「去年は自分の中で若干良くて、特に後半は良かった。今年に繋がると思って、今年臨んで思ったような成績を残せませんでしたし、誰がみても物足りない数字。チームには迷惑をたくさんかけたと思いますし、不甲斐ない1年だったと思います」。
ロッテ・菊地吏玖は飛躍が期待された3年目の今季だったが、シーズン自己最多の21試合に登板したものの、防御率は5.32と悔しい結果に終わった。
昨季は吉井理人監督から教わった握りのフォークを武器に夏場以降一軍に定着し、20試合・24回を投げて、1勝0敗2ホールド1セーブ、防御率2.25の成績を残した。今季に向けて、「秋季練習が終わってから動ける時は毎日動いていましたし、特に入りにくいな、とかはなかったですね」と、ZOZOマリンスタジアムを中心に一人で黙々とトレーニングを積んだ。
石垣島春季キャンプでは、「フォームのことをとにかく固めるためにやっていました」と、ブルペン入りした日に全体練習後にもう1度ブルペンに入って練習する日もあった。
オープン戦が始まってからは、「この時期は真っ直ぐでどんどん押していかないと、シーズン入った時に苦しくなるので、それで投げています」と、ストレート中心の力で押していく投球が目立った。3月4日のDeNAとのオープン戦では「(ストレートが)自分の思っているボールに近付いているかなと思います」と1回を無失点。ストレートに手応えを掴んでいた一方で、昨季一軍定着のきっかけとなったフォークはオープン戦期間中、「精度が全然まだまだなので、そこは投げていかないとわからないと思う。どんどん投げていきたいと思います」と話していた。
自身初の開幕一軍に向けて「僕は全力で1試合1試合結果を残してというところが求められると思うので、そこを引き続きやっていって、三振も多く取れたらなと思います」と意気込み、オープン戦で6試合・7回1/3を投げ、6奪三振、防御率2.45。「ここまで一軍にいさせてもらえて、ありがたいことですし、自分も今年1年間一軍の戦力でと考えていたので、そのスタートラインに立てたと思います」と、自身初の開幕一軍入りを果たした。
今季初登板は3月28日ソフトバンクとの開幕戦に訪れた。8-2の9回にマウンドに上がると、牧原大成にレフト前に運ばれたが、後続を打ち取り、試合を締めた。菊地は「勝利に貢献というか、その一端を担えたのは良かったのかなと思います」と振り返った。
強いストレートで、続く4月3日のオリックス戦でも1回を無失点に抑えた。本人は「まあまあ、もうちょい出力が欲しいなと思っているので、まだまだクリアしたいなと思います」と満足せず。オープン戦で課題にしていたフォークは「まだまだ浮いているので、その原因も何個か見つかっているので、クリアできればいいかなと思います」と話し、カーブは「いい感じで投げられていると思います」と好感触を掴んだ。
4月6日の楽天戦で今季初失点すると、2試合連続無失点に抑えた3試合目に失点する登板が続き、5月5日に一軍登録抹消。「主に出力を上げるためにフォームの連動性を高めるようにやっていました」と、5月15日に再昇格。
5月16日の取材で、菊地は「まだまだ思い描いているところには届いていないかなと思います」と悔しがり、「もっともっとゾーンに突っ込んでいかないといけないですし、フォークの精度もまだまだ、その辺かなと思います」と課題点を口にした。
出力が欲しいと話していたストレートについても「全然足りていないので、まだまだ上げていかないといけないと思います」と納得いかず。
5月30日の日本ハム戦では1イニングで球数32球を要するなど、1回1失点。6月2日に2度目の登録抹消。一軍と二軍の往復が多かったシーズンの中で、6月29日の巨人二軍戦で3回を無失点に抑えるロングリリーフを見せれば、7月5日のヤクルト二軍戦で今季初先発し5回を無失点と、リリーフだけでなく、先発でも投げた。
ファームでは「フォームのロスをどんどん減らして、まっすぐの質を上げていくところですかね」ということを取り組んできた。
ファームの登板を見ると、少ない球数で1イニングを抑えたり、右打者のインコースを多めに投げたりと、「どこにどんなボールを投げていけば自分の持ち球だったり、ボールの質だったら抑えられるのかは、常に考えながらやっています」と、毎回テーマを持って投げた。
気になったのは、ファームでの奪三振が少ないこと。8月15日に一軍登録抹消後、9月16日に再昇格を果たすまで3試合・3回を投げ2奪三振だった。
「まずはまっすぐをしっかり投げられれば。ファームは早打ちのバッターが多いので、そこはそんなに気にしすぎることなく、自分がどういうボールを投げているのかというところとバッターの反応がどんなものかというのが大事かなと思っています」。
9月16日に今季4度目の昇格を果たすと、同日のオリックス戦にリリーフ登板し、2回を無失点。3-7の7回一死二、三塁で西野を2ストライクから空振り三振に仕留めた外角146キロのストレートが良かった。「表示は満足いくものではないですけど、この間の試合も含めて、まっすぐの質の部分は押せるようにはなってきているのかなと思います」と納得のいくストレートが投げられた。
フォークは「前半は去年の後半ほど使えている感じはなかったんですけど、今年の後半からは徐々に良くはなってきているかなと思います」と手応え。
時折投げるカーブも、「バッターが若いカウントで手を出ししにくい球種としてよく挙げられることが多いと思うので、そういうところで投げていくのか、追い込んでから投げていくのかというところはキャッチャーと話しながらになりますが、しっかり使えれば、幅の広げられるボールなので、そこは消さずにやっています」と、良いアクセントになった。
9月20日の日本ハム戦では2-7の4回二死満塁で先発サモンズの後を受けて登板し、伏見虎威を遊ゴロで打ち取ると、イニング跨ぎとなった5回、6回もスコアボードに0を入れた。良い形で2試合連続無失点に抑えたが、再昇格後3度目の登板となった9月25日のオリックス戦で4失点。翌26日に一軍登録抹消され、今季の戦いを終えた。
レギュラーシーズン終了後に行われたみやざきフェニックスリーグでは、10月6日の中日戦、走者がいない時にクイック気味のフォームで投げれば、10月21日の阪神戦では走者がいない時に足を上げてグローブを叩いてタイミングを取る投げ方など、様々なフォームで投げていた。
「クイックもフォームは割とスムーズに投げられるね、とコーチに言ってもらいますし、自分で見ていても思うところではあるんですけど、何ていうんですかね、足をちゃんと上げたほうが僕はまだ力が伝わっているかなというのがあるので、その辺はデータ見ながらになりますけど、とりあえずは足を上げていこうかなと思っています」。
来季は4年目を迎える。「60試合は投げないといけない立場なんじゃないかなと思っています。その中で防御率も2点台、ないし1点台を目指していかないといけないのかなと思います」。来季こそシーズン通して一軍で投げ抜き、活躍してみせる。
取材・文=岩下雄太