「野球の練習ができる場所がない」と決めつけない
——キャッチボールのボールが捕れない子、トスバッティングのボールがバットに当たらない子もいると思います。そういう子には聖澤コーチはどんなアプローチから入りますか?
キャッチボールは、最初はグローブも使わずに近い距離からトスした柔らかいボールを避ける練習から始めます。左右に避けたり、ジャンプしたりしゃがんだりして。次はそのボールを掌に当てて落とす練習。ボールに対する怖さもあると思うので、ボールも体の正面ではなくて体の右側、左側に投げるようにします。こういった段階を踏んだ練習を10球1セットのようにして行います。
キャッチボールのボールが捕れない子は遠近感だったり、ボールがどの辺に飛んできているのか、どこにグローブを出せば良いかがよく分かっていないと思うので、その辺をもう少し簡単にしてあげるイメージですね
——バッティングはどうですか?
バットは細くて重たいので、まずは太くて軽いプラスティックのバットで打つことから始めます。バットのヘッドは重たいですから、(小さい子や初心者は)振ろうと思ったときにバットが下がってしまってボールの下を振ってしまうケースが多いんです。でも軽いプラスティックのバットで振らせると、自分のイメージ通りにバットを振ることができます。ですので、当たらない子には太いプラスティックのバットで置きティーを打つことから始めますね。
——公園で野球もできない、壁当てもできない、家の前で素振りもできない。そんな環境の子どもも多いと思いますが、そんな環境に「野球大好き聖澤少年」がもし住んでいたら、毎日どんなことをしますか?
例えば家の中で親に卓球ボールやペットボトルの蓋を投げてもらってそれを片手でキャッチしたりとか。丸めた新聞を投げてもらって打ったりとか、仰向けになって天井に向かってボールを投げてキャッチしたり。公園や道端で練習ができなくても「上手くなりたい」という意識があれば、いろんな練習を考え出せると思うんです。だから家の前で素振りができない、壁当てができる場所がないとか、そういうことを言い訳にしない。野球の練習ができる場所がないと決めつけないでほしいですね。
——発売された『弱小チーム出身の僕がプロ野球で活躍できた理由』を読みました。聖澤さんの小中学生時代のように「野球が大好き→上手くなりたい」と子どもが思うためには、指導者や保護者にはどんなことができると思いますか?
まずは「野球って面白いなぁ」という気持ちにさせることが第一歩だと思います。でも子どもよりも大人の方が勝ちたい気持ちが強かったり、「将来は強豪高校へ入れたい」という気持ちが先走ってしまったりすると、子どもは野球が好き、楽しいという気持ちになかなかならないかなぁと思います。
あとは練習でお腹いっぱいにさせないこと。「もっとやりたい!」というくらいで練習を終わらせることも大事かなと思います。そのほうが次の練習を楽しみにしてくれるようになりますし、家に帰ってから「バッティングセンターに行きたい!」みたいに自分で練習することにも繋がると思いますから。そうなったときに、大人はしっかり付き合って、サポートしてあげて欲しいですね。正解を押しつけるのではなくてヒントを与えて、子どもに考えさせてあげる。そんなふうにして寄り添って欲しいですね。(取材・ヤキュイク編集部/写真提供:黒澤崇)