人気お笑い芸人であると同時にプライベートでは「学童野球の保護者」という顔も持つトータルテンボスの藤田憲右さん。そんな藤田さんが3月3日に多賀少年野球クラブの辻正人監督との対談本、「『卒スポ根』で連続日本一! 多賀少年野球クラブに学びてぇ! これが『令和』の学童野球」(インプレス)を出しました。前回紹介した「まえがき」に続いて藤田さんの学童野球に対する想いのこもった「あとがき」を紹介します。
この本を出版するにあたり、辻監督には実に多くのお話を伺う機会をいただきました。ぶつけてみたかった疑問や個人的な相談まで、 辻監督は何でも即座に、そして明確に答えてくれました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。ありがとうございました!
残念ながらページ数の関係で泣く泣く割愛したお話も実は多いのです。その中で、どうしてもみなさんにお伝えしたいお話があるので、ここで紹介させてください。
それはかつて辻監督がスポ根指導で子ども達をゴリゴリに鍛えていた時代のことです。
「勝つためには仕方がない」と、練習は厳しく、時に手をあげることもあったそうですが、その結果、何人かの子どもを野球嫌いにさせてしまったと言います。
「当時の事を思い出して話していると、今のスタイルに戻ってこられるのか、昔の指導に戻ってしまうんじゃないか、そんな恐怖に駆られるんです。正直、当時を思い出すことが怖いんです」
関西人らしく、話し始めれば必ずオチをつけたがる男が、いつも明るく楽しく「世界の辻ちゃん」を名乗る男が、当時を振り返る時だけ、とても辛く悲しそうな表情をしていたのです。
そして、「当時の子ども達に会ったら、『今だったらもっと楽しく野球を教えることができたのに、本当に申し訳なかった』って、心から謝りたいんです」と言っていました。
そういった経験があったからこそ、「世界一楽しく!世界一強く!」の方針に変え、日本一にもなれたのだと思いますが、それでも辻監督から自責の念は消えていないんです。
キラキラした目で「野球がやりたい 」とお父さん、お母さんに言った子ども。
買ってもらったグローブを手にウキウキして参加した初めての練習。
親はそういう子どもの姿を覚えているものです。
だからこそ、野球に目を輝かせていた子どもが悲しい目をして「 野球に行きたくない」なんて言い出したら胸が痛みます。
野球界にはまだまだスポ根信仰が根強く残っていると思います。
その信仰は現代にそぐわないものになっていますが、多くの人達がそこにまだ気づくことができていないのではないでしょうか?
スポ根での成功体験に縛られていないでしょうか ?
辻監督はいち早く気づき、スポ根指導を卒業しました。
みなさんが野球少年だった「昭和」「平成」から、時代は「令和」になりました。
勝つことを目指すのは必要だと思います。ですが、同時に子どもが「野球が好きだ、楽しい」と思う気持ち、それを育むことも大事な時代になったのだと思います。
「強い」だけでもない、「楽しい」だけでもない。
その両方が野球の入口である学童野球の年代には絶対に必要なのだと、辻監督とのお話を通じて強く感じました。
僕は全国に「多賀野球」「辻野球」が浸透すれば、子どもの野球人口減少に歯止めがかかると信じています。
この本を通じて「世界の辻ちゃん」の想いが学童野球に携わる指導者、保護者、子ども達、全ての人々に伝播し、後世にバトンをつないで、100年後も日本に野球キッズが溢れている事を心から願っています。
トータルテンボス 藤田憲右
「『卒スポ根』で連続日本一! 多賀少年野球クラブに学びてぇ! これが『令和』の学童野球」(「あとがき」より)
「強い」も「楽しい」も両方目指そう
この本を出版するにあたり、辻監督には実に多くのお話を伺う機会をいただきました。ぶつけてみたかった疑問や個人的な相談まで、 辻監督は何でも即座に、そして明確に答えてくれました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。ありがとうございました!
残念ながらページ数の関係で泣く泣く割愛したお話も実は多いのです。その中で、どうしてもみなさんにお伝えしたいお話があるので、ここで紹介させてください。
それはかつて辻監督がスポ根指導で子ども達をゴリゴリに鍛えていた時代のことです。
「勝つためには仕方がない」と、練習は厳しく、時に手をあげることもあったそうですが、その結果、何人かの子どもを野球嫌いにさせてしまったと言います。
「当時の事を思い出して話していると、今のスタイルに戻ってこられるのか、昔の指導に戻ってしまうんじゃないか、そんな恐怖に駆られるんです。正直、当時を思い出すことが怖いんです」
関西人らしく、話し始めれば必ずオチをつけたがる男が、いつも明るく楽しく「世界の辻ちゃん」を名乗る男が、当時を振り返る時だけ、とても辛く悲しそうな表情をしていたのです。
そして、「当時の子ども達に会ったら、『今だったらもっと楽しく野球を教えることができたのに、本当に申し訳なかった』って、心から謝りたいんです」と言っていました。
そういった経験があったからこそ、「世界一楽しく!世界一強く!」の方針に変え、日本一にもなれたのだと思いますが、それでも辻監督から自責の念は消えていないんです。
キラキラした目で「野球がやりたい 」とお父さん、お母さんに言った子ども。
買ってもらったグローブを手にウキウキして参加した初めての練習。
親はそういう子どもの姿を覚えているものです。
だからこそ、野球に目を輝かせていた子どもが悲しい目をして「 野球に行きたくない」なんて言い出したら胸が痛みます。
野球界にはまだまだスポ根信仰が根強く残っていると思います。
その信仰は現代にそぐわないものになっていますが、多くの人達がそこにまだ気づくことができていないのではないでしょうか?
スポ根での成功体験に縛られていないでしょうか ?
辻監督はいち早く気づき、スポ根指導を卒業しました。
みなさんが野球少年だった「昭和」「平成」から、時代は「令和」になりました。
勝つことを目指すのは必要だと思います。ですが、同時に子どもが「野球が好きだ、楽しい」と思う気持ち、それを育むことも大事な時代になったのだと思います。
「強い」だけでもない、「楽しい」だけでもない。
その両方が野球の入口である学童野球の年代には絶対に必要なのだと、辻監督とのお話を通じて強く感じました。
僕は全国に「多賀野球」「辻野球」が浸透すれば、子どもの野球人口減少に歯止めがかかると信じています。
この本を通じて「世界の辻ちゃん」の想いが学童野球に携わる指導者、保護者、子ども達、全ての人々に伝播し、後世にバトンをつないで、100年後も日本に野球キッズが溢れている事を心から願っています。
トータルテンボス 藤田憲右
「『卒スポ根』で連続日本一! 多賀少年野球クラブに学びてぇ! これが『令和』の学童野球」(「あとがき」より)