【チームスポーツでもあり個人スポーツでもあるところに野球の楽しさ、面白さがある】
——令和の時代に中学生を指導する難しさを感じることはありますか?
情報が多い社会で、彼等の興味関心の幅が昔に比べて広くなっていて、その中から野球を選んでもらうきっかけを作ることが一番難しいと思います。野球部に入ってきてくれさえすれば野球の楽しさを伝えることはできるのですが、その入口をどう作ってあげるかというところが難しいと感じています。
——今の年代の中学生たちの良いところ、ちょっともの足らないと思うところなどはありますか?
正解があるものに関しては、そこからズレないようにやることは得意というか上手いと思います。反面、正解のないものがちょっと苦手というか、どこから思考していけばいいのか、やり出す、動き出すまでに時間がかかってしまうことが多いと感じています。さっきもありましたけど、外部コーチからの指導が終わって部活の終了時間までちょっと時間が空きましたよね? でも動き出すまでに時間がかかってしまっていました。それはやっぱり普段から選択肢が与えられていてその中から選ぶという習慣がついているからだと思うんです。自分から何かを得るために動くという機会が少ないなかで育っているからなのかなと感じています。
——チームの課題はどんなところにありますか?
これは私立中学特有なのかもしれないですが、どの代でもチーム一丸になることに対して課題を感じています。公立中学だと小学校時代から一緒で、同じ町内に住んでいて、同じ方向に帰って行ってというように一緒に過ごす時間が長いから中学の部活でも一丸になることは自然なことだと思うんです。でもこの子達はほとんどが中学で初めて知り合って、住んでいる町も帰る方向もバラバラなので、一緒の時間を過ごす時間が少ない。そういう部分で繋がっている感というか、チーム一丸になることに毎年苦労しています。
——野球人口が減っていると言われていますが、野球をやったことがない人達に「野球の面白さ」を伝えるとしたら、どんなふうに伝えますか?
誰かの成功を自分の成功のように喜ぶことができますし、チームスポーツではありながら個人プレーの連続なので、自分の上達具合やパフォーマンスが結果として分かりやすく出やすい。それが勝利に繋がると嬉しいですよね。あとは失敗しても仲間が助けてくれたり、仲間の失敗を今度は自分がカバーしてあげたりできることですね。チームスポーツでもあり個人スポーツでもあるところに野球の楽しさ、面白さがあると思います。(取材・写真/永松欣也)