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『あのプロ野球選手の少年時代』|編集部お薦め!指導者・保護者に読んで欲しい野球本を紹介!

少年野球の指導者・保護者の皆さんにぜひ読んでいただきたい、編集部お薦めの野球本を紹介したいと思います。
今回紹介するのは『あのプロ野球選手の少年時代』(花田雪:編著/宝島社)です。この本では球界を代表する6人の選手、秋山翔吾選手(当時レッズ/現広島)、前田健太選手(当時ツインズ/現タイガース)、柳田悠岐選手(ソフトバンク)、菅野智之選手(当時巨人/現オリオールズ)、山﨑康晃選手(DeNA)、鈴木誠也選手(当時広島/現カブス)の少年野球時代の指導者に話を聞いていますが、秋山選手、柳田選手、山﨑選手には本人からも話を聞いており、その内容がとても参考になると思いますので紹介します。
<体が小さいながらもしっかり振り切るスイングだった柳田少年>
この本に登場する選手達は、やはり少年野球時代からずば抜けた才能、体格を誇り「スーパー小学生」と呼ばれるような存在だったのでしょうか? そのあたりは是非とも本書を読んで確認していただきたいのですが、編集部が皆さんに特に読んでいただきたいと思ったのは柳田選手の章です。
柳田選手が広島市内にある『西風五月が丘少年野球クラブ』で野球を始めたのは小学3年のとき。現在でこそ187cm90kg(2025年発表時点)の堂々たる体躯を誇る柳田選手ですが、当時は身長が低くて体も細く、6年生になっても下の学年の子たちと同じくらいのサイズだったといいます。
センスのある中心選手だったものの、豪快なホームランで魅了する現在のプレースタイルとは異なり、打順は俊足を生かした一番バッター。ただ、コツコツ当てるようなバッティングではなく、体が小さいながらもしっかり振り切るスイングだったそうです。当時の指導者は現在の柳田選手のスイングを見て「『あの頃とあまり変わっていないな』というのが正直な印象です。形はほとんど変わらずに、体が大きくなって飛ぶようになった。そんなイメージですね」と振り返っています。
小柄で俊足なトップバッターであれば「叩きつけろ!」「打ち上げるな!」と指示されることも多いと思いますが、このチームの指導方針は、子ども達に野球を好きになってもらうこと、そして楽しんでもらうこと。指導者は柳田少年の思い切りの良いスイングを咎めたり、へたにイジることはしませんでした。
当時を柳田選手はこう振り返っています。
「とりあえず思いっきり振って、打球を飛ばしたいという欲はありました。ただ、体が小さいからいくら振っても飛ばないんですよ。まだ小学生だから『こうやったら打球が飛ぶ』とか、そんな細かいことは考えていなくて、とにかくめちゃくちゃ振りまくる。試合でも練習でも、学校で遊んで野球をしよるときも、つねに『飛ばしたい』という思いはありましたね」
<「野球が好き」という気持ちの根っこになっているのは小学校時代>
柳田選手は少年野球時代に「怒られた記憶がない」「試合でミスをしても何かを言われたことはなかった」とも振り返り、両親からも指導者からも野球に関して「ああせぇ、こうせぇ」と言われたことがないそうです。そのことが小学生時代に野球に夢中になり、ハマることができたことにもつながって「一番大きかった」と話しています。
「中学、高校、大学、プロと野球を続けていますけど、正直しんどいことの方が多いじゃないですか? もちろん『やめたい』と思ったこともあります。練習がきつかったり、特に思春期になると他の誘惑もあるから野球以外にも遊びたくなったり。そんなときに野球につなぎとめてくれるものってなんだと考えたら『野球が好き』という気持ちだけなんですよね。(中略)僕の場合はその根っこになっているのが小学校時代。とにかく野球が楽しくて、ハマることができたからやめたいと思ってもどこかで踏ん張ることができたのかなと思います」
柳田選手がプロで活躍できているのは柳田選手の才能と努力の賜でしょうし、小学生時代に上記のように接すれば誰でもプロ野球選手になれるわけではもちろんありません。しかし、時に保護者や指導者が目の前の試合に勝ちたいが余り、失敗やミスに寛容になれなかったり、怒声や罵声を浴びせてしまったり。あるいは「ああせい、こうせぇ」と言ってしまったり、どこかで子ども達の「野球が好き、野球が楽しい」という気持ちを大人が奪い取るような言動や指導をしてしまっているかもしれないことを、この章を読むことで振り返らせてくれる気がします。
ちなみにこのチームでは「野球だけうまくなればいい」という考えはなく、冬場はほとんどボールを握らずに体力トレーニングがメインで行われており、柳田少年を含む引退した6年生たちは卒業までの間はバスケットボールにチームにも入り、大会でも優勝をしていたそうです。小学生年代に野球以外のスポーツを行っていたことがプロでの活躍にも繋がっているのかもしれません。いわゆる「マルチスポーツ」ですね。
少年野球の保護者、指導者にも発見や学びの多い『あのプロ野球選手の少年時代』、ぜひお読みください。