【「野球」の要素を含んだ、新しい鬼ごっこ】
イベントは、子どもたちが2つのグラウンドにそれぞれ4グループずつに分かれて行われた。
安部球場の4グループは、「じゃんけん鬼」、「ボール当て鬼」など、この日のために開発されたものを含めた、趣向を凝らした6つの鬼ごっこを楽しんだ。
なかでも「投げダイヤ鬼」は、数名の鬼が投げるボールを避けながら決められたゾーンを通過して次の塁を目指し、ホームに帰って来るというルール。鬼ごっこのなかにさりげなく「ベースをまわる」「ボールを投げる」という要素が多く含まれており、子どもたちは無意識のうちに野球に通ずる動きを経験できていた。
軟式野球場の4グループは「ならびっこベースボール」。ティースタンドに置かれた柔らかいボールを思いっきりかっ飛ばす。ならびっこベースボールは、守る側はボールをキャッチした子どもの周囲に全員が集まってしゃがみ「アウトー!」と全員でコールする。このコールが行われるまでに、打者走者はホームベースから一塁ベースに見立てたマーカーまでを往復する。1往復すれば1点、守備側のコールのほうが早ければアウトとなる。野球ほどルールが複雑ではないため、小さな子どもでも参加ができる野球遊びだ。
このイベントを主催した前述の大渕氏は「今の時代、子どもたちに『野球をやってみよう』というのは年々ハードルが高くなってきていると感じています。ですから今回のイベントはあえて『鬼ごっこ』を前に持ってきて『鬼ごっこ×野球』としました。何人かの保護者の方が『鬼ごっこをしにきました』と仰っていましたが、それでいいんです。まずは外で思い切り遊ぶこと、体を動かすことの楽しさを子どもたちに体験してもらいたいですから」
と今回のイベントの意義について話す。
この日のイベントでは、早稲田大学野球部の4年生たちも子どもたちとの触れ合いを楽しんだが、西武ライオンズにドラフト1位指名された蛭間拓哉選手はイベントを振り返り、「野球をやらせるというよりは遊びの延長で、というのが大切だと思う。今日のように鬼ごっこの延長で野球を、という感じに繋がればいい。いまは公園で野球とかもできないので、今日のようなことを自分たちの世代が受け継いでいきたい」と話し、子どもたちへの野球の普及についても言及した。(取材・文・写真:永松欣也)