ニュース 2023.12.22. 13:39

素振りはNG? バッティング練習はボール球も全部打つ?

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幼稚園児から大学生まで野球を指導して27年。『たてぶり先生」の愛称で親しまれる榊原貴之さん(座間ひまわり野球倶楽部代表)が監修した書籍、『少年野球 ワンランク上の選手になるための新常識52』(日本文芸社)が発売されました。「昔から正しいとされてきた野球界の常識」にメスを入れ、古い常識をどのようにアップデートするべきかを伝えるこの本の中から、「素振りのNG」について、たてぶり先生にお話を聞きました。




——小さい頃は監督に掌を見られて「全然素振りしてないじゃないか!」なんて怒られた方も多いと思いますが、素振りもNGなんですか?

たてぶり先生:誤解を恐れずにいえば「素振り」って上級者向けの練習なので難しいんです。なぜかというとフォームを固めるための練習だから。自分がどんなスイングをするべきなのかが分かっている選手がやる練習なんですよね。

——なるほど。

たてぶり先生:あとはボールを打ってば打球を見て結果を判断できますが、素振りって振ったときの音とか感覚で判断するしかないんですよね。それを小学生が判断できるのかというと難しいですよね。高校生や大学生でも分からない選手が多いと思います。
「コースや高さを意識して振れ」とかも言われますけど、ボールがない中で想像の中だけでそれをやっていると大体同じスイングになりがちですし、同じパターンのスイングを体に刷り込むことにもなりかねません。体勢を崩してアウトコースのボール振る素振りとかやってる選手、見たことないでしょ?

——たしかに見たことはないですね。

たてぶり先生:低めの変化球を拾ったり、高めの変化球を被せて振ったりとかをイメージして素振りをしている人はほとんどいないと思うんです。でも実際の試合ではそれがすごく重要なんですよね。
シャドーピッチングもそうなんですけど、一つのフォームに固めてしまいかねない練習は非常に難しいですし、パフォーマンスが下がるリスク、ケガのリスクもすごく大きいんじゃないかと思っています。

——素振りをするよりも何かを打った方がいいということですか?

たてぶり先生:新聞紙を丸めたボールでもいいんです。来るボールに対してバットをコンタクトさせるという技術が必要になるので、素振りではなく何かを打って欲しいですよね。

——何かを打つことが難しい環境であれば素振りも無理してやらない方がよいですか?

たてぶり先生:そうですね。「プロスピ」をやっている方がいいですね(笑)。配球の勉強にもなりますし。

——「何かを打つ」ことが大事だということですけど、ティーバッティングは斜め前からトスしてもらうことに何の疑問もなかったのですが、これもNG?

たてぶり先生:そうですね。詰まったり、泳いだりできないので、バッティングの奥行きが出ないんですよね。斜め前からトスされたら一つのポイントで打つしかないですから。
あとは前方のネット中央部分をめがけて打つと思うんですけど、でもあそこは試合ではアウトになる確率が高いところですから。人がいない場所に良い打球が飛んだらあのネットの中心には打球が入らないですからね。プロ野球が使っている大きいネットであれば斜め前からのトスでも良いと思うんですけど、アマチュアが使っている小さなネットだと危険ですよね。ボールがネットの中央に集まるのでボール拾いの時間がない分だけ効率的に練習はできますけど。

——間違った技術が身についてしまう怖さもあるわけですね。

たてぶり先生:トスをあげる人も打つ人も、さっき話したことを理解した上でやる分には良いと思うんですけど、分かってないけど数だけこなしてやってしまうのがNGですよね。

——ティーバッティングをやるのであれば斜め前ではなくてピッチャー方向から、ということですね。

たてぶり先生:そうですね。さっきも話しましたが、シャトルや丸めた新聞紙を前から投げて欲しいですね。

——本の中で「バッティング練習でストライクしか打たないのもNG」だと書かれていますね。

たてぶり先生:試合の中で打ちやすいボールってあまり来ないわけじゃないですか? 打ちに行くにしてもタイミングを外されたり、泳がされたりすることもあるわけですよね。日頃からそういったスイングを練習をしていれば試合で結果を出せる確率が上がると思うんです。だからバッティング練習ではストライク、ボールの見極めは不要で、きたボールは全部打たせる、振らせる。それが大事ですよね。

——なるほど。

たてぶり先生:巨人の阿部慎之助監督が現役の時に「バッティング練習ではタイミングがあわなかったときにどう打つかを考えながらやっている」って言っていたんですけど、まさにそういうことなんです。

——「全部打つ」となると、ワンバウンドも全部打った方がよい?

たてぶり先生:打った方がいいです! イチローだって試合でワンバウンド打っていましたよね。

——なるほど。フリーバッティングで一人10球打つなら、「ボール、ストライク関係なく10球全部打て!」ということなんですね。

たてぶり先生:そうですね。でも10球じゃなくて3球を何度も繰り返して打たせた方がいいですね。1打席で10回もスイングすることってほとんどないですよね?10球だと打つ方も集中しなくなります。打ち損じても「まだ〇球もある」という感じになってしまいますから。でも3球だと試合に近い感じになりますから集中するようになります。それを何回か繰り返して、最後は1球打ったら交代を繰り返します。
1球交代で打たせると不思議とヒットが出るんですよね。その打席で来るボールを必ず振らなきゃいけない、一発勝負ですから。バッティング練習ではそのテンポとタイミングが大事かなと思います。

——ボールでもなんでも打つとなると「そんな練習をさせたらスイングが乱れる」とか反論されないですか?

たてぶり先生:乱さないとダメなんです。「どんなボールも同じ打ち方をしないとダメ」という、そもそもの考え方が間違っていると思っています。自分の理想としているスイングでいつも打てるわけではないですよね? むしろピッチャーは打たれないようにスイングを乱しにくるわけです。そのときにどうするのか? 乱しても打つことが大事になりますよね。

——なるほど。

たてぶり先生:この練習のもうひとつ良いところは、どんなピッチャーでもバッティングピッチャーができることです。ストライクが入らなくても務まりますし、ストライクを投げないといけないというプレッシャーもありません。
高校、大学で先輩相手にバッティングピッチャーするのはプレッシャーですよね。それが原因でイップスになる選手もいるくらいですから。バッターにしてもストライクを見逃して怒られる心配をしなくても良いですしね。

 

*次回「守備編:体の正面で捕るはNG」に続きます。






縦振り先生/榊原貴之
座間ひまわり野球倶楽部代表。『たてぶりせんせい』って呼ばれてます。野球の技術指導が本業です。小中学生に野球教室をしたり、甲子園に出るような高校の外部コーチもやってます。自身が代表を務める『座間ひまわり野球倶楽部』は小学部と中学部があります。SNSにも野球観、人生観を毎日綴っています。https://twitter.com/taka19740921
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