ブルペンで投球練習するロッテ・高野脩汰[撮影=岩下雄太]

 「正直ここまでやれると思っていなかった。先発と言われて中継ぎして、キャラがあんまり定まっていない中で、自分はまた便利屋で終わるんじゃないかと思うところもあったんですけど、最終的にはセットアッパーを任せてもらいましたし、自分の武器が明確になったシーズンにもなった。そういう点においてもすごい充実したシーズンになりました」。

 ロッテ・高野脩汰は3年目の今季、ロングリリーフで結果を残し序列を上げていき、最終的には“勝ち試合の8回”を任されるなど、飛躍の1年だった。

 今季は開幕先発ローテーションを目指していた。今季に向けて、シーズンオフは「自分の投球フォームとか色々見てもらって、指導していただくっていうのを目的に何個か教えていただける場所に。ドライブラインに限らず行かしてもらって、フォームについてまた1から組み立て直したというか、自分の長所をより活かせるな投げ方を追求したオフになりました」と動作解析をして、投球フォームを見直した。球種もフォーク、スライダーだけでなく、先発転向するにあたって幅広い投球ができるようにカーブ、ツーシームなどにも挑戦してきた。

 昨季は浦和のデータ班が握りを見ないとわからないほど苦労したチェンジアップ系の独特の軌道を描くフォークは、石垣島春季キャンプ中に「もう少しレベルアップしていかない」と話していたが、2月23日の韓国・ハンファとの練習試合では3回を投げ、1被安打、4奪三振。

 石垣島春季キャンプ中に試行錯誤していたフォークは「空振りを実戦で取れていますし、自分の投げている感覚も悪くない。去年以上に手応えを感じています」と話し、「ハンファ戦以降も変わらず自分は感じよく投げられています」と手応えを掴み開幕一軍を掴んだ。

 「どっち(先発、リリーフ)でもしっかり起用していただいて、キャリアハイを目指して頑張りたいです」。

 開幕してからリリーフを任された。今季初登板となった3月29日のソフトバンク戦、ソトの本塁打で同点に追いついた直後の6回裏からマウンドに上がった高野は、先頭の正木智也、続く今宮健太をフォークで連続で空振り三振、ダウンズを左飛で危なげなく3人で片付けると、2イニング目となった7回もリチャードを三ゴロ、海野隆司を左飛、周東佑京をフォークで空振り三振と、2イニングをパーフェクトリリーフ。プロ初ホールドを記録。

 4月3日のオリックス戦では、0-0の2回一死満塁の場面で、危険球退場で降板した先発・石川柊太の後を受けて登板し、3回2/3を投げ、4被安打、5奪三振、無失点の好投を見せた。2試合・5回2/3を投げ、2ホールド、8奪三振、0与四球、無失点、防御率0.00の投球も、翌4月4日に一軍登録抹消された。一軍で抑えていた中で、ファームでの調整。

 「調子を落とさずにキープで迎えるのもそうですし、上で試せなかったスライダー、曲がり球を試すいい時間になったのかなと思います」。

 スライダーも「試合で打ち取れていますし、感覚も上がってきている。使っていきたいなと思います」と自信を持って投げられている。一軍の打者から三振の山を築いた独特な軌道を描くフォークに関しても、「ずっと変わらずきていますし、真っ直ぐもいいですし、状態としては悪くなく調整できています」と話した。

 一軍では三振を多く奪っていたが、ファームでは、「ストライク率を上げるというか、3球勝負で行く。自分はビハインド展開、試合を2番手先発で迎えることが多いので、先にストライクを取って有利なカウントに持っていくというのはずっと意識してやってきた中での少ない球数かなと思います」と、4月16日の楽天二軍戦と4月29日の巨人二軍戦では、いずれも1イニングをわずか8球に打ち取るなど、少ない球数で抑える登板もあった。

 5月5日に「今のところはリリーフで期待していただいているので、まずはどんな場面でも0で帰って来れるようにチームの勝利に勝ちに流れを持って来れるように。しっかり自分の力を発揮できるようにしていきたいです」と一軍再昇格を果たした。

 「複数イニングはずっとやってきたので、中ロングに対して違和感なく、むしろ自分の良さが出せるポジションに入れている感じがします」と再昇格してからは、ロングリリーフを担当。

 ロングリリーフとはいえ、6月6日の中日戦のような1、2点ビハインドの場面や、相手打線が完全に勢いのついた大量ビハインド、反対に味方が大量得点を奪ったリードする展開でのマウンド、同点でチームに流れを持ってくるような投球が期待される場面、先発投手のアクシデントを受けての登板など、さまざまなシチュエーションがある。

 「投げ方が特徴的というのもあるので、自分の良さを出せば相手が調子がよかろうといけると思っているので、全然気にしていないです」と、どんな状況でも変わらず自分の良さを発揮しようとマウンドに上がっている。

 ロングリリーフは、先発投手が安定していればなかなか登板機会が訪れにくく、高野も5月22日のオリックス戦で登板してから、次の登板となった6月6日の中日戦まで2週間以上登板間隔が空いた。調整の難しさがある中で、結果を残さなければならない、“勝ち試合”で投げるリリーフとは違った難しさがある。

 「自分が行く展開というのはいろいろあって序盤の点差が開いていない時に、先発同様第2先発としていく場合もありますし、リズムよく抑えてビハインドだったら次の攻撃にいい流れで行けるように守備からリズムを作る立場だと思っています。どちらにしろ、チームにいい流れが来るように、自分の投球で流れが変わるようにやっています」と、与えられたポジションで懸命に腕を振った。

 6月12日の広島戦は、4-4の7回に登板し2回をパーフェクトリリーフ。1イニング目の7回、先頭の野間峻祥を2ボール2ストライクからフォークで空振り三振に仕留めると、続くファビアンを4球連続フォークで1ボール2ストライクとし、最後は5球目の145キロストレートで空振り三振。

 相手打者がフォークを意識している中で、ストレートでファビアンを空振り三振に仕留めた場面について高野は「あれは寺地の采配というか、寺地に任せた結果のアレなので、僕の手柄というよりかは、寺地です」と19歳の寺地隆成捕手のリードに感謝した。

 三者凡退に抑えると、その裏、寺地の適時内野安打で勝ち越し。5-4となった8回は小園海斗を一ゴロ、坂倉将吾を空三振、大盛穂を遊飛に打ち取った。2回を無失点に抑えた高野は2勝目を手にした。

 6月17日の阪神戦も0-1の5回に登板し、1イニング目の5回はランナーを三塁まで進められたが、中野拓夢を2ボール2ストライクから131キロのフォークで空振り三振に抑え、ピンチを脱す。2イニング目となった6回は3番・森下翔太から始まる打順も、森下を中飛、佐藤輝明をフォークで空振り三振、大山悠輔をストレートで空振り三振と3人で片付け、直後の7回表に打線が3点を奪い逆転し、2回を無失点に抑えた高野が3勝目を挙げた。

 「場面も痺れるところで投げさせていただいたりとか、ビハインドでも2イニング行かせていただいたりしているので、登板できる場所が多いというのは経験値になります」。

 追い込んでから決め球にフォークがあるというのは投球の中で心強いのだろうかーー。

 「ボール球でも手を出してくれますし、いい時は高めから来たら見逃し三振もありますし、結構ある程度のところに投げられれば、勝負球になるなというのはあるので、決め球としてはすごい重宝しています」。

 ビハインドゲーム、ロングリリーフを中心に安定した投球を見せていた中で、8月11日のオリックス戦、2-3の9回から登板し、イニング跨ぎとなった3-3の10回に太田椋に決勝の一発を浴び、8月13日の日本ハム戦では、“バースデー登板”も2-2の9回に水谷瞬にサヨナラ打を許した。

 「(切り替えるのが)難しくて、打たれた次の登板とかすごい思うことがいろいろあったんですけど、益田さん、澤村さん、石川柊太さんとかにいろんな話を聞けて、切り替えるきっかけになったのもありますね」。

 先輩たちからの声がけもあり、8月17日のソフトバンク戦から9月28日の日本ハム戦にかけて13試合連続無失点。8月19日の楽天戦では、3-2の“勝ち試合の7回”を任され、1回を無失点に抑えたのをきっかけに、勝ち試合での登板が増えた。

 「いい場面で起用していただける場面が増えたのもあって、チャンスが多くいただけているのもありますし、気持ちの部分でもいい場面で投げさせていただいているので、競った場面でも今までよりは落ち着いて臨めているのかなと思います」。

 投げるポジションが良くなっても、「どういう場面でも自分はやることはゼロで帰ってくること。それが負けていようが、勝っていようが、同点、序盤、終盤だろうが、関係なく自分はやるつもりでやっています」と、チームのため、そして自身のため、相手打者をしっかり抑えることには変わりなかった。

 勝ち試合の8回を投げるようになってからは、「プレッシャーは感じます。(プレッシャーは)全然違います」と吐露。「2試合敗戦にした時があって、自分の登板試合で勝ち負けを左右する場所。同点も勝っている時もそうなんですけど、その重みをその2試合でより感じたというか、良くも悪くも、ヒーローにもなれるし、敗戦投手、悪者にもなる場所で、ちょっとそこに対してのプレッシャーはビハインドで投げる時よりも感じています」と、重要な場面で投げる喜び、そして怖さを知った。

 「投げる前に色々感じるのは大きく負けている時よりも感じるんですけど、マウンドに上がったら変わりなくいく意識でいます。吉井監督に言われたんですけど、マウンドのサークルより外のことは考えないというか、自分の手に届くマウンドのサークル内のことに集中すると教わってから、点差、展開だったり、ファンの感じだったり、外のことに意識してしまったら邪念というか、より自分のパフォーマンスに悪く影響するところもあるので、そこは考えないように。マウンドに上がったら、どんな展開であろうとゼロで帰ってくることは変わらずやる意識でやっています」。

 最終的には、37試合・53回2/3を投げ、5勝3敗15ホールド、防御率1.84とキャリアハイの1年になった。

 「2年連続活躍しない、ロッテのジンクス的なところがあると聞いているので、そうならないように自分がまた一軍で第一線で活躍していくのもそうですし、より色々対策されての対戦になってくると思うので、それも1つ上回れるような技術が伴うようにこのオフシーズンはやっていきたいです」と気を引き締めた。

 今季の成績を上回るポイントに「3つ目の球種の精度を上げるであったり、真っ直ぐの球速を上げて、真っ直ぐ待ちの真っ直ぐ投げてもファウルが取れるような球だったり、自分は特徴的なフォームではあるので、そういうところをフルに生かした他のピッチャーにはない投球スタイルでいきたいと思います」と説明した。

 先発もでき、リリーフもできるのは強み。どのポジションでも“2年目のジンクス”を跳ね除け、来季は2年連続で活躍するシーズンにしたい。

取材・文=岩下雄太

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