【型を知ってこその『型破り』】
「東横ポニー」ではキャッチボールを大事にしています。この日の練習でもキャッチボールを五段階に分けてたっぷり50分かけて行われていました。6人しかいないため、できる練習が限られていることもありますが、そこには廣川さんのこんなこだわりがあります。
「手の動きだけに頼らず、身体の様々な部分を使ってキャッチボールを行うことが技術向上と負荷分散による故障回避に繋がると思います。5つの段階を指揮してキャッチボールを行うことで身体の使い方を学んでもらっています。高校での野球をイメージするとキャッチボールのレベルをもう一段階上げたいと思っています」
スパイクを履いて練習することも廣川さんのこだわりの一つ。
それは、野球は「動く」と同じくらい「止まる」が重要なスポーツだから。野球は小刻みな切り返しを行いながら動きたい方向に素早く動き、止まって次の動作へ素早く移行する動作の繰り返し。足でしっかり地面を掴み、踏ん張りを効かせて次の動作に移行することが技術向上だけでなく、怪我を防止するためにも必要なことだと考えているから。
人工芝の室内練習場ではスパイクを履いて練習することができません。だからこそ廣川さんは河川敷を整地してまで、スパイクで練習ができる場所にこだわったのです。
「いつもグラウンドで練習しているチームにとってはスパイクを履くのは当たり前のことかもしれませんが、グラウンドを持たないチームが⼟の上で硬式野球の練習ができる場所を確保するのは⼤変なことです。お金を出せば借りられる室内練習場ではなく、手間をかけてもスパイクを履いて練習できる場所にこだわりました」
発足からの1ヶ月間はスパイクを履いての地道な基礎練習の繰り返し。その成果を廣川さんは嬉しそうに語ります。
「スローイングの強度や打球の⾶距離で⼤きな成果が現れました。敢えて平らではない河川敷でノックを⾏うことで、守備においてもイレギュラーバウンドに対して『⾜で粘る』ができるようになってきました。練習メニューを立てる時には必ず『得られる効果』を想定してメニューを決めますが、これは想定以上の成果ですね」
選⼿の成⻑のために廣川さんが⼤切にしていることは「まずは決められた型をやり切る」こと。
「なんでも⾃由気ままにやってきた選⼿が将来、⼤きなことをやり遂げるようになるとは思いません。規律を守り、他⼈を思いやり、⽬的意識を持って課されたことをやり遂げようとする中で『より良い⽅法のアイデア」『発想の転換』など、既成概念に囚われない柔軟な発想が⽣まれると思っていますし、「型を知ってこその『型破り』な存在になれる」と思っています」(取材・写真:永松欣也)
後編ではこの日の練習の様子を詳しくお伝えします。