ニュース 2022.03.18. 13:06

「よりよい指導」を求めて指導者たちが学び続ける市川シニア(前編)

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昨年、新チームが千葉県新人大会で優勝を果たした市川シニア(千葉県市川市)。ノックを見ているとこのチームの指導方針がよく分かります。ノッカーの口調は穏やかでミスをしても怒鳴らない、大声も出さない。「今のどう思う?」「〜の方がいいよね?」と問いかけ、コミュニケーションを重視する。それでいて緩い雰囲気ではなく、子ども達の表情は真剣でピリッとしている。聞けば昨年、チーム所属のほとんどのコーチがコーチング研修を受けたと言います。宇野誠一監督にお話を聞きました。




コーチング研修後に感じる変化


——昨年12月に15人のコーチ全員がコーチングの研修を受けたそうですが、きっかけを教えてください。

部員数も増えてきた中で「よりよい指導」をしていくためには指導者全体の学ぶ力を上げていかなければいけないと思っていました。チームOBでもある若手の指導者が増えましたし、彼等がものすごく勉強熱心なんです。ですから彼等にもっと学ぶ機会を作ってあげれば、選手達ともっといい化学反応が起こせるのではないかなと思ったことがきっかけです。それで大学でコーチング学を教えていらっしゃる松井克典先生(野球指導者のまなびの会「野球まなびラボ」代表)にお願いして勉強会を開いて頂きました。

——具体的にはどんな内容だったのでしょうか?

ティーチングとコーチングの違いというのをベースとしながら、現在の中学生たちの気質などをふまえた上で彼等とどう接していくのが良いのかという話や、中学校の野球の指導って野球の世界全体から見たらどういう位置づけにいるのか、そういった理解を深める勉強会でした。



——勉強会後に何か変化を感じることはありますか?

その練習をする目的や狙いをきちんと選手達と共有できるようになったと感じますね。あとはグラウンド内で選手達にその練習の振り返りの時間を与えている場面もよく見るようになりましたね。

——振り返りの時間とは?

ノックなどの練習がよく止まっているんです。でもそれはコーチが促してそのプレーについてなど、選手同士が話して振り返っている時間なんです。練習後には今日の練習についてや、今日一日について、そういうことも選手同士で話している時間があります。そういう場面を見る機会が増えましたね。



——さきほどの投内連携の練習では、ノッカーの宇野監督自身も大声を出したり怒鳴るわけでもなく「今のそれ、OK?」など選手達に問いかけながら行われていましたし、選手同士も色々と確認しながらやっていましたね。

怒鳴ったりして無理矢理その日に身につかせたことは、どこかで剥がれてしまうと思っています。「このプレーは誰が主導なんだっけ?」というのはちゃんと自分たちの言葉で、全員の前で共通認識をさせるために質問を投げかけるように意識しています。私も色んな研修を受けてきたり勉強を続けている中で、そこは変わってきた点だと思っています。「こうだぞ!」ではなくて「どうだっけ?」というアプローチに変わってきていると思いますね。

——素晴らしいアプローチですね。でも相手は思春期の子ども達ですから、たまに腹が立つこととかはないですか?

ありますあります(笑)。

——そういうときは怒鳴りますか?

全てが全て、飲み込んで我慢するのではなくて、そういうときはイラッとしている態度を選手達に見せるようにしています。「あれ? 監督、今のなんで気に入らなかったんだろう?」と感じてもらえるように。時には口に出しても言いますね。「今日、この場面でこういうことが気に入らなかったよ。それは君たちの準備が足りなかったからだよ」とか、その理由も話します。

——一方的に怒るのではなくて、そこでもコミュニケーションを意識しているのですね。

そうですね。子ども達が大人の機嫌を伺う必要はもちろんないんですけど、相手の気持ちを考えることが苦手な子が多いと感じています。でもそれは訓練をすれば身につけることができると思っていますから。



——今日、何人かの子に話しかけたんですけど、どの子も受け答えがしっかりしている印象を受けました。大人や外部の人とのコミュニケーションなどについて、何か指導をされているのですか?

指導者や保護者といった大人の集団の前で話しをさせる機会は多いですね。1分間スピーチをさせたりとか、今日も体験に来た小学生達を前に「僕たちのチームはこういうチームです」というウエルカムスピーチを突然振って話をさせたりとか(笑)。そういうときにきちんとその場のTPOに合わせた話ができるように、という指導はしています。
あとは練習の最後の締めで保護者へのスピーチで「今日は誰々!」みたいなスピーチもやっていますね。30秒とか1分間とかその場に応じて訓練をしていて、その場でフィードバックもしています。

後編に続きます。

(取材・写真:永松欣也)
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