ニュース 2024.10.12. 18:25

こだわったのは「足場」への意識、「不便を楽しむ」ことで選手が成長|中学硬式野球の現場から

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中学硬式野球チームでコーチを務める傍ら、全国約8,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」の管理人でもある廣川寿さん(東横ポニーBayWinds監督)の中学硬式野球コラムです。




「芝の上でスパイク」にこだわる理由




ヤキュイクさんでも取り上げて頂きましたが、7月に新チームを立ち上げました。
子どもたちの野球にもっとコミットするためにこれまでのような「コーチ」という立場ではなく「責任者」として携わり、既成概念に囚われずに良いと思うことはどんどん取り入れて「新しい野球指導のスタンダード」を創りたいという想いを持って始めました。

野球チームを運営する上で必ず悩みの種となるのは「練習場所の確保」です。
横浜市は硬式野球ができるグラウンドを確保することが大変です。比較的調達が容易な室内練習場を定期的に確保する方法も考えました。季節は夏。猛暑に対する配慮は必要ではあるものの、「夏に室内で練習するのはちょっと違うのではないか?」という想いがありました。「夏は暑いもの」です。熱中症対策など配慮は必要ですが「暑さを感じること」自体も四季のある日本で生まれた日本人には欠かせないことではないかと思いました。幸い近所に現在は休部している硬式野球チームが使用していた河川敷があったので、そこを使って活動を開始することにしました。選手には「必ずスパイク持参で参加!」を伝えて。

以前、室内練習場で指導していた時にスローイング、守備、打撃の全てにおいて「足元が緩いなぁ」と感じる時がありました。最近の室内練習場はほとんどが人工芝です。練習中はスパイクではなくアップシューズを使用します。打席で足場を整えたりすることもありません。室内での練習が当たり前になると、試合でも打席に入る時に足場を整えたりすることはなく、そのまま打席に入るようになります。中には他の打者が作った打席の穴にそのまま足を突っ込んで打とうとする選手もいます。「足場」に対する意識が低くなるのだな、と思いました。

今のチームは全面芝生と雑草が生い茂る河川敷で練習しています。最初は5分間走。その後はスプリントのトレーニング。次いでラダーやハードルを使ったトレーニングへと移行していきます。芝の上はアスファルトや土の上よりも地面が柔らかいため、芝の上を走ることで足首周りの細かな筋肉が刺激されます。走る時も地面の反発を得難いので、土の上よりも筋力が必要となります。

顕著に表れた体格と飛距離の変化


アップが終わると全員スパイクに履き替えます。
キャッチボール、トスバッティング、打撃練習、守備練習・・・。ずっと「芝の上でスパイク」です。「アップシューズよりもスパイクの方が地面をグリップする力が強い」というのは誰でも知っていることですが、芝の上では土の上以上にスパイクのグリップ力が上がります。芝の繊維にスパイクの刃が刺さると足がスライドすることはほぼありません。この「スパイクが地面をグリップする」というのは同時に足の筋肉に負荷がかかります。「芝の上にスパイク」は土の上でプレーする時以上にグリップが効くので、当然足への負荷が大きくなります。うちの練習時間は約4時間。ずっと細かな負荷が足にかかり続けます。その影響は選手の体格に現れ始めました。



写真はうちの選手ですが、左が7月末で、右が9月中旬頃の写真です。
足回りの筋肉が太くなっているのがお分かり頂けると思います。最近は体験生が来ることも増えましたが、体験生保護者の皆さんは揃って選手たちの足の筋肉の発達度合いに興味を持たれます。「そんなゴリゴリにハードトレーニングやっているようにも見えないですが、みんな足の筋肉が凄いですね」という感想を頂くことが多くなりました。体格の変化はプレーにも現れ、まず打球の飛距離が大幅に伸びました。写真の選手は先日の試合でライト方向に90mフェンスにワンバウンドで当たる大飛球を放ちました。元々打撃は苦手な選手でしたが、最近は打席でも余裕が感じられるようになりました。
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