ニュース 2024.08.31. 18:21

「マルチスポーツ」で野球は上手くならない?【少年野球お悩み相談】

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【今回のお悩み相談】


息子が所属するチームは県内ではけっこう強い方で、息子は5年生で外野のレギュラーで1番を打っています。試合や大会がないときは土日の朝〜夕方まで練習しています。
息子は平日は野球の自主練もやっていますが、水泳と学校のクラブ活動でバスケをしています。大谷選手が小さい頃に水泳とバドミントンをやっていて、それが結果的に野球にも良かったのだと何かで読んだので、意識して野球以外のスポーツもさせています。

私は野球経験はありませんが、お父さんコーチとして練習のお手伝いをしています。練習は午前は集中して良い練習ができているなと感じる一方で、午後になると間延びしてだらけ気味だと感じています。いっそのこと、午後からはサッカーとかドッヂボールとか他のスポーツをやった方が子ども達も楽しいのではないかと思いますし、長い目で見れば大谷選手のようにそれが将来野球の役に立つかもしれません。
そのことをチームの首脳陣に進言してみたのですが、答えはNOでした。理由は2つ言われました。

「野球は覚えること、やることがたくさんある。他のスポーツをやっている時間はない」
「サッカーで捻挫したり、ドッヂボールで突き指でもしたらどうするのか」

チームは悲願の全国大会出場を目指しているので、保護者も上記理由にほぼ皆さん同意されていて、「サッカーやドッヂで野球が上手くなるの?」「野球の練習しているサッカーチームあるの?」「大谷に影響されすぎ」と鼻で笑われてしまいました。

皆さんは、首脳陣や保護者の言う「NO」の理由についてどう思われますでしょうか?
そもそもチームに「野球以外のスポーツをする」ことを求めること自体が間違いでしょうか(個人単位でやるべきもの?)

【ヤキュイクからのアドバイス】


■現役中学硬式野球監督からのアドバイス


何かエビデンスがあるわけではないですが、絶対に「マルチスポーツ」させるべきだと思います(マルチスポーツを「外遊び」に置き換えても良いかもしれません)。
某有名トレーナーさんがいつも言っていることなのですが、高校、大学と進んで競技レベルが上がってくると「巧緻性」という、自分の身体を思い通りに動かせる能力があらゆる「壁」を越えさせてくれます。ゴールデンエイジ期に同じ動きばかりしていると、この巧緻性が発達しません。だからあらゆる運動、スポーツ、遊びを通じていろんな動きをさせることはとても大事なことだと思います。
野球は確かに覚えることがたくさんあります。でもゴールデンエイジ期にあたる小学生時代に「詰め込み野球」の指導ばかり、毎回同じ動きばかりしていたら、学童野球で勝つことはできても、その子が高校、大学に進んだときに「子どもの時は上手かったのに・・・」という選手になるのかなと思います。

■元学童野球保護者からのアドバイス


「野球は覚えること、やることがたくさんある。他のスポーツをやっている時間はない」
→ルールも分からないレベルではダメですが、細かい連携や卑怯な作戦(ランナーとしてファーストへの目隠しの仕方)等を子どもに教える時間があるならば、他のスポーツをやらせた方がよっぽど良いと思います。高校へ行ったらその学校の戦術もあるので早いウチから仕込んでおいたら高校で邪魔になります。

「サッカーやドッヂで野球が上手くなるの?」
→確実に野球に還元されると思います。ドッヂボールは投げる力が確実に増しますし、サッカーは持久力UP・瞬発力UP・視野が広くなります。コンタクトスポーツなのでフィジカル・体幹もよくなります。

「野球の練習しているサッカーチームあるの?」
→比較になってないですし屁理屈にもなっていません。会話になってないので論外。この発言主の話は永久に聞かないでイイです。

「大谷に影響されすぎ」
→何が悪いのでしょう? 日本が生んだ世界最高のプレイヤーです。影響されて悪い事は一つもないです。

「サッカーで捻挫したり、ドッヂボールで突き指でもしたらどうするのか」
→普段から色々なスポーツや運動をしていないから怪我をするのです。逆なんです。色々な運動、スポーツをやっていれば捻挫もしないしですし突き指もしないと思います。

あと、午後の練習がダレるならやめた方が良いです。集中力切れてるなら練習はやめて家族でどこか行ったりした方がよほど実りになります。

■現役学童野球指導者からのアドバイス


子どもの頃の「マルチスポーツ」が大谷選手のように将来野球のために役立つかどうかは、誰にもわかりません。大谷選手と同じ子は一人としていないと思います。

NOの理由についてですが、1つ目の「野球は覚えること、やることがたくさんある。他のスポーツをやっている時間はない」は、チームの目標、目指すべきところとしてはアリだと思います。野球というスポーツで、チームとして勝つ可能性をあげるならば、やったほうがよいことはたくさんあるのは間違いないと思います。

2つ目の「サッカーで捻挫したり、ドッヂボールで突き指でもしたらどうするのか」はよくわかりません。野球でも怪我の可能性があるものはたくさんありますし、その理由だと学校の体育ができません(笑)。昼休みや放課後も何もできませんね。

「サッカーやドッヂで野球が上手くなるの?」については、なる子もいると思います。ただ、野球の練習と同じですぐに効果がでるものは少ないと思いますし、ほかのスポーツの動きと野球の動きをシンクさせるティーチも必要な場面が多いと思います。

また、ここで言う「上手くなるの?」は「試合に勝てるの?」と同義なことが多そうです。個人の育成・成長よりも、チームとしての成長に視点がいってそうですね。

「野球の練習をしているサッカーチームあるの?」について、野球は聞いたことないですが、例えばフラッグフットボールなど、別スポーツを一緒に取り組んでいるサッカーチームは聞いたことがあります。ただこれも「全国大会に出ているサッカーチームで」など、いろいろな条件が背景にありそうです。

チームに「野球以外のスポーツをする」ことを求めるのは、間違いではないと思いますが、現状それがないチームで取り入れてもらうのは、難しいケースが多いと思います。そういったことをする、しないを表明されていないチームがほとんどですし、聞いても言語化されないことが常ですが、チームにはチームの方針や方向性があると思います。チームのそれに合う合わないで判断するのは通常のことだと思います。

最後に「マルチスポーツで野球は上手くならない?」についてですが、マルチスポーツの定義・実態が、それぞれで違いすぎるので何とも言えません。マルチスポーツをすることで競技力が上がることもあると思いますが、それなりの条件があると思いますし、その条件はかなり厳しいものになると思っています。野球を中心にやっていて「他のスポーツもかじってます」程度だと、野球の競技力向上は難しいと思います。

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