【選手も楽しみにしている「リアル野球盤練習」】
縦80メートル、横25メートルほどの練習環境。これではさすがにフリーバッティングを行うことはできません。しかし、この環境でも思いっきりバッティングができるメニューを廣川さんが考え出していました。それが「リアル野球盤練習」です。
選手6人が二手に分かれ、そこにコーチが1名ずつ参加して4人対4人、試合形式(7イニング制)で行われます。
5、6メートルの距離からピッチャーが下から投げたボールをバッターが打つのですが、普通のバッティング練習と異なるのは、打っているボールが400グラムのサンドボールであること。ボールが重いため、中学生が思いっきり打っても打球はなかなか飛びません。これならこの限られた環境でも思いっきりバッティング練習を行うことができます。
守る方では、ピッチャーの左右数メートルのところにバッティングネットが置かれており、これをノーバウンドで越えないとバッターはアウトになります(越えればヒット)。ネット後方には野手が配置されていますが打球処理は行いません。野手後方数メートルの位置にはカラーマーカーが置かれ、これを越えればホームランとなります(バッターからの距離は20メートルほど)。ちなみに打球がネットに当たった場合は即チェンジになります。
推奨打撃は「バックスクリーンにホームランのイメージ」(廣川さん)。
ネットに向かって打つティーバッティングではネットの中心をめがけて低い打球を打たざるを得ませんが、「リアル野球盤練習」では左右のフェアゾーンが狭く、おまけに左右のネットにも引っかからないように打たなければならず、必然的にセンターバックスクリーンを狙って打つことになります。またボールが重たいためインパクトの瞬間に力を入れる感覚も養われるというメリットもあります。
「みんなこの練習を楽しみにしています」(廣川さん)というだけあって、選手達も一打一打に喜んだり、悔しがったり、練習というよりもゲームの感覚で大いに盛り上がっていました。
「遊んでいるようにも見える練習ですが、『緩い球を強く打つ』は簡単そうに見えて実は難しいです。『軸足の溜め』『上半身と下半身の捻転』『バットをインサイドアウトで振る』など、全ての要素が揃った時に『緩いボールを強く打つ』ができます。金属バットでバッティンマシンの球を打ち返すのは慣れれば誰でもできます。微妙な緩急差を感じ取りながら強い打球を打つことを、遊びながら学んでもらっています。」
また、廣川さんはこのようにも語ってくれました。
「チーム結成以来、一番成果が出ているのが『打撃』です。足の力を使ったキャッチボールと数種類のティー打撃、それとゲーム感覚で臨めるメニュー。打撃は1つのメソッドで選手を型にはめるのではなく、『型を作る反復練習』『自分の型で打てるタイミングを養う練習』『型を崩された時の対応の練習』など、いろんな練習をすることが大事だと思います。うちはティー打撃だけでも5、6種類やります。選手は『得意な練習』『苦手な練習』それぞれあります。好きなことだけやって喜んでいるのではなく、苦手なことにも逃げずに真剣に取り組んでくれるので成果が出ているのだと思います。」
環境を言い訳にせず、創意工夫で「今できることを真剣に取り組む」東横ポニーの選手達。6人でスタートしたばかりのチームがこれからどんな歩みを見せてくれるのか。注目してみたいと思います。(取材・写真:永松欣也)