「スポーツ人間模様」 ~巨人・森福允彦~
このオフ、大型補強を敢行した巨人。史上初のFA3選手獲得、そのうちの一人が、前ソフトバンクの中継ぎ左腕・森福允彦だ。
森福の存在が全国区となったのは、ソフトバンク時代の2011年に戦った日本シリーズ第4戦(vs.中日)でのこと。
6回、無死満塁の大ピンチでマウンドに登った森福は、絶体絶命の状況をわずか11球で完ぺきに切り抜けた。このシーンは『森福の11球』として、ファンの間で伝説といわれています。
また、森福を語る際に、あの野村克也さんを無視するわけにはいきません。愛知県豊橋市出身ですが、高校卒業後はシダックスへ入団。そこには野村監督がいました。
172センチ・67キロの体はいかにも小さい。「私の監督人生で、自信をなくさせてくれた1人。絶対にプロでは通用しないと思った」とのちに野村監督は語っています。
それでも、プロへ行った際の準備にということでシュートをマスターさせ、外角低めへのコントロールを徹底的に指導します。10球の内、6球を投げられなければ、またやり直し。こうした指導によって森福の今日がある。
「挑戦するつもりで、巨人でやりたい」と古巣へ別れを告げましたが、普段はひょうきんなタイプで遅刻王。あまりに遅刻が多いことから関係者をハラハラさせており、ソフトバンクのロッカールームには『森福がいなかったら、すぐに電話を』という張り紙が貼ってあったほどだ。
『森福の11球』では、「ここで抑えなかったら丸刈りに」というペナルティーが科せられていたとか。丸刈りは御免とばかりに、こん身の投球を披露したという裏話もあります。
移籍を決断すると涙を見せる選手がいますが、森福もそんな1人。昨年11月23日に行われたファン感謝デーでは、「巨人へ行っても、頑張れ!」とスタンドからは激励の声が飛びました。
セ・リーグの舞台で新たな一歩を踏み出す“小さな巨人”に注目だ。