ニュース 2023.03.16. 13:42

仙台育英・須江航監督『尊敬すべき3年生へ』|監督からのラストレター

無断転載禁止
今年も卒業シーズンまっただ中となりました。この季節に、野球を頑張った選手達に読んで欲しい本があります。それは2年前に発売された『監督からのラストレター』(インプレス/タイムリー編集部)です。
2年前、全国の高校球児達はコロナに甲子園という夢を奪われました。それでも最後までやりきった選手達に向けて、卒業式にあわせて全国の監督たちが手紙を書き、それが一冊ほ本にまとめられました。
そんな本の中から、仙台育英・須江航監督が選手達に送った手紙を紹介します。




【尊敬すべき3年生へ】


最初に3年生と話をしたのは2017年12月のことでした。部内の不祥事で前監督の佐々木順一朗先生が辞任。急遽私が監督になったことで、入部が決まっていた選手と保護者にすぐ連絡をとり、野球部の状況や目指す野球についてお話をさせてもらいました。きちんと高校野球ができるのか、環境的に大丈夫なのか、そういった不安も大きかったと思いますが、それでも育英を選んでくれてありがとう。

不祥事が起きた反省から当時の上級生と面談を重ねて新しく掲げたスローガンは『地域の皆さまと感動を分かち合う』というもの。野球部だけ、学校だけではなく、地域全体と深いかかわりを持ち、日本一になった時に一緒に感動していただくようなチームを目指そうということで取り組んできました。これは今までの育英にない新たな挑戦でした。その考えがみんなに浸透していたからこそ、春のセンバツ、夏の選手権が中止になった時にも自分たちだけではなく、周囲に対する発言や行動が多く見られたのだと思います。

この年の高校3年生だったということに対して残念だという気持ちを持ったまま高校野球を終わってほしくないと思い、自分だけでなく多くの大人が本気で考えて動いていることもその都度伝えていました。みんなはそれについてくるというのではなく、覚悟を持って野球にも野球以外のことにも取り組み、こちらが考える一歩先を行っていたように感じました。本当に尊敬できる生徒たちです。

今回の新型コロナウイルスで仕事でも野球でも、色んなことが明らかになりました。特に大きかったのが今までの常識が実は無駄なことが多かったということをあぶりだした点だと思います。こんな経験は時代や制度が大きく変わらないと起こらないことですが、これからも漠然と今まで通りに取り組むのではなく、本当に必要なものは何かということを見極めていくようにしてください。

大人になればなるほど自分の力だけではどうしようもないことに直面することが増え、必ず挫折を味わうことになります。でも挫折やコンプレックスを味わうから強くなれることも確かです。みんなは日本一を目指して高校野球をやるという最大の目標がなくなったわけですから、大人になる前に大きな経験をしたことは間違いありません。そしてそんな状況でも決して後ろを向かず、情熱を絶やすことなく野球に取り組み、夏の宮城代替大会では3年生全員が出場しながら優勝を果たすという見事な結果も残しました。高校野球において何一つやり切っていないことはないと、胸を張って言い切って良いと思います。

この先の人生でも、同じような困難が起こっても乗り越えて、幸せになれるだけの力を必ず持っています。自信を持って、大学、社会でも取り組んでいってください。

仙台育英学園高等学校 硬式野球部監督 須江航



掲載校・監督一覧(敬称略/2021年3月出版当時)

【 北海道・東北 】
札幌大谷・船尾隆広
盛岡大付・関口清治
仙台育英・須江 航
仙台 一・千葉厚
学法石川・佐々木順一朗

【 関 東 】
前橋育英・荒井直樹
明秀日立・金沢成奉
浦和学院・森士
昌平・黒坂洋介
八千代松陰・兼屋辰吾
日大三・小倉全由
小山台・福嶋正信
開成・青木秀憲
慶應義塾・森林 貴彦
県相模原・佐相 真澄
横浜隼人・水谷哲也
川和・伊豆原 真人
市ケ尾・菅澤 悠

【 東海・北信越 】
静岡・栗林俊輔
中京大中京・高橋源一郎
西尾東・寺澤康明
県岐阜商・鍛治舍巧
星稜・林和成
敦賀気比・東哲平

【 近 畿 】
近江・多賀章仁
乙訓・市川靖久
履正社・岡田龍生
香里丘・岡田泰典
報徳学園・大角健二
東播磨・福村順一
天理・中村良二
市立和歌山・半田真一

【 中国・四国 】
おかやま山陽・堤尚彦
岡山県共生・森下雄一
広陵・中井哲之
米子東・紙本庸由
聖カタリナ・越智良平
高知商・上田修身

【 九州・沖縄 】
福岡大大濠・八木啓伸
創成館・稙田龍生
明豊・川崎絢平
大分商・渡邉正雄
沖縄尚学・比嘉公也
ポスト シェア 送る

もっと読む

連載・コラム
カラダづくり
練習
お役立ち
チーム紹介
TOPICS