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勝ちを目指すことは「勝利至上主義」?|ヤキュイク編集部コラム

少年野球の現場を取材していて思ったこと、感じたことなどを「ヤキュイク編集部」スタッフが思うままに書いています。


「勝利至上主義」という言葉に対して、皆さんはどんなイメージを持っているでしょうか? 数年前に日本大学アメフト部のタックル問題があった際、この言葉が多くのメディアで用いられていましたから、決してポジティブな印象は持っていないと思います。
少年野球の現場を取材していると、この言葉を明確に否定する指導者に多く出会います。しかし稀に「勝つことを目指して何が悪いんですか?」と言われる方もいます。私は勝つことを目指すことは悪いと思いませんし、それ自体は「勝利至上主義」ではないと思っています。

野球とは、最終回が終わった時点で相手チームよりも1点でも多く点をとったチームが勝つスポーツです。ピッチャーが一生懸命に打者を抑えようとするのも、野手が一生懸命にアウトにしようとするのも、それは相手に点を与えないようにするため。バッターがヒットを打とうとするのも、ランナーを進塁させようとするのも、それは点を獲ろうとするためです。
子ども達がそれを意識しているかどうかは別として、プレーの一つ一つは試合に勝つために行われているわけすから、試合で勝ちを目指すことは当たり前のことだと思います。「勝ち」を目指して何も悪くありません。

大切なことは、チームと指導者が「どんな姿勢」で勝ちを目指すのか? ということだと思います。

ベンチメンバー全員を使って勝ちを目指す、ノーサインで勝ちを目指す、低反発バットを使わずに勝ちを目指す、バントをせずに勝ちを目指す。色んな「勝ちをめざす姿勢」があって良いと思います。ですがあってはいけない「勝ちを目指す姿勢」もあるのではないでしょうか? それが次の3つだと私は考えます。

<あってはいけない「勝ちを目指す姿勢」>

①「スポーツマンシップ」よりも目の前の試合に勝つことを優先させる
 →フェアプレー精神、ルール遵守、相手への敬意。これらを欠き、アンフェアなことをしてまで勝とうとする。

②子どもの健康よりも目の前の試合に勝つことを優先する
 →子どもが肘が痛い、腰が痛いなどと体の不調を訴えいているのに「主力だから休まれたら困る」「お前が出ないと勝てない」などと、出場を強要し、子どもが怪我をする或いは怪我のリスクを高めてまで試合に勝ちに行こうとする。

③子どもの将来よりも目の前の試合に勝つことを優先する
 →メンバー固定やポジション固定、少年野球でしか通用しない戦法のたたき込みなど。試合に出ていない子も含めて、子ども達の可能性を摘み取ってまで勝とうとする。

こういった姿勢で勝ちに行くチーム、指導者のことを「勝利至上主義」と呼ぶのだと、私は思います。

これらの弊害は色々と挙げられます。
・過剰なまでに指導者が勝とうとすることにより、子ども達のミスや失敗が許容できなくなるため、怒声、罵声が飛ぶようになる。
・怒られたくないから子ども達は挑戦しようとせず、指導者の顔色を伺うようになる。
・自分で考えずに指導者の指示を待つようになる。
・小学校時代に無理をしたため中学、高校で肘、肩、腰などの怪我が顕在化する。
・特定のポジションしか経験がなく、中学、高校で守られるポジションが限定されてしまう。

逆をいえば、スポーツマンシップを遵守し、子どもの健康と将来に注意を払い、そのうえで全力で勝利を目指すことは、何ら「勝利至上主義」とは言わないのではないでしょうか。

皆さんのチームは、どんな姿勢で勝ちを目指していますか?(永松欣也)