■弱小チームでやったことは遠回りではなかった
——人より秀でていたものがあったとすると?
自分を客観的に見る力だと思います。特に中学時代は指導者が事実上いなかったので、上手くなるためには自分で考えながら練習をするしかありませんでした。練習もがむしゃらに数だけをこなすのではなくて「今のはどうだった?」「もっとこうした方が良いんじゃないか?」と〝もう1人の自分〟と心の中で会話しながら、自分を客観的に見ることを意識して練習をしていました。「上手くなりたい」という気持ちが強かったからこそ、指導者がいなくても、環境が整っていなくても、上手くなるためのアイディアを自分で考えて練習をしていました。そうやって自分を伸ばしてきたことが、人よりも優れていたというか、自分の強みだったと思います。
——教えられたことをやるのではなくて、自分で考えながら練習をしていたんですね。
そうですね。小学校の時に「上手くなるためにはどうしたらいい?」ということを考えていて「ただ回数をこなすだけの素振りは意味がないんじゃないか?」と思って、それからピッチャーの投げるボールやカウント、ランナーなども想定して素振りをするようになりました。
野球中継を見るにしても、ただ見るだけじゃなくて「いまピッチャーはどんな心理なんだろう?」「この状況でバッターはどういうことを考えないといけないかな?」とか、そんなふうに考えながら見ていましたね。
——中学、高校は弱小チームだったけど、振り返ってみたら決して遠回りではなかった?
そうですね。自分で考える習慣が身についてよかったかなと思いますね。
——部員が100人を超えるような強豪校で野球をやっていたら、その後の聖澤さんはどうなっていたと想像できますか?
よく「2:6:2の法則」で考えるんですけど、部員が100人を超えるような強豪校でも意識を高く持って一生懸命にやる人が2割、まぁまぁ頑張る人が6割、頑張らない人が2割かなと思うんです。もし僕がそういった強豪校に進んでいたらですけど、一番上の2割、意識の高い仲間と切磋琢磨していたと思います。現に僕は弱小校から強豪の國學院大へ進んでいます。周りは強豪校出身の選手ばかりで自分が一番下のレベルで入部しましたけど、それでもメンバーに入って、キャプテンにもなってプロに行けましたから。
野球が上手くなりたい、プロ野球選手になりたいという思いがあれば、部員数とか学校の強い、弱いは関係なくて、全ては自分の考え方次第だと僕は思います。(取材・ヤキュイク編集部/写真提供:黒澤崇)