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野球を始める敷居が限りなく低い『少年〝草〟野球』チーム|逗子オーシャンズ
<野球を始める敷居が限りなく低いチーム>

4時間の活動時間のうち、はじめの2時間はキャッチボール、ノック、バッティング、試合形式の守備練習など、普通の少年野球チームと同じような練習を行う。だが、グラウンド内の大人は細かな技術指導などは誰も行わない。そもそも子ども達は技術的なことはほとんど聞きにこないと言う。
「私も『公認野球指導者資格』を一応は持っていますけど、子どもたちはあまり聞きに来ないですね。野球が詳しいと思われていないのかもしれません(笑)。最低限、投げ方がちょっとおかしい子には『ゼロポジション』の話くらいはして指導しますし、紅白戦を見ていて、ベースカバーや走塁などの基本的な動きが分かっていない場合は私や保護者の方が、その場で教えることはあります。でも(捕る、投げる、打つなどの技術的なことは)私が教えなくても、YouTubeなどに色んな情報がありますから、子どもたちはお父さんと一緒に調べて、家で練習をしていますよ」

オーシャンズのグラウンドは「大人が子どもに野球を教える場」ではなく「子どもが野球を楽しむ場」。大人が介入しない「公園野球」の楽しさを大事にしている。
公園野球であるのだから、ダッシュ何本だとか、○○トレーニングだとか、キツい練習、辛い練習は行わない。
「強くなることを目指しているわけではないですし、上手くなることを目指しているわけでもありません。子どもがグラウンドに来て4時間野球をやって、ひたすら『楽しかった!』という経験だけを与えたいと思っているだけですから」
子ども達が毎回楽しみにしているのは、活動の最後2時間に行われる紅白戦だ。
「打順も守備位置も子ども達が全部決めています。そこも昔の公園野球と同じですよね」

紅白戦では自転車のヘルメットでバッターボックスに立つ子の姿があれば、ルールがよく分かっていない子もいた。上級生の子が下級生の子にルールを教えている場面もあった。
「ピッチャーが変化球投げてんだけど!」
「はー!? 投げてねーし!」
子ども同士で言い合う場面もあった。そんな光景が微笑ましくもあり、昭和の時代の「公園野球」そのもののように映った。
昔はこんな光景が日本中のあちらこちらで見られたものだが、今の時代ではめっきり見られなくなってしまった。令和の時代は、安心・安全に野球ができる「場」を大人が準備しないと、子どもは気軽に野球を楽しむことさえできない。だからこそオーシャンズのようなチームにニーズがあるのだろう。
現在は1年生と3年生のみ新規参加を募集しているが、他の学年は「満員御礼」で空きが出るのを待っている状態だという。気持ち的には野球をやりたい子を全員受け入れたいそうだが、グラウンドの広さの関係と、あまり多くなってしまうと子どもが野球を楽しみきれないという問題が出てくるため、泣く泣く募集に制限をかけている。
オーシャンズに入るのに「覚悟」など必要としない。来たい子が来て、来たくない子がいてもOK。入部届も退部届も必要としない。保護者間のギスギスした関係もない。野球を始める敷居が限りなく低いチームだと言える。
気軽に野球を始められるチームが全国に増えれば、野球をやる子はまだまだ増える。逗子オーシャンズを見ていたらそんなことを考えさせられた。(取材・写真:永松欣也)
*後編はチーム創設者の天石さんのインタビューをお届けします。
