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部活動と地域移行、中学軟式野球部のリアル|横浜市立谷本中野球部
中学軟式野球部員数はここ十数年で大きく減少している。2010年頃には全国で約30万人だった部員数がここ数年で半減しているというデータもある。背景にあるのは少子化は勿論、子どものスポーツ選択肢の多様化、部活動の負担や時間の長さの問題などが挙げられる。そのような状況に加えて「部活動の地域移行」という問題も抱えている現在の中学軟式野球部。実際はどうなっているのだろうか? 横浜市立谷本中学を訪ねた。
<「野球ノート」の提出義務>
谷本中野球部の部員数は40人。夏の全日本少年軟式野球大会出場を目指して活動している。顧問は作田三仁先生。英語科教諭で明治大学時代は体育会軟式野球部に所属し、大学3、4年次には全日本大学軟式野球選手権で優勝もしている。
「中学生の本分は勉強である」。それが作田先生の基本的な部活動の考え方だ。そのため土日の活動は半日とし、頭をしっかり整理する時間、勉強する時間を確保するようにしている。また、成長期の体を慮って睡眠時間を十分に確保することも意識している。朝練はなるべく控えてやるにしても7時から。土日の活動を半日に留めているのにも昼寝時間の確保の意味合いもある。

野球ノートの提出も部員に義務づけてもいる。ノートを書くことによって、その日の練習、試合をしっかりと振り返る習慣を作り、失敗と成功の分析を行わせるようにしている。目的は「失敗→分析→再確認→成功」に繋げるためだ。言うまでもなく、それは野球のためのみならず、勉強はもちろん、将来社会に出てからのことも見据えられている。
「自分が学年主任もしていますので、(学校内で気軽に)しゃべり掛けられない子や話し辛いという子もいて、それで野球ノートのなかでより質問をさせるようにしてノートを通じた対話を増やすようにしました。それによって直接の対話じゃなくても自分の意見が言えたり、質問ができたり、そういった雰囲気作りができるようになりました」

ノートの文字を見てその子の内面が見えることもあるという。
「(その日の)字の雑さや、大きさ、筆圧、書いている内容によってその子が集中できているかどうか直ぐに分かります。そういう子は次の部活のときに注意深く見るようにしています。そういったことはプレーにも出ます。「書くこと」で頭を整理し、物事を論理的に考えられるためのトレーニングをすることができます。この効果は学生を終えたときに発揮されると思っています」
<部活動で野球をすることのメリット>
20年以上中学生の指導をしてきて、「令和の子ども達」の体力面や野球の技術面で思うところはあるのだろうか?
「体育の授業でも怪我をする子がすごく多いんです。小さい頃に外遊びなどをする機会が昔よりも減っていることが影響しているように思います。野球でも投げ方に難がある、具体的には肘が下がっている子が増えています。やはり小さい頃に公園野球などの遊びの中で野球をやってきていないことや、チームに入っていても昔ほど練習量が多くないことなどが影響しているように思います。あとは昔の方が元気のある子が多かったですね」
「硬式クラブは上手い子が多いけど週末しか活動していないから体力がない」、「部活は幅広いレベルの子がいるけど、毎日練習をしているから体力がある」。そんなふうに評する高校野球指導者も多い。だが「部活動改革」によって部活もかつてのように毎日ガンガン練習ができるとは言えなくなってきた。それでも部活動で軟式野球をするメリットとしてどんなことが挙げられるだろうか?

「昔と比べて毎日ガンガン練習はできないですけど、それでも継続的に練習できることは部活のメリットかなと思いますし、教員が練習を見ているとことも部活動のメリットだと思います。学校によってスタイルは違うので一概には言えないですけど、例えば野球ノートを通じて心の乱れに直ぐに気付けることや、顧問が日頃の学校生活も見ているというのも部活動の良い面の一つだと思います。
あと、私の場合は『まずは勉強を頑張る』という基本方針が一番にあります。『うちは野球だけじゃないよ、勉強もやらないとダメだよ』ということを子ども達にも保護者にも伝えています。そういったことは部活動だからできるのではないでしょうか」
「まずは勉強を頑張る」ということは、テストの点数が悪いと部活に参加できないとかもあるのだろうか?
「今の時代はないですね。それをやると大変です(笑)。勉強は勿論大事なんですけど、勉強は勉強、部活は部活。勉強ができていなかったからといって、子どもの部活をする権利を奪ってはいけない。そんな考え方です」
