ニュース 2022.05.20. 15:12

【松島町立松島中】猿橋善宏先生|主体的に行動できる生徒を育てる

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宮城・松島町立松島中、利府町立しらかし台中の監督として4度の全国大会出場を誇る猿橋善宏先生。2021年7月に60歳の誕生日を迎え、2022年3月末をもって定年退職することが決まっている(4月より仙台育英高校硬式野球部部長)。昭和、平成、令和と、時代の移り変わりを肌で感じ、それに伴い指導方法をアップデートしてきた。スパルタ式から、生徒の主体性を育む指導へ。令和の部活動に求められるコーチングを語ってもらった——。
「育成年代の『技術と心』を育む中学野球部の教科書」(大利実/カンゼン)の中から、一部をご紹介します。




私が猿橋先生と初めてお会いしたのは、2004年の冬だったと記憶している。最初から強烈なインパクトを感じる指導者だった。
「若い教員は、子どもたちに『〇〇先生』と呼んでもらえることから感謝したほうがいい」
「人はなぜ生きるのか。中学校で、もっと考えさせるような話をしたほうがいい」

教員になるまでの歩みにも興味を持った。幼い頃は体が弱く、野球をやりたくてもできない生活を送ってきた。中学では写真部、高校では軟式野球部に入ったが、脊椎分離症の影響で退部。青春時代を野球とともに過ごしてきたわけではない。

2004年以降、1年に1度以上は猿橋先生のもとに足を運び、さまざまなテーマで話を聞いてきた。その都度感じるのは、常に時代の流れを見ながら、社会で活躍できる人材を育てようとしていることだ。
「時代の流れは、とても大きなキーワードです。『部活動ガイドライン』の導入もその流れのひとつですが、悲しがっている教員も多い。『昔は1日、練習ができたのに今は全然できない。これじゃあ強くなんてなれない』と。平成の時代と比較して、活動時間だけが減ってしまったと考えているうちは、メリットは見出せないと思います。新たなガイドラ
インができたのなら、その中で新しいものを創り出していく。悲しがっても嘆いても、何も良いことはありません」

ガイドラインの導入は、活動時間を確実に減少させた。猿橋先生曰く、「ガイドライン以前と比べて、約40パーセントの減」。ついつい嘆きたくなるが、この環境下で選手一人ひとりの技術と心を伸ばすことを考えなければいけない。
「ガイドラインの狙いは、先生にも選手にも、精神的、時間的な余裕を持たせましょうということです。その中で、指導者からのトップダウンの長時間練習ではなく、短い時間で選手が主体的に行動できる部活動に変えていく。主体的とは、自分で考えて自分で行動して、その行動の結果から何かを読み取り、新たな行動に移していくこと。言い方を替えれば、『自分で夢を描いて、自分から走る子どもを増やしていく』。そのほうが、子どもたちも楽しいはずです」

かつてのように土日も1日練習していると、先生も選手も疲弊してしまう。ガイドライン導入で感じるのは、選手の表情の変化だという。松島中では週3日の休みを取り入れる時期もある。
「休みが増えたことで、グラウンドで自然に笑顔が見える子どもが増えたように思います。これが、精神的にギリギリのところでやっていると、なかなかそうはならないものです。毎日厳しい練習をすることで、修行僧のように強くなることはあるとは思いますが、中学生の教育としてどうなのか……。はたして、中学生の心を豊かにおおらかに育てることができているのか。それに、練習しないと下手になるかというと、そんなことはありません。成長期の中学生は、栄養をとって、睡眠をとることで成長する。それによって、今までできなかったことができるようになる。毎日練習することで、成長のエネルギーを邪魔している可能性もあるはずです」

猿橋先生にもスパルタ式の時代はあったが、中学生の気質の変化とともに少しずつシフトチェンジ。厳しく指導したところで、今の子どもたちは体力的にも精神的にもついてこられない。保護者もこうした指導を望んでいないことがほとんどだ。
「中学生は間違いなく幼くなっています。かつては、精神的な甘さや成長の遅さを嘆いていたこともあります。でも、人間の寿命が長くなっていることを考えると、『じっくりと時間をかけて大人になってくれればいい。慌てることもあるまい』と思えるようになりました。焦って、無理に詰め込む必要もないわけですし、今はそれだけの時間もありません」

地域や学校によって、置かれた状況に違いはあるだろうが、まずは指導者自身がガイドラインをプラスに捉えることが大事になる。
(続きは書籍で......)






さるはし・よしひろ。1961年7月29日生まれ、宮城県出身。仙台二高~東北学院大。大学卒業後、中学校の教員となり、七ヶ浜町立七ヶ浜中、松島町立松島中、利府町立しらかし台中、松島中で野球部の監督を務める。1998年に松島中を率いて全中に出場し、県勢初勝利を挙げる。2005年には、しらかし台中の監督として全中準優勝。著書に部活動の教育的価値を説いた『部活はそんなに悪者なのか!?』(インプレス)がある。担当教科は英語。(2022年3月時点)
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