「先輩との初対面」
2017年もはじまってから10日が経過。各球団では新人選手たちの合同自主トレがスタートした。
プロとしての第一歩を歩みだした選手たち。すべてが新鮮に映ることであろうこの時期だが、その中でも注目したいのが「先輩選手との初対面」だ。
一般企業でも、先輩社員との初対面は誰もが緊張するというもの。それがプロ野球選手となれば、もはやテレビの向こう側の人との接触となる。緊張感もひとしおなのではないか。
今回はかつてヤクルトにドラフト1位で入団した増渕竜義氏に、「先輩との初対面」のことを振り返ってもらった。
「とにかく失礼のないように」
プロ野球生活が始まると、大勢のチーム関係者や先輩・後輩に会うことになります。毎日毎日入れ替わり立ち代わりで、初対面の人が出現するので大変です。
とにかくもう、会う人の名前と顔、そして肩書きを覚えるのが大変。選手も一軍はもちろん、ファームの選手もすごい人数ですので、覚えるのに必死でした。
まず私は、すぐ本屋に行って選手名鑑を購入しました。顔と名前はもちろん、出身や年齢、そして肩書きなどを毎日頭に叩き込んでいました。学校の勉強より必死に覚えたかもしれません(笑)
とにかく、相手の方に失礼があってはいけない。相手の方が逆に僕たちのことをよく知ってくれているという場合もありますので、それはもう一生懸命にやりましたね。
「あこがれの選手が同僚に...」
また、これもプロ野球選手になったという実感が沸く場面なのですが、憧れの選手とも実際に出会うことになります。今までテレビや雑誌で見ていたスター選手が“仲間”になるわけですから、それはもう一大事ですよね。
私は現在ソフトバンクに所属している五十嵐(亮太)さんの大ファンでした。五十嵐投手がアマチュア時代の頃から憧れていましたから、ヤクルトに入ってお会いしたときにはもう目が点になりました。
興奮をおさえつつも真っ先に挨拶をしに行って、自己紹介と昔からファンだったことを伝えました。すると五十嵐さんはとても優しい受け答えをしてくれて、「何か困ったことがあったら、俺に言ってこい」と一言。もう涙が出るほどうれしくて、これからチームメートになるというのに、さらにファンになってしまいました。
もちろん五十嵐さんだけではありません。同じくテレビでしか見たことのなかった古田敦也監督(※当時)をはじめ、現在はメジャーで活躍している青木宣親さん、「慎也のショートは日本一」でお馴染みの宮本慎也さん、現DeNA監督のラミレスさん、そして現ヤクルト監督の真中満さんなどなど...。次々とスター選手たちが目の前に現れるわけですから、これはすごい世界に入ったなとつくづく思いました。
入ったところがよかったということもあると思いますが、ヤクルトは本当に“あたたかい球団”という言葉がぴったりのチームです。
先輩方は本当に全員が優しく、ヤクルトに入団できて良かったとつくづく思いました。と同時に、私にも後輩が出来たら、五十嵐さんのようにあたたかい言葉をかけてあげようとも思いました。こういったサイクルが自然とできていることが、球団としての“ぬくもり”にもつながっているのかもしれませんね。
今となってはあの時の緊張もいい思い出です。