いよいよ「プロ野球選手」に
年が明けて1週間。キャンプまで1カ月を切ったプロ野球では、新たにプロの門を叩いた新人選手たちによる「入寮」がはじまった。
これから新人合同自主トレがスタートし、いよいよ初めてのキャンプへ。ようやくプロとしてのスタートを切ろうというこの時期、新人選手たちはどんな気持ちで過ごすのだろうか。
かつてドラフト1位でヤクルトに入団した増渕竜義氏にこの時期のことを振り返って語ってもらった。
「戦友であると同時にライバル」
お正月が終わると、プロ野球選手としての始まりの行事「新人合同自主トレ」が始まります。この自主トレは、2月に始まる春季キャンプに向けて、新人選手が顔を合わせて全員で練習するのが主な目的となります。
また、この合同自主トレを前には「入寮」という行事もあります。緊張と不安、そして期待感にあふれるこの頃。「いよいよプロ野球選手になるんだな」といった気持ちで、新人選手にとっては何もかもが新鮮に映ることでしょう。
私も、すごくワクワクしていたのを思い出します。寮生活というものが初めてでしたし、同期入団となるチームメートに会うのもすごく楽しみでした。
この同期たちは、これから生活を共にする戦友であると同時に、ライバルにもなります。しかし、実際の寮生活ではライバルという事も忘れてしまうほど、全員仲が良くて楽しかった思い出ばかりです。
「ケガだけはしないように!」
話を戻します。新人合同自主トレに関してですが、その前日の事を今でも思い出します。
私を含め、同期の選手たちはとても緊張していました。異様な雰囲気でしたね。監督やコーチはもちろん、報道陣や関係者などいろいろな方が視察に来られることを聞いていたので、妙なプレッシャーがありました。
たとえば「ここでアピールしなければいけない」とか、「練習についていけなかったらどうしよう…」といった不安が主です。私の場合、自分の実力に自信があったわけではなかったので、他の選手はどれだけすごいんだろうなんて思っていました。
迎えた合同自主トレ当日。挨拶と自己紹介から始まり、初日は主に体力測定や基本練習を行います。やはり大勢の方が見に来られていましたし、すごい緊張感の中で練習したのを覚えています。練習自体はそれほどきついものでは無かったのですが、精神的にすごく疲れました。たくさん取材も受けましたし、初めてコーチやスタッフの方々と一緒に練習をしたので、半分頭が混乱していたかもしれません。
その日の夜、寮に帰ってようやく緊張から解放されました。他の選手たちと話をすると、全員が私と同じように「緊張して体が全然動かなかった」と声を揃えたのは笑いました。
これがプロ野球選手としての初めての“プレー”。次の日からも自主トレは続きますが、この初日さえ乗り越えることができれば、次の日からは普段通りの自分が出せるようになるかなと経験上思いますね。
徐々にプロ野球に慣れていくわけですが、これがまたキャンプになると変わってきます。とりあえずこの時期は変に力を入れず、とにかくケガだけはしないようにやってほしいですね。