ドジャース・山本由伸(写真=GettyImages)

◆ 白球つれづれ2025・第43回

 日本人メジャーリーガーが、またも歴史的な快挙を成し遂げた。

 日本時間26日に行われたドジャース対ブルージェイズのワールドシリーズ(以下Wシリーズ)第2戦に先発したド軍・山本由伸投手が4安打1失点の快投で完投勝利。Wシリーズでの完投勝利はジョージ・クエト(ロイヤルズ)以来8年ぶり。山本はブリュワーズとのアメリカンリーグ優勝決定シリーズでも完投勝利を挙げており、ポストシーズン2戦連続の完投は2001年のカート・シリング(ダイヤモンドバックス)以来。ド軍に限れば1988年オーレル・ハーシュハイザー以来37ぶりの偉業達成となった。

 まだある。米データ分析会社「コディファイ・ベースボール」によれば「ポストシーズンで連続9イニング以上を投げ、7奪三振以上、1失点以下、4安打以下」の条件付き連続完投勝利は1965年ド軍のサンディ・コーファックス以来60年ぶりのことだと言う。シリングに、ハーシュハイザーと、コーファックス。いずれも往年の大エースたちだ。そんなヒーローたちと肩を並べる大仕事やってのけた山本に全米中が感嘆の声を上げている。

 我々はつい1週間前のブリュワーズ戦で大谷翔平選手の、投げて6回無失点、打って1試合3本塁打の離れ業を目撃している。そして今度は山本が歴史的な活躍を見せた。MLBの秋は日本人メジャーリーガーが席巻している。

 山本の投球は現代野球で忘れられかけていたものを思い出させてくれた意味からも興味深い。キーワードは「完投」と「カーブ」である。

 山本の同僚で、MLBのレジェンドでもあるクレイトン・カーショー投手が新エースを絶賛している。

「キャッボールや遠投のようにマウンドから投げるフォームも一緒で、理想の投げ方や体の使い方が出来ている」と満点の評価を与えたうえで、2戦連続完投に触れている。

「これが野球のあるべき姿の兆しかも知れない。先発同士が試合終盤まで投げ合う姿はいつだって魅力的だ。山本のピッチングが将来へのヒントになるかも知れないし、そう願っている」。自身も25度の完投勝利を記録する伝説の男だから語れる言葉だろう。

 メジャーから完投が消えて、先発、中継ぎ、抑えの分業制が顕著になったのは1990年代頃からだ。

 ヤンキースのマリアノ・リベラか絶対的な守護神として台頭すると現役通算625セーブを記録する。同じくヤンキースではアロルディス・チャップマン(現レッドソックス)は世界最速170キロのストレートで話題を独占した。

 いつしか、先発完投型は少なくなり、スターターは6回100球前後でお役御、免のスタイルが定着していく。それでもこの日の山本は105球完投。立ち上がりこそ苦しみ、球数を要したが3回一死後からは打者20人を連続アウトに退ける。メジャー随一の強打線を誇るブルージェイズ相手にゲームを支配出来たからこその完投である。

 フォーシーム、ツーシーム、カットボール、スライダー、シンカーにスプリットなど多彩な変化球を操る山本の投球だが、この日に最も効果的だったのはカーブをウィニングショットに使えた点だ。

 初回無死一、三塁のピンチで最強打者であるウラジーミル・ゲレロJr.をカーブで空振り三振、四番のアレハンドロ・カークを一直に抑えると、五番のドールトン・バーショを見逃し三振に仕留めたのもカーブだった。その後も要所の勝負所で魔球が冴えわたった。

 野球少年が最初に覚える変化球と言えばカーブが多い。しかし、近年ではスライダーやスプリットが全盛で、メジャーでも150キロ台のストレートに近いシンカー系が好まれる傾向にある。

 山本の場合はすべての変化球の精度が高い。

 特にメジャー2年目の今季はスプリットもシュート回転で横に変化するものと縦に落とす二種類を使い分ける。そこに155キロ戦後のストレートと、垂直にドローンと落とすカーブが打者を幻惑する。

 完投とカーブ。MLBでも忘れかけていたものを山本の快投が蘇らせたのだ。

 2年前3億2500万ドル(当時のレートで461億5000万円)の巨額でオリックスのエースはドジャースに移籍した。当時は「高い買い物」と言う声もあったが、今では本場のメジャーファンもひれ伏す。

 こうなると日本野球への見方も変わって来る。Wシリーズ第3戦でブルージェイズの先発を務めるマックス・シャーザーはこんな見方をする。

「日本では高校から120球くらいは投げ込むが、わが国では短いイニングでスピードとパワーを求める。だから故障も多くなる」サイヤング賞3度受賞のレジェンドの発する言葉の意味も重い。

 かくして、日本人投手への評価全体が高まるばかりだ。

 今井達也(西武)や髙橋宏斗(中日)らメジャー関係者が熱視線を送る有望株は多い。

 このままWシリーズがもつれた場合には第6戦で二度目の先発も予想される山本。大谷との日本人同士のMVPレースにも俄然注目が集まる。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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