■「きつい練習ほど楽しくやる」
キツそうなトレーニングメニューが次々行われる。だがそこにピリピリした空気はない。メディシンボールを両手で頭上に掲げて走るリレーでは、負けたチームには罰ゲームのペナルティがあるため、苦悶の表情の中にも笑顔が絶えず、順位を競って盛り上がっていた。
チームのモットーは「きつい練習ほど楽しくやる」。
監督も楽しそうに、汗を流す選手達の様子を見つめていた。
トレーニングの最後はグラウンドのある運動公園の外周300メートルを10本ダッシュ。これも「体力をつける」「やり抜く力を培う」といった漠然とした目的で行われているわけではない。
「250メートルを越えた辺りから、選手達は内転筋を使い出すそうなんです。内転筋は鍛えるのが難しい部位ですから、この距離を走ることによって鍛えることができます」とその目的を説明してくれた。
こういった知識を持っているのも、直ぐ近くにある筑波大学野球部出身の石黒浩二ヘッドコーチが、頻繁に同大学に出向いて学んでくることができるからだ。
トレーニングに力を入れ始める前は、バッティング練習で両翼80m(+3mの高さのフェンス)を越える選手は3人くらいしかいなかったが、今は10人以上が越えるようになった。ピッチャーの球速も上がり、コントロールも以前よりも全体的に良くなってきていると感じていると藪田監督はトレーニングに手応えを感じている。そういった効果もあり、2018年には全国大会で初めてベスト8に進出することもできた。甲子園常連の強豪高校から声がかかる選手も増えてきた。
「『高校での練習の方が楽です』と話してくれるOBもいるんですよ」という藪田監督。全力で勝利を目指しながら、高校、大学で選手達が飛躍する姿を思い描き、今日も選手達を鍛え上げる。(取材・写真/永松欣也)