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小・中の野球指導者が連携、中学軟式野球部員が増え続ける松戸市

少年野球人口の減少が叫ばれて久しい。中でも中学軟式野球部員数の減少は顕著で、2009年に約30万人いた部員が2018年には約17万人に減少したというデータもある。そんななかで、千葉県松戸市ではここ数年、市内中学の軟式野球部員数が増加しているという。その要因の一つに地元の少年野球指導者と中学軟式野球部顧問の連携が挙げられる。どんな連携によって部員数が増えたのだろか? 以下の四氏に集まって頂き、話を聞いた。
(高橋雄太さん/小金原ビクトリー監督、国本貴さん/高塚新田ラークス監督、林啓太さん/松戸市立栗ヶ沢中学野球部顧問)、和気史生さん/松戸市立第三中学野球部顧問、聞き手:永松欣也)
<右肩上がりで増える、松戸市の中学野球部員数>
——そもそもですが、どういった経緯で松戸市内の小・中の指導者が連携するようになったのでしょうか?
高橋雄太(以下、高橋) 進路相談をされる保護者の多くが、中学で硬式をやらないとその先の進路が限られるといような、「中学野球=硬式」と考えている方が多い。ですが、小学6年生という時期は体の成長度合いに個人差がありますし、その子の特徴もありますので、私は誰でも硬式に行けば良いというものでもないと思っていました。そんな時、地元松戸市の中学軟式野球部を覗いてみたら、若くて熱心な指導者の方がたくさんいて、部活として軟式野球をやるという進路もいいなと思ったんです。それがきっかけでした。
——元々中学の先生達とは面識があったのですか?
高橋 林先生が栗ヶ沢中学に来られる前に前任の若い先生がいて、その先生がよく少年野球のグラウンドに来てくれていました。それでその先生と色んな話をさせていただいて、そこから中学の先生方との関係が広がっていきました。それで、松戸の中学にこんなに熱心な先生がたくさんいるのであれば、一度先生たちと少年野球指導者が交流する場を作ってみてもいいのでは? と思ったんです。
——実際、どのような交流ができたのでしょうか?
高橋 まずは交流する場を設けて、市内の軟式野球部がある中学20校のうち8割くらいの先生が集まってくれまして、学童野球指導者もほとんどの方が参加してくれました。そこでまずはお互いに面識を持ってもらって、最初は私が橋渡しをする形で少年野球のグラウンドに中学の先生に来てもらって、「中学で軟式野球をやるのであれば、この人が顧問ですよ」というように保護者に紹介をさせてもらいました。その後は各チームの監督と中学の先生方が直接繋がってくれて、少年野球チームと中学の先生とで連絡を取り合って繋がっています。
林啓太(以下、林) 私の場合で言うと、学区内の少年野球チームの監督さんに連絡をして「この日、練習をやっているので観に来ませんか」みたいな感じでやりとりをさせてもらっています。それで実際、子どもと保護者が中学の練習を見に来てくれるようになりました。
——実際にこの4年間で松戸市の中学野球部の部員はどれくらい増えたのでしょうか?
林 毎年集計をしているのですが、今の3年生が122人、2年生が155人、1年生が214人。昨年が33人増えて、今年は59人増えています。この取り組み意外にも色々な要因はあると思いますが、右肩上がりで部員は増えています。
<「教員が指導をしていることに価値を見出したい」>
——クラブチームにはない部活動としての野球の良いところは、どんな点が挙げられますか?
林 毎日野球ができることが一番ではないでしょうか。あとは私たち教員が指導をしていることに価値を見出したいなと思っています。普段の学校生活も見ながら、寄り添いながら指導が出来ますから。綺麗事かもしれないですが、多感な時期の中学生たちの内面の指導というところは蔑ろにはしないようにしていますから。
和気史生(以下、和気) 毎日野球をやれること、地域の仲間と一緒にやれることが部活動の強みかなと思います。あとは、その子の生徒会活動とか学校行事などへの取り組みとか、そういったところも見ながら指導できることでしょうか。
——強豪高校の選手達の出身チームを見ると圧倒的に硬式出身の選手が多いですが、その辺はどのように考えていますか?
和気 松戸市の場合ですと、市の選抜チームもありますし、そこからさらに県選抜チーム等もありますから、部活でも高いレベルを経験することも可能です。そこからプロに羽ばたいた子もいますし、中学軟式でもチャンスは大いにあると思います。
——送り出す少年野球側から見た部活動としての野球のメリットは?
高橋 一つは怪我のリスクかなと思います。硬式も軟式も両方に子どもを送り出していますが、肘肩の故障だけではなく、イレギュラーが当たっての骨折など、やっぱり硬式は怪我のリスクが高いと思います。
もう一つは、松戸市では小・中の指導者の連携が取れるようになって、指導者が小・中一貫で育てていくという流れが出来つつありますから、送り出す側としてはすごく安心感がある点ですね。あの子が今どうなっているかという成長過程も直ぐに分かりますし、見に行こうと思えば直ぐに見に行けますから。
林 「今日はこういうピッチングだったんですけど、どうなんでしょうか?」みたいなことを少年野球時代の指導者に連絡をして、直ぐにピッチングを見てもらったり。そういう連携も出来るようにもなっていますね。
国本貴(以下、国本) 中学3年間って、野球だけじゃなくて学校生活も共にした仲間と勝ちを目指したり、そういった良さもあるのかなと思っています。