「学童野球に盗塁は必要ないのでは?」
以前に僕はこんな問題提起をしました。ですが、息子が野球を始めて、自分も学童野球に携わっていくなかで考えが変わっていきました。
例えば「5点差開いたら盗塁禁止」「低学年の試合では盗塁禁止」など、条件を設けて禁止することには賛成です。その考えは今も変わっていません。ただ、高学年の試合も含めた「盗塁全面禁止」は「それは違うのでは?」と思うようになりました。そう思うようになったのは多賀少年野球クラブの辻正人監督と盗塁禁止について話をした際に「そうなると、ますます指導者が手を抜いてしまいますよ」と言われたことがきっかけです。
そのときに「ハッ!」としたんです。
確かにそうなんです!
学童野球の現場では守備練習、打撃練習は必ずといっていいほど行われています。ですが、走塁練習に関してはオマケ程度のチームがほとんどなんです。ベースランニングだけで済ませて、指導する事といえば膨らみながらベースの角を踏んで次の塁に向かうなど、2塁打、3塁打を前提とした指導がほとんどではないでしょうか?
僕は「シャッフル」という走塁技術を知り合いから教えてもらい息子のチームに取り入れました。
「シャッフル」というのは、盗塁のサインが出ていない時の第2リードの仕方なのですが、ジャンプを2回してバッターのインパクトに合わせて進塁かバックかを瞬時に判断するリードの仕方です。この「シャッフル」という第2リードの取り方を教えているチームはなかなかないと思います。子ども達はあまり上手くできませんが、知ってるのと知らないのでは走塁に対する意識、意欲が大きく違ってくると思います。
去年のパ・リーグ盗塁王、千葉ロッテマリーズの和田康士朗選手をご存知でしょうか?
和田選手は高校時代は野球部に属さず、クラブチームで活動したのち、独立リーグから育成指名でNPB入りして支配下選手になり、盗塁王までのし上がった選手です。
和田選手が活躍する場は主に代走と守備固め。この先レギュラー奪取を期待したい選手ではありますが、まだレギュラーではありません。でもレギュラーじゃない和田選手に憧れを抱いている少年もいるのです。
どんな子どもが憧れるか?
守備やバッティングに自信がない(和田選手は違いますがね)、だけど足はチームでも1、2の子どもたちが憧れるのです。「走塁を磨けば自分だってプロ野球選手になれる!」「この足でチームに貢献するんだ!」そうやって目標を持って練習にのぞみ、成功体験を積むこともできるのです。「盗塁禁止」になれば、そういった子ども達の活躍の場を奪ってしまう事にもなりかねません。
盗塁を阻止するには、ピッチャー、キャッチャー、ファースト、セカンド、ショート(3盗であればサードも)、この5人の協力と技術が必要になります。ピッチャーはクイックや牽制の技術、キャッチャーは捕ってからの早さや送球の強さと正確さ、ファーストは牽制球からタッチの速さ、二遊間はセカンドに入るタイミングとキャッチする技術、タッチする技術。これだけの練習をしなければ盗塁は阻止できません。キャッチャーの肩だけではないのです、盗塁を防ぐということは。
冒頭に書いた「指導者が手を抜いてしまいますよ」という辻監督の言葉はまさにこれなんです。指導者の皆さん、盗塁を防ぐための練習、どれだけやっていますか?
キャッチャーの肩が弱いから盗塁されまくっている? だったら牽制やクイックの練習もしましょうよ。
キャッチャーが肩を壊す? なぜキャッチャーが1人だけなんですか? チームの全員がキャッチャーをできるように日頃からみんなで色んなポジションを守らせましょうよ。
こういったことを、多賀少年野球クラブの辻監督は全部やっています。もちろん練習も子ども達が飽きないように、自ら考えるようによく考えられたメニューで、子ども達も楽しく取り組んでいます。
詳しくは3月3日に発売される「卒スポ根で連続日本一!多賀少年野球クラブに学びてぇ!これが『令和』の学童野球」(藤田憲右著/インプレス)に全部書いてあります。僕が現地に行って練習を見てきて、試合も何試合も見て、辻監督とも定期的にZoomでお話しさせて頂いて、学童野球の保護者としてお父さんコーチとして、あらゆる疑問、質問をぶつけまくっている本です(よろしくお願いいたします!)。
ランナーはピッチャー、キャッチャー、ファースト、セカンド、ショートに対して個で挑みます。リードの大きさ、牽制のクセ、キャッチャーの送球、ファーストのタッチ、二遊間の入るスピードを考え、スタートを切る勇気を持つ。成功すれば大きな自信になり、失敗したら何が悪かったのかを思考せねばなりません。これが「経験」になります。
「そこまで学童期の子ども達ににやらせる必要はない」とおっしゃる方もいるかもしれません。でも、盗塁をやりたい子、そこに自分の存在価値を感じている子がいるならば、「盗塁禁止」にルールを変える事はどうなのかなと、思ってしまいます。
皆さんはどう考えますか?
お考え、ぜひ聞かせてください。たくさん議論しましょう!
でも忘れないでください。自分と考えが違う人がいても、その人は敵じゃないです。
野球のこと、子どものことを真剣に考えている、あなたと同じ「野球を愛する仲間」です。
余談になりますが、走塁練習しかしない「かけっこ塾」が母体のチームがあったとしたら、相当厄介なチームになると思います(笑)。
藤田憲右(ふじた けんすけ)
吉本興業所属のお笑いコンビ「トータルテンボス」のツッコミ担当。静岡県御殿場市出身。高校時代は野球部のエースとして3年夏の静岡県大会で2試合連続1安打完封勝利も記録。人気バラエティ番組「アメトーーク」(テレビ朝日)の人気企画「高校野球大大大好き芸人」で披露した高校野球への愛情、造詣の深さは全国の野球ファンの間でも有名。2016年には「ハンパねぇ!高校野球」(小学館よしもと新書)も執筆しており、全国の野球指導者、選手との交友関係も広い。現在は息子の学童野球を応援する傍ら、色々な学童野球の現場を見て周り様々な情報発信や問題提議なども行っているほか、オンラインサロン「トータル藤田の野球教」も運営している。
以前に僕はこんな問題提起をしました。ですが、息子が野球を始めて、自分も学童野球に携わっていくなかで考えが変わっていきました。
例えば「5点差開いたら盗塁禁止」「低学年の試合では盗塁禁止」など、条件を設けて禁止することには賛成です。その考えは今も変わっていません。ただ、高学年の試合も含めた「盗塁全面禁止」は「それは違うのでは?」と思うようになりました。そう思うようになったのは多賀少年野球クラブの辻正人監督と盗塁禁止について話をした際に「そうなると、ますます指導者が手を抜いてしまいますよ」と言われたことがきっかけです。
そのときに「ハッ!」としたんです。
確かにそうなんです!
学童野球の現場では守備練習、打撃練習は必ずといっていいほど行われています。ですが、走塁練習に関してはオマケ程度のチームがほとんどなんです。ベースランニングだけで済ませて、指導する事といえば膨らみながらベースの角を踏んで次の塁に向かうなど、2塁打、3塁打を前提とした指導がほとんどではないでしょうか?
僕は「シャッフル」という走塁技術を知り合いから教えてもらい息子のチームに取り入れました。
「シャッフル」というのは、盗塁のサインが出ていない時の第2リードの仕方なのですが、ジャンプを2回してバッターのインパクトに合わせて進塁かバックかを瞬時に判断するリードの仕方です。この「シャッフル」という第2リードの取り方を教えているチームはなかなかないと思います。子ども達はあまり上手くできませんが、知ってるのと知らないのでは走塁に対する意識、意欲が大きく違ってくると思います。
去年のパ・リーグ盗塁王、千葉ロッテマリーズの和田康士朗選手をご存知でしょうか?
和田選手は高校時代は野球部に属さず、クラブチームで活動したのち、独立リーグから育成指名でNPB入りして支配下選手になり、盗塁王までのし上がった選手です。
和田選手が活躍する場は主に代走と守備固め。この先レギュラー奪取を期待したい選手ではありますが、まだレギュラーではありません。でもレギュラーじゃない和田選手に憧れを抱いている少年もいるのです。
どんな子どもが憧れるか?
守備やバッティングに自信がない(和田選手は違いますがね)、だけど足はチームでも1、2の子どもたちが憧れるのです。「走塁を磨けば自分だってプロ野球選手になれる!」「この足でチームに貢献するんだ!」そうやって目標を持って練習にのぞみ、成功体験を積むこともできるのです。「盗塁禁止」になれば、そういった子ども達の活躍の場を奪ってしまう事にもなりかねません。
盗塁を阻止するには、ピッチャー、キャッチャー、ファースト、セカンド、ショート(3盗であればサードも)、この5人の協力と技術が必要になります。ピッチャーはクイックや牽制の技術、キャッチャーは捕ってからの早さや送球の強さと正確さ、ファーストは牽制球からタッチの速さ、二遊間はセカンドに入るタイミングとキャッチする技術、タッチする技術。これだけの練習をしなければ盗塁は阻止できません。キャッチャーの肩だけではないのです、盗塁を防ぐということは。
冒頭に書いた「指導者が手を抜いてしまいますよ」という辻監督の言葉はまさにこれなんです。指導者の皆さん、盗塁を防ぐための練習、どれだけやっていますか?
キャッチャーの肩が弱いから盗塁されまくっている? だったら牽制やクイックの練習もしましょうよ。
キャッチャーが肩を壊す? なぜキャッチャーが1人だけなんですか? チームの全員がキャッチャーをできるように日頃からみんなで色んなポジションを守らせましょうよ。
こういったことを、多賀少年野球クラブの辻監督は全部やっています。もちろん練習も子ども達が飽きないように、自ら考えるようによく考えられたメニューで、子ども達も楽しく取り組んでいます。
詳しくは3月3日に発売される「卒スポ根で連続日本一!多賀少年野球クラブに学びてぇ!これが『令和』の学童野球」(藤田憲右著/インプレス)に全部書いてあります。僕が現地に行って練習を見てきて、試合も何試合も見て、辻監督とも定期的にZoomでお話しさせて頂いて、学童野球の保護者としてお父さんコーチとして、あらゆる疑問、質問をぶつけまくっている本です(よろしくお願いいたします!)。
ランナーはピッチャー、キャッチャー、ファースト、セカンド、ショートに対して個で挑みます。リードの大きさ、牽制のクセ、キャッチャーの送球、ファーストのタッチ、二遊間の入るスピードを考え、スタートを切る勇気を持つ。成功すれば大きな自信になり、失敗したら何が悪かったのかを思考せねばなりません。これが「経験」になります。
「そこまで学童期の子ども達ににやらせる必要はない」とおっしゃる方もいるかもしれません。でも、盗塁をやりたい子、そこに自分の存在価値を感じている子がいるならば、「盗塁禁止」にルールを変える事はどうなのかなと、思ってしまいます。
皆さんはどう考えますか?
お考え、ぜひ聞かせてください。たくさん議論しましょう!
でも忘れないでください。自分と考えが違う人がいても、その人は敵じゃないです。
野球のこと、子どものことを真剣に考えている、あなたと同じ「野球を愛する仲間」です。
余談になりますが、走塁練習しかしない「かけっこ塾」が母体のチームがあったとしたら、相当厄介なチームになると思います(笑)。
藤田憲右(ふじた けんすけ)
吉本興業所属のお笑いコンビ「トータルテンボス」のツッコミ担当。静岡県御殿場市出身。高校時代は野球部のエースとして3年夏の静岡県大会で2試合連続1安打完封勝利も記録。人気バラエティ番組「アメトーーク」(テレビ朝日)の人気企画「高校野球大大大好き芸人」で披露した高校野球への愛情、造詣の深さは全国の野球ファンの間でも有名。2016年には「ハンパねぇ!高校野球」(小学館よしもと新書)も執筆しており、全国の野球指導者、選手との交友関係も広い。現在は息子の学童野球を応援する傍ら、色々な学童野球の現場を見て周り様々な情報発信や問題提議なども行っているほか、オンラインサロン「トータル藤田の野球教」も運営している。