子どもの持っている力、成長は大人の想像を超える
——競技人口が減っている中学軟式野球の問題点と課題はどんなところにあると思いますか?
勝利至上主義のチームが多いことだと思います。全てを否定するつもりありませんが、「エースと心中する」に代表されるような、選手を酷使するような場面が少なからず見られます。(目先の結果のために)高校、大学で使う「野球へのエネルギー」を中学で使い果たさせるような鍛え方、酷使をしてどうするんだと思います。そこを変えていかないといけないと凄く感じています。
——そういうチームは選手から監督やコーチに肩、肘が痛い、など言い出しにくい空気がありますよね。
本当にそう思います。試合前に「肘が痛い」とか言うと「もう試合で使ってくれなくなるんじゃないか……」とか、そういうことを思って痛みを我慢して投げたりとか、そういう子も多いと思います。さっきの「顔面服従」じゃないですけど、そういうことが言いやすい空気を作ることも大事だと思っています。
——選手達は大田ドリームスで、いい意味で楽しく、緩い環境で野球を楽しんでいると思いますが、高校でも野球を続けたいと思ったときに、同じような環境を探すのは難しくないですか?
そうですね。だから最近では公立高校で軟式野球を続ける子が増えてきましたね。
——中学野球の面白さ、魅力はどこにあると思いますか?
子ども達の成長を目の当たりにできることですね。半年、一年単位で見たら中学生の子達が凄く成長するんです。子どもの成長を見るのが楽しいんですよね。自分の子じゃなくても。
——チームに携わって6年になるそうですが、これまで一番の思い出は?
息子がいたときの代のチームですね。3年生が10人いたんですけどそのうち4人は中学で野球を始めた子で、他の6人も小学校時代にレギュラーだった子は2、3人だったんです。周りのチームからは「絶対こんなチームに負けるわけねーよ」みたいに言われ続けてきたチームでしたけど、最後の大田区の大会で準優勝したんです。子どもの持っている力、成長というのは大人の想像を超えるんだなって教えてくれたチームでした。それを経験してしまったから、子どもが卒団してからも指導をずっと続けているのかもしれないですね。
——最後に、このチームを通じて子ども達がどんな風になってくれたら嬉しいですか?
この先も野球を続けてくれることが一番嬉しいですけど、野球じゃなくても何かを一生懸命にやってくれると凄く嬉しいですね。うちのOBで高校からラグビーを始めて花園にいった子がいるんです。「高校ではラグビーやります。花園に行くんで応援してください!」とか言っていたんですけど、本当に花園に行ったんです。そういう子もいるので野球じゃなくてもいいから、高校で何かに熱中してくれると嬉しいですよね。
大田ドリームスさん、潮田さん、ありがとうございました!
(取材・写真:永松欣也)