高校野球の元監督が「お父さんコーチ」になって思った、少年野球のあんなことやこんなこと。日々、子ども達と向き合い、奮闘されている指導者の皆さんに向けた、神奈川県立川和高校野球部の元監督、伊豆原真人さんのコラムです。
長らく神奈川県立川和高校野球部の監督を務めさせて頂いておりました伊豆原と申します。今は高校野球の現場を離れ、息子達の少年野球のお手伝い「お父さんコーチ」をさせていただいてます。そのなかで思ったこと、気付いたことなどを中心に書かせていただければと思います。それが、日々子ども達の指導にあたられている皆さんの気付きや発見に繋がってもらえると嬉しいです。
今回は「バックアップ」についてちょっと気になったことがあったので書かせてもらいました。
「キャッチャーからの返球、セカンド・ショートでマウンド後ろにカバー入りなさーい!」
たまたま通りかかった小学校のグラウンドに響く指導者の声。
ちょっと外から見えたので、何気なく横目で見た小学生の学童野球の試合でのひとコマです。
「うんうん。バックアップ大事だよねー(そもそもこの場合はカバーではなくバックアップだが)」
なんて思いながら、試合をよく見てみたら、場面は「ノーアウトランナー無し」でした。
「え? ランナーいないのにどうしてカバー(バックアップ)?」
気になってしまい、そのまま見学しました。
セカンド、ショートは、監督から言われた通りに、ランナーがいなくてもキャッチャーからピッチャーへの返球を、全球バックアップをしていました。しかも、高校野球のように股割りまでして。
私は考えました。
きっと、指導者はしっかりとこの試合で選手たちにバックアップの大切さを植え付けたいのだろうと。
ランナーいないからといってバックアップをやらないと、肝心なランナーが塁上にいる場合で忘れてしまうかもしれない。だから、ランナーがいようがいまいが、選手達が「体で覚える」まで、ひたすらにバックアップをやらせているのだろうと。やり方は色々あるけれど、この試合ではそこまで徹底して意識させたいのだろうなと。
しばらく試合を見続けていると、相手バッターがジャストミートして速い打球がレフト前へと転がりました。バッターランナーは、二塁を伺う勢いで一塁をオーバーラン。
守備側はレフトがショートへ返球。ショートは定位置から少し後ろでボールをキャッチし、そのままマウンド上のピッチャーに返球しました。
この何気ないプレーを見て、私は心の中で叫びました。
「って、おい! そこはバックアップするように言わないんかい!」
ランナーがいない時に散々二遊間がバックアップしてたのに、ランナーが一塁にいるときに、ショートからピッチャーへの返球には誰もバックアップに動いていないのです。ショートの返球が逸れたら、誰もいないはずなのに・・・・・・
高校野球のテレビ中継では、ランナーがいるとき、キャッチャーからの返球に二遊間がバックアップに動いている場面を目にすることがあります。子ども達にそれを真似させることは大切ですが、本当に大切なのはバックアップの【目的を理解させる】ことではないでしょうか?
子どもでも理解できるようにバックアップすることの目的を理解させる。それができたら、あとは「どんな時にバックアップが必要になる?」と一緒に考えたり、気付かせてあげることが指導者の役目だと私は思います。
今回の、ランナーが一塁にいる場面でのショートからピッチャーへの返球では、
①キャッチャーが本塁と一塁の間、送球ライン延長線上までバックアップに行く。
②ショートは深い位置からピッチャーに返球せず、セカンドベース付近からマウンドに投げる(延長線上にキャッチャーがいるので、キャッチャーはホームベースよりも少し前で最後まで見る)。
この①②のどちらかで送球のバックアップになります。
皆さんのチームでも行っているバックアップ、子ども達はその意味を理解していますか?
【用語メモ】
「カバーリング」とは、ベースに入ること。例えば、ファーストゴロでピッチャーが一塁ベースに入ってトスをもらい、ベースを踏んでアウトをとることを一塁のカバーリングという。
「バックアップ」とは、プレーする選手がいるベースの後ろなどに回り込むこと。ベース上で捕球する選手が送球を捕れなかったり、捕球ミスでファンブルした時に後逸を防ぐことをいう。
【プロフィール】
伊豆原真人。愛知県立瑞陵高校野球部、信州大学野球部で投手としてプレー。大学院卒業後にシステムエンジニアの道へ進むも、28歳で神奈川県教員へ転職。相模大野高校(相模原中等教育学校)監督を経て、2013年から川和高校の野球部監督に就任。2023年からは他校への異動に伴い高校野球の現場を離れた。担当教科は数学。
X(https://twitter.com/izuharabaseball)
Instagram(https://www.instagram.com/masatoizuhara/)
長らく神奈川県立川和高校野球部の監督を務めさせて頂いておりました伊豆原と申します。今は高校野球の現場を離れ、息子達の少年野球のお手伝い「お父さんコーチ」をさせていただいてます。そのなかで思ったこと、気付いたことなどを中心に書かせていただければと思います。それが、日々子ども達の指導にあたられている皆さんの気付きや発見に繋がってもらえると嬉しいです。
今回は「バックアップ」についてちょっと気になったことがあったので書かせてもらいました。
「キャッチャーからの返球、セカンド・ショートでマウンド後ろにカバー入りなさーい!」
たまたま通りかかった小学校のグラウンドに響く指導者の声。
ちょっと外から見えたので、何気なく横目で見た小学生の学童野球の試合でのひとコマです。
「うんうん。バックアップ大事だよねー(そもそもこの場合はカバーではなくバックアップだが)」
なんて思いながら、試合をよく見てみたら、場面は「ノーアウトランナー無し」でした。
「え? ランナーいないのにどうしてカバー(バックアップ)?」
気になってしまい、そのまま見学しました。
セカンド、ショートは、監督から言われた通りに、ランナーがいなくてもキャッチャーからピッチャーへの返球を、全球バックアップをしていました。しかも、高校野球のように股割りまでして。
私は考えました。
きっと、指導者はしっかりとこの試合で選手たちにバックアップの大切さを植え付けたいのだろうと。
ランナーいないからといってバックアップをやらないと、肝心なランナーが塁上にいる場合で忘れてしまうかもしれない。だから、ランナーがいようがいまいが、選手達が「体で覚える」まで、ひたすらにバックアップをやらせているのだろうと。やり方は色々あるけれど、この試合ではそこまで徹底して意識させたいのだろうなと。
しばらく試合を見続けていると、相手バッターがジャストミートして速い打球がレフト前へと転がりました。バッターランナーは、二塁を伺う勢いで一塁をオーバーラン。
守備側はレフトがショートへ返球。ショートは定位置から少し後ろでボールをキャッチし、そのままマウンド上のピッチャーに返球しました。
この何気ないプレーを見て、私は心の中で叫びました。
「って、おい! そこはバックアップするように言わないんかい!」
ランナーがいない時に散々二遊間がバックアップしてたのに、ランナーが一塁にいるときに、ショートからピッチャーへの返球には誰もバックアップに動いていないのです。ショートの返球が逸れたら、誰もいないはずなのに・・・・・・
高校野球のテレビ中継では、ランナーがいるとき、キャッチャーからの返球に二遊間がバックアップに動いている場面を目にすることがあります。子ども達にそれを真似させることは大切ですが、本当に大切なのはバックアップの【目的を理解させる】ことではないでしょうか?
子どもでも理解できるようにバックアップすることの目的を理解させる。それができたら、あとは「どんな時にバックアップが必要になる?」と一緒に考えたり、気付かせてあげることが指導者の役目だと私は思います。
今回の、ランナーが一塁にいる場面でのショートからピッチャーへの返球では、
①キャッチャーが本塁と一塁の間、送球ライン延長線上までバックアップに行く。
②ショートは深い位置からピッチャーに返球せず、セカンドベース付近からマウンドに投げる(延長線上にキャッチャーがいるので、キャッチャーはホームベースよりも少し前で最後まで見る)。
この①②のどちらかで送球のバックアップになります。
皆さんのチームでも行っているバックアップ、子ども達はその意味を理解していますか?
【用語メモ】
「カバーリング」とは、ベースに入ること。例えば、ファーストゴロでピッチャーが一塁ベースに入ってトスをもらい、ベースを踏んでアウトをとることを一塁のカバーリングという。
「バックアップ」とは、プレーする選手がいるベースの後ろなどに回り込むこと。ベース上で捕球する選手が送球を捕れなかったり、捕球ミスでファンブルした時に後逸を防ぐことをいう。
【プロフィール】
伊豆原真人。愛知県立瑞陵高校野球部、信州大学野球部で投手としてプレー。大学院卒業後にシステムエンジニアの道へ進むも、28歳で神奈川県教員へ転職。相模大野高校(相模原中等教育学校)監督を経て、2013年から川和高校の野球部監督に就任。2023年からは他校への異動に伴い高校野球の現場を離れた。担当教科は数学。
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Instagram(https://www.instagram.com/masatoizuhara/)