルギー不足になります。成長期の体は骨と筋肉の両方が成長するため、エネルギーをたくさん必要としています。
そういったことから、うちではハードな長時間練習は避け、選手たちに余力を持って家に帰ってもらうようにしています。そうすることで、適度な運動量プラス食事による十分なエネルギー補給、さらに質のいい睡眠によって成長ホルモンの分泌を促せるようになります。成長期にある中学生にとって「適度な運動、食事、睡眠」の3要素は絶対に欠かせないものなのです。
選手がよく食べ、よく眠れるように、ご家庭でも配慮をしてほしいと思います。
『全員補欠 全員レギュラー 少年野球界の常識を覆す育成指導論』(中山典彦/竹書房)より
【中山典彦(なやかまのりひこ)】
1965年5月28日生。東京都出身。東北高校では2年春、2年夏、3年春と3季連続で甲子園に出場。2年秋には明治神宮大会で優勝を果たす。東北高校卒業後は中央大学に進み、硬式野球部で4年間を過ごす。その後、飲食業界を経て2008年、高校時代の同期である宍戸鉄弥氏とともに浦和ボーイズを設立。「親の当番や係なし」「父母会なし」「各学年でチームを組み、全選手を試合に出場させる」「みんなで同じ練習を行う」「練習時間は短く、あえて9時集合」など少年野球界の常識を覆すチーム運営で注目を浴び、2010年以降、部員数が1学年25名を下回ったことがない。またこういった運営方針が評価され、2019年、2020年と2年連続で『ベストコーチングアワード』の最高位である三ツ星を受賞。2021年秋の時点での部員数は2年生60名、1年生50名。初の全国大会出場へ向け、100名を超える選手たちが現在も精力的に活動中。
■第1章 浦和ボーイズ誕生~楽しくやって何が悪い~
心臓の病が発覚~野球に救われた命~/最初は部員4人からスタート~楽しくやって何が悪い~/私は落ちこぼれ~自分らしく生きる~ ほか
■第2章 私の野球人生は東北高校から始まった~恩師・竹田利秋先生との運命的な出会い~
2年秋から負け知らずでセンバツに出場/投げるイップスだけでなく、打つイップスも経験/私にとって必要だった「大学時代の失敗」 ほか
■第3章 中山流指導論~指導者は選手の見本であれ~
負けていいじゃないか~負け癖が付く、付かないは指導者次第~/本気で叱る、本気でほめる/根性論はもういらない~日々の生活での継続こそが大切~ ほか
■第4章 なぜ浦和ボーイズには選手が集まるのか?~私たちのチーム運営方法~
父母会はないが、全選手を我が子だと思ってほしい/各学年でチームを組む/行きたい高校に進むには学校の勉強もしっかりと ほか
■第5章 どこに進学しても通用する選手になる練習
長時間練習はいらない~選手の体の成長が第一~/正しい投げ方は言葉で説明せず、体で覚えさせる~浦和ボーイズのキャッチボール~ ほか
■第6章 これからの中学野球を考える
中学時代は引き出しを増やす時期/指導者こそ、レベルアップしよう~野球は、人生をよくするための手段である~/いいチームを見分けるポイント ほか
中学野球のクラブチームの中には早朝から夜まで、まるで高校野球のような長時間練習をしているチームがあります。
しかし、浦和ボーイズは選手たちに長時間練習を強いることは絶対にしません。土日の練習は9時に集合し、30分間で準備を整えて9時半から練習をスタートさせます。昼は1時間きっちり休み(真夏には1時間半くらい休ませることもあります)、午後の練習も夏なら5時、冬なら4時までには終え、選手たちを帰宅させます。
「選手たちにたくさん練習させたい」
どのスポーツ、どの世代であれ、指導者ならば選手の実力向上のために、このように思うのは当然のことなのかもしれません。
でも、忘れてはいけないのは、中学生たちは大事な「成長期」にあるということです。「選手を鍛えるため」という大義名分で早朝から夜まで練習させるのは、単なる大人のエゴにすぎないと私は考えます。
成長期の子供たちは、「骨端」と呼ばれる骨の端部分が非常に柔らかく、脆い状態です。無理なトレーニングや酷使を続ければ、肩や肘、膝や踵の骨端が傷つき、それが野球を続ける上での致命傷にもなりかねません。だからうちのチームでは、少しでも体に違和感があったら休ませることを徹底しています。
朝7時集合、日中はハードな練習を課せられ、夜8~9時に帰宅した時には体はクタクタで食欲もなく、ちょっとだけ夕飯を食べて寝る。そして睡眠時間が不足したまま、また翌日の練習に出かけていく……。このようなパターンの週末を過ごしているクラブチームの選手は、決して珍しくありません。
先に述べたように、中学生は成長期にあります。体を大きくする大切な時期に長時間の練習や投げすぎ、走らせすぎで体を酷使すると、成長ホルモンの出にくい体となってしまいます。
夏場など、過激な運動によって食欲が減退し、十分な食事がとれないと体はエネルギー不足になります。成長期の体は骨と筋肉の両方が成長するため、エネルギーをたくさん必要としています。
そういったことから、うちではハードな長時間練習は避け、選手たちに余力を持って家に帰ってもらうようにしています。そうすることで、適度な運動量プラス食事による十分なエネルギー補給、さらに質のいい睡眠によって成長ホルモンの分泌を促せるようになります。成長期にある中学生にとって「適度な運動、食事、睡眠」の3要素は絶対に欠かせないものなのです。
選手がよく食べ、よく眠れるように、ご家庭でも配慮をしてほしいと思います。
『全員補欠 全員レギュラー 少年野球界の常識を覆す育成指導論』(中山典彦/竹書房)より
【中山典彦(なやかまのりひこ)】
1965年5月28日生。東京都出身。東北高校では2年春、2年夏、3年春と3季連続で甲子園に出場。2年秋には明治神宮大会で優勝を果たす。東北高校卒業後は中央大学に進み、硬式野球部で4年間を過ごす。その後、飲食業界を経て2008年、高校時代の同期である宍戸鉄弥氏とともに浦和ボーイズを設立。「親の当番や係なし」「父母会なし」「各学年でチームを組み、全選手を試合に出場させる」「みんなで同じ練習を行う」「練習時間は短く、あえて9時集合」など少年野球界の常識を覆すチーム運営で注目を浴び、2010年以降、部員数が1学年25名を下回ったことがない。またこういった運営方針が評価され、2019年、2020年と2年連続で『ベストコーチングアワード』の最高位である三ツ星を受賞。2021年秋の時点での部員数は2年生60名、1年生50名。初の全国大会出場へ向け、100名を超える選手たちが現在も精力的に活動中。
【目次】
■第1章 浦和ボーイズ誕生~楽しくやって何が悪い~
心臓の病が発覚~野球に救われた命~/最初は部員4人からスタート~楽しくやって何が悪い~/私は落ちこぼれ~自分らしく生きる~ ほか
■第2章 私の野球人生は東北高校から始まった~恩師・竹田利秋先生との運命的な出会い~
2年秋から負け知らずでセンバツに出場/投げるイップスだけでなく、打つイップスも経験/私にとって必要だった「大学時代の失敗」 ほか
■第3章 中山流指導論~指導者は選手の見本であれ~
負けていいじゃないか~負け癖が付く、付かないは指導者次第~/本気で叱る、本気でほめる/根性論はもういらない~日々の生活での継続こそが大切~ ほか
■第4章 なぜ浦和ボーイズには選手が集まるのか?~私たちのチーム運営方法~
父母会はないが、全選手を我が子だと思ってほしい/各学年でチームを組む/行きたい高校に進むには学校の勉強もしっかりと ほか
■第5章 どこに進学しても通用する選手になる練習
長時間練習はいらない~選手の体の成長が第一~/正しい投げ方は言葉で説明せず、体で覚えさせる~浦和ボーイズのキャッチボール~ ほか
■第6章 これからの中学野球を考える
中学時代は引き出しを増やす時期/指導者こそ、レベルアップしよう~野球は、人生をよくするための手段である~/いいチームを見分けるポイント ほか